Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

正常値に騙されない

さてここで問題です。

Hb(ヘモグロビン)14の健康な私が、病院の前で車に跳ねられ大量出血しました。
虫の息の状態でそのまま救命センターに運ばれ、治療に先立って血液検査をしました。

その時のHbの値はいくつでしょう?

Hb 8くらい?

正解は 14のままです。


なぜでしょうか?

では次の質問です。

果汁100%のリンゴジュースがあります。
それを半分飲みました。

残ったリンゴジュースの果汁は何%でしょう?

リンゴジュースは最後の1滴まで**果汁100%**です。
果汁とは「濃度」です。

ヘモグロビンも同じで、Hbは血液中の濃度です。

どんなに出血していても、補液して血液が希釈されるまでは濃度は変わりません。

つまり、大量出血している患者を見て
Hbが正常だから安心してはいけないということです。


そもそも正常値とは何でしょうか。

正常値とは、健康といわれる若い人たちから得たデータをもとに
統計学的に決められた範囲です。

標準から大きく離れているから必ず異常というわけではありませんし、
正常値だから全く問題ないというわけでもありません。


異常値を見つけると、すぐ補正したくなるものです。

しかし、その異常値が本当に患者にダメージを与えているのか。
それとも、そのままの方が患者にとって都合が良いのか。

そうした評価は常に必要です。

例えばCOPDの患者さんでは、慢性的に血中CO₂が高いことがあります。
しかし本人はその環境に適応しており、過剰な補正が逆効果になることもあります。


正常値と呼ばれるものは単なる参考値に過ぎません。
この数値のためだけに治療をすることが良いとは限らないのです。

大事なのは、その数値が正常かどうかではありません。

その数値が

・どのように変化しているのか
・どれくらいの速度で変化しているのか

つまり 「トレンド」 です。

モニタリングとは、単発の数値を見ることではありません。
変化の流れを読み取ることです。