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アラ50の医師が ゆるい説明しています

動脈瘤と静脈瘤 1

動脈瘤と静脈瘤ってなんなの?
 
という質問を頂きました。これについて説明します。
 
 
まず "瘤" ですが、"りゅう" と読みます。コブのことです。
血管のコブです。
 
血管は心臓と、脳や肝臓などいろんな臓器をつなぐパイプのようなものですが、このパイプが膨れ上がった状態です。
多くの場合自覚症状はありません。
血管が細くなったり詰まったりすると、臓器に酸素と栄養が届きにくくなるので、いろいろ症状が出ます。
例えば心臓の血管が狭くなる(狭窄する)と、常に重労働の心臓の筋肉に酸素と栄養が届けられなくなり、痛みや、それぞれの臓器の働きが不十分からくる症状が出ます。
 
逆に血管が膨れ上がっても、臓器に血液はちゃんと流れるので、特に困らないのです。
瘤ができてもほとんど症状はありません。
 
血管には動脈と静脈があり、どちらにも瘤は出来ます。
 
今回は動脈瘤の話をします。
動脈瘤は動脈にできる血管のコブです。多くの場合症状はありません。
 
ならほっといていいか?といわれると、そういうわけにもいかないです。
 
血管にはゴム風船のような性質があります。
 
想像してみてください。
ゴム風船をふくらませる時、一番たいへんな時はいつですか?
 
ゴム風船を膨らませ初めて、最初にふわっと大きくなるときが一番力が必要ですが、いったん大きくなった時は比較的小さい力でも徐々に膨らみ続け、最後は
 
バーン

破裂します。
 
 
 
血管も同様で、正常のサイズである限りは強度を保っていられるのですが、いちど膨れ上がると、その後は徐々に拡大していき、限界まで大きくなったら破裂してしまいます。
 
破裂したときに激痛が来ます。
血管が破けてしまった状態なので、大量出血します。体の外に血がでてくるわけではありませんが、血液は血管の中に存在しないと意味がありません。体内で出血します。
出血が多ければ当然、出血多量で命の危機にあいます。
 
 
 
脳内の細い血管が瘤化したものが脳動脈瘤です。
破裂しなければ多くの場合症状はありません。コブが大きくなって神経を圧迫されることによる視力障害がでることはありますが、多くの場合は脳ドックや別の目的で撮影したCTで発見されます。
破裂した場合はとんでもない頭痛と、その後に吐き気、嘔吐、意識障害などの症状が続きます。
破裂してしまったら緊急手術しかないです。頭の骨に穴をあけて医療用クリップでコブの根本をつまんで血を止める治療です。最近はカテーテル的にコイル塞栓術という方法で瘤を血管の内側から固めたりします。
 
 
 
<胸部大動脈瘤 腹部大動脈瘤>
心臓からすぐの太い血管を大動脈といい、心臓を出てすぐ、頭と両手の血管に枝分かれし、大動脈はそのまま弓上にぐいっと回って足の方に向かいます。内臓の血管を合計4本だしたら、へその位置で左右にわかれ、それぞれ足先と尻に行く血管に別れます。
胸の部分を胸部大動脈
腹の部分を腹部大動脈
といいます。
これらがそれぞれ拡大したら胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤です。
動脈瘤同様、破裂したら激痛が走り、命も危なくなります。
これらも他の目的で検査したCTや超音波検査でたまたま見つかることが殆どです。
正常より1.5倍の太さになったら瘤と呼ばれます。
胸部で直径6cm
腹部で直径5cm
を超えたら予防的に手術するほうが良いとされています。人工血管に取り替えてくる手術の他に、最近では、条件があえばステントグラフトと呼ばれる人工血管をカテーテル的に留置する方法もあります。
 
 
これらの他に内蔵動脈瘤とよばれる、腹部臓器への血管の瘤もあります。
 
 
この他に突然おこる大動脈解離の話もするべきでしょうが、それはまたそのうち。
 
<動脈瘤になりやすい人>
動脈瘤がどういう原因でなるかははっきりしてませんが
男性・加齢・喫煙・高血圧・家族に血管系の病気のある人がなりやすいと言われています。
 
性別・年齢・遺伝はどうしょうもありませんが
タバコをやめて塩を減らすことはできるはず。
 
 
 
 
 
動脈瘤はいつかは偶然みつかる不発弾のようなものです。
大きくないうちは破裂する可能性は限りなく低いですが、放置して大きくなると突然破裂となってしまいます。
動脈瘤と診断されたら定期的に検査して、サイズチェックはするべきですし、大きくなり破裂のリスクが高まったら治療するべきでしょう。担当の先生の説明をよく説明を聞いてください。
 
おだいじに~