Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

3 後負荷とはなにか?

前負荷とは拡張期の心臓の入口での血液の指標でした。

後負荷とは心臓の出口での血液の指標です。簡単に言ってしまえば血圧です。

正確には心臓が血液を送り出すときの抵抗勢力のことです。血圧や血管の硬さや血管抵抗も影響します。

 

前負荷のとき循環をジェットコースターに例えました。チェーンリフトで持ち上げられたコースターの高さが血圧だといえます。最高地点が高ければ高いほど、チェーンリフトはコースターを高く持ち上げなければなりません。頂上までコースターを持っていかなければジェットコースターは下り始めません。血圧が高ければ高いほど、心臓は血液に強い圧力をかけないと血液はでていかないのです。心臓のためには後負荷は低いほうが有利です。

 

後負荷が高くなる状態代表といえば高血圧です。

高血圧放置が体に良くないことは有名です。

血管が破裂しやすくなるとか、血管に微小な傷がついてこれを修復して・・・の過程で狭窄症を起こすというのが有名ですが、常に後負荷の高い状態で心臓に負担がかかるため心不全にもなりやすいです。後負荷が高すぎる状態ではもはや心臓は十分な血液を送り出せず、結果として心拍出量も低下します。

また大動脈弁狭窄症も後負荷がかかる病態です。心臓の最終出口に大動脈弁があります。開けば面積にして3cm2ほどある大動脈弁が固くなってしまい、弁が広がらなくなる病態です。狭い出口に大量の血液を絞りださなくてはならないため心臓にとってはおおきな負担になります。蛇口にホースを繋いで庭の水撒きするとき、そのままだと水は蛇口出口をちょろちょろ流れるだけです。このときホースの出口をしごいて狭くしてやると、水はシャーっと音をだし勢いよく飛び出していきます。出口が狭くなることでどれだけの圧力がかかるか想像デキると思います。余談ですが、大動脈弁狭窄症の胸部聴診できこえる心雑音はこの“シャー“の音です。穴が小さくなればなるほど吹き出す水にかかる圧力は増します。実際大動脈弁狭窄で開く面積が1cm2以下になれば外科的手術の適応です。

 

高すぎる後負荷は心不全などの素ですが、当然低すぎる後負荷もよくありません。

後負荷が低いということは血圧が下がりすぎた状態で、たしかに心臓にとっては楽ちんな環境ですが、末梢臓器に十分な血液が供給されず破綻してしまいます。

平均血圧で60mmHgあればよいと言われています。オートレギュレーションと呼ばれる機能で、心臓と脳だけでも保護できる血圧がこの値だと言われているからです。

後負荷が低い病態といえば敗血症で末梢血管の拡張が起きた状態や麻酔導入で末梢血管の拡張がおきた状態などです。

 

 

 

PCPSという循環補助装置があります。VA ECMOとも呼ばれます。心停止や著しい心不全のときに装着する人工心肺で集中治療室の命綱。太い静脈から血液を脱血して圧力かけて酸素化して太い動脈に戻す機械です。心臓がとまっても心臓と肺の機能を肩代わりしてくれるこの機械があれば大丈夫、ということでPCPSつけて弱った心臓をちょっと休ませよう、という医師はけっこう多いのですが、実は心臓にとってはとても迷惑な機械です。なぜか? 心臓の収縮力が弱っているところに、PCPSで大量の血液を動脈に戻すものですから後負荷がめちゃくちゃ高くなるからです。弱った心臓を休ませるどころか、負担を増やしてさらに悪化させるような機械です。なんで心臓に悪いものをなぜ取り付けるのか? それは、心臓が弱りすぎててPCPSの力を使わないと脳など他の臓器が虚血でだめになってしまうからです。
心臓の代わりに心臓にダメージを与えるPCPSをとりつけて、多臓器を守る。必要悪のような機械です。PCPS装着下でそれでも心臓を保護するためにIABPを一緒に装着することがおおくあります。

 

循環動態は、前負荷・後負荷・心収縮性のバランスで成り立っています。
次回は「心収縮性」について解説します。