Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

動脈瘤と静脈瘤 3

動脈瘤でもう一つ
厳密には瘤ではないのですが・・・
解離姓大動脈というのがあります。

最近だったら7つボールを集めるアニメの声優さんとかがこの病気で突然死していて、だいぶ話題になっていました。
 
<病態>
血管は動脈・静脈とも外膜・中膜・内膜の三層構造になっております。
外膜は周りの組織からの固定の役目があり
中膜は血圧に耐えるために丈夫にできていて
内膜は内皮細胞などで覆われており、血管の内側のコーティング
となっています。
 
中膜に亀裂が入り、ビリビリビリっと三層構造が壊れてしまった状態です。
くっついているはずの3層が剥がれてしまった状態なので大動脈解離と言います。
 
これはなんの前触れもなく、突然発症します。
歩いていた、座っていた、寝ていた、様々です。外傷(交通事故などでつよい衝撃がかかる)などで起きることもあります。亀裂がはいったらいっきにビリビリビリっと解離がすすみます。血管の壁が圧力で避けていくものなので、瞬間的に来ます。
 
<症状>
胸背部に激痛が走ります。
いてもたってもいられなくなる痛みです。たまーに症状がかるく、あとから発見される人もいます。たまにです。
 
 
<病態>
動脈が解離するとなにが問題でしょうか?
血圧に耐えるべきもっとも丈夫な組織がビリビリとさけてしまった状態です。耐圧板が一部剥がれてしまったわけです。動脈の壁が薄くなった状態ですから、そこが破れて大量出血しやすいです。体外に出血するわけではないですが、血液は体内にあってナンボです。体内にあっても出血は出血で、出血多量なら死にます。
血管は全身の臓器に血液を流すべく、多種枝分かれしていますが、ペラペラした避けた内幕の一部が血管の枝分かれの入口を塞いでしまうことがあります。入口をふたされると、その枝には血液が流れなくなるので、臓器不全でいろいろ障害が出ます。
破裂と虚血がでやすい、死亡率がとても高い病気なのです。
 
<種類と治療>
心臓と脳までの分岐におきた大動脈解離と、脳分岐よりあとにおきた大動脈解離で大きく分類されます。
前者をStanford A型
後者をStanford B型
と分類します。ほかの分類のしかたもあります。DeBakey(ドベーキー)分類と言います。調べてみてください。
AもBも破裂してたら緊急手術ですが、生存率は極めて低いです。手術にまでたどり着けないこともあります。
未破裂の場合、
A型は心臓と脳に障害がでやすいので、ほぼ緊急手術になります。人工血管置換術です。
B型はA型にくらべたら死亡率は低いです。まずは降圧安静療法が基本です。解離は血管の山火事みたいなもので、下手に手を出さないで鎮火をまったほうがよいです。臓器虚血が出た場合はそれに応じた手術となります。
 
死亡率は高いですが、急性期を乗り切ったら比較的安定しています。
解離がそのまま残ることもあります。避けたままでも血流を流すという機能が維持できる限りは問題ありません。正しく状態、もとの状態に戻すことがよい治療とは限りません。生存率を高め、合併症率をへらす治療がもっともよい治療です。
 

とはいえ、残存した解離は数年かけて徐々におおきくなって来ます。太くなると瘤と呼ばれます。
解離が直接の原因の瘤を、解離性大動脈瘤と言います。
瘤化して大きくなり、瘤破裂のリスクが、手術合併症のリスクより高まったら手術が検討されます。開胸開腹して人工血管置換術する従来の外科治療と、ステントグラフト内挿術という、比較的低侵襲な治療の2種類あります。
もしそんな病気に直面したら、主治医の話をよく聞いて方針を決定知てください。
 
こんな病気ならないのが一番いいに決まってます。
予防は塩分原料・禁煙等、いつものやつです。
これさえ飲んでいれば大丈夫! とか言う商品はすくなくとも現在は存在しません。
 
最近こういうオチばかりで恐縮ですが、そういうものなのです。
がんばりましょう
 
おだいじに~