Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

循環停止のときのラボナールとラジカット

質問いただきました。
 
弓部置換手術時などの循環停止操作をするとき、多くの施設で選択的脳分離保護循環をすると思います。
 
なにそれ?
という方で興味のある方は質問ください。1から説明すると膨大で的を得なくなるので需要があったらその都度書いていくシステム。
 
それと、手術術式というのは、この一つの方法でなければならないというものはありません。
多くの手技で似通ってますが、細かなことが施設ごとに異なっています。
 
同じすき焼きでも関東風・関西風あるように
弓部置換のときの術式や手順、使用する薬剤は施設ごとに違うものです。
 
すき焼きは美味しければいい、食べて満足できればいい
と同様に
手術は、治療を受けた患者さんが満足に退院できればそれがすべてです。
生存率的や合併症罹患率に有意差がないものは採用しても採用しなくても同じ確率の結果が得られると考えます。どっちをとってもいいのです。
 
 
というのは前置きに。やっと循環停止中に使う薬の話です。
ラボナールは麻酔薬です。多くの麻酔薬に脳保護作用があると言われています。
ラジカットは脳保護剤です。脳虚血のときに発生するフリーラジカルを抑えることで脳保護します。
 
 
弓部大動脈手術の時はこの血管の形状のため、人工心肺にて低体温を作ります。温度は28度が目安で、もっと低体温を作る施設もあります。
そして低体温となったとき、脳を含めた全身の細胞は冬眠状態になるので、ここで循環停止をつくり、大動脈弓部を切開し手術していきます。
 
この時、低酸素により弱い脳を保護しようと、脳にだけ血液を流すシステムがあり、多くの施設でこれを使います。脳分離保護回路と言います。
この脳分離保護回路にラボナールやらラジカットを使う施設があります。
 
ラボナールに限らず、麻酔薬全般に脳虚血に対する脳保護作用があるとされています。
循環停止中は、細胞が冬眠状態で活動が抑えられているけど、それでもいくらかのダメージがあるだろう。これを抑えるために脳保護回路使うけど、さらに保護できる薬いっとこう。そういう感じで使われている薬です。
 
なので、施設によってまちまち。
私の病院では脳保護中もプロポフォールとラジカットを流しているようです。
どの薬が良いか?は執刀チームの好みで考えてもらってよいと思います。