Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

点ではなく線で見る

モニタリングで最も大事なことは何でしょうか。

それは 「トレンドを見ること」 です。

前回、正常値は絶対ではないという話をしました。
では実際の臨床では何を見て判断するのでしょうか。

答えは 変化の流れです。

 

例えば血圧です。

患者A
血圧 110/70

患者B
血圧 110/70

この2人は同じ状態でしょうか。

実は全く違う可能性があります。

患者A
130 → 120 → 110

患者B
70 → 90 → 110

どちらも今は110ですが、
Aは循環が悪化している途中で、
Bは改善している途中かもしれません。

単発の数値だけ見ていると、この違いは見えません。

 

心拍数でも同じことが起きます。

心拍数120。

この数字だけを見ると
「頻脈だな」と思うでしょう。

しかし

60 → 80 → 100 → 120

であれば
何かが進行している可能性があります。

出血かもしれません。
敗血症かもしれません。
疼痛かもしれません。

逆に

140 → 130 → 120

なら
治療が効いている途中かもしれません。

数値そのものよりも
どちらに向かっているのかが重要なのです。

 

 

もう一つ大事なのは
変化の速度です。

ゆっくり変化しているのか
急激に変化しているのか。

これは臨床判断にとても重要です。

例えばHbです。

昨日
Hb 12

今日
Hb 11

この変化はあまり問題ないことが多いでしょう。

しかし

30分前
Hb 12


Hb 9

なら
何かが起きています。

出血かもしれません。
溶血かもしれません。
測定ミスの可能性もあります。

いずれにせよ、
「ただの数字」として流してよい値ではありません。

 

 

ICUでは患者が急変することがあります。

しかし本当に「突然」でしょうか。

多くの場合、
急変の前には小さな変化が積み重なっています。

少しずつ上がる心拍数。
少しずつ下がる血圧。
少しずつ増える呼吸数。

こうした小さな変化を見逃すと、
突然の急変に見えてしまいます。

 

 

モニタリングとは
異常値を探す作業ではありません。

変化の方向と速度を読む作業です。

単発の数字ではなく
時間の流れの中で数値を見ること。

点ではなく
線として患者を観察すること。

それがモニタリングの基本です。

 

 

次回予告

次は
「どこまで許容してよいのか」
という話を書きます。

医療では
「正常に戻すこと」が常に正しいとは限りません。

ときには
あえて許容するという判断が必要になります。