手術室やICUでは、患者の状態を示すたくさんの数字がモニターに表示されています。
SpO₂
血圧
心拍数
EtCO₂
BIS
私たちは日常的にこれらの数字を見ながら患者を管理しています。
しかし臨床をしていると、あることに気づきます。
モニターの数字は、時々平気で嘘をつく。
例えばSpO₂。
手術中に突然
SpO₂ 82%
と表示されたらどうでしょう。
多くの人はすぐに
「酸素が足りない」
「換気が悪いのではないか」
と考えます。
もちろんそれが本当に低酸素である可能性もあります。
実は挿管チューブが外れていて、
呼吸が止まっていた。
なんて珍しいことではありません。
もっとも、呼吸機アラームが
けたたましく先にそのことを教えてくれますが。
しかし患者をよく見ると
- 胸郭はしっかり動いている
- EtCO₂も正常
- 顔色も悪くない
SpO2低いとチアノーゼといって顔や皮膚が青ざめて見える現象がありますがそれもない。
そして指を触ってみると
冷たい。
原因は末梢循環不良によるアーチファクト(ノイズ)ということも珍しくありません。
何らかの原因で末梢循環不全が起きてそうですが、呼吸の問題ではないようです。
動脈圧ラインでも似たことが起きます。
ある瞬間、モニターに
血圧 60/30
と表示されたとします。
しかし患者をみると
- 顔色は変わらない
- 脈も触れる
- 尿も出ている
よく見ると
トランスデューサーの位置が高い位置にあった。
ということもあります。血圧計をまいた腕を上に上げて図ると血圧は低く表示され、腕を下げると血圧は高く表示されるあの原理です。
もっとも・・・血圧が低く表示されているときは「どうしたどうした?」と原因を探すのでまだ良いのですが、逆にトランスデューサーが所定の位置から外れていて、モニターでは正常圧を示していて余裕こいてたら実は低血圧だった・・・なんてこともいっぱい経験してきました。遠い昔の話です。
モニターは正解を表示し続けるブラックボックスではありません。
センサーが拾った信号を機械が処理して数字として表示しているだけです。
信号が乱れれば、条件が乱れれば当然数字も乱れます。
仕事始めたばかりの医療者ほど
モニターを見て患者を判断しようとします。
学生のころの試験問題がそうできており、正解を探す訓練をしてきたからです。
それでもモニターに騙されてイタイ思いを数回すると順番が逆になるものです。
モニターが嘘ついているかどうかは患者を見ればわかりますから。
モニターはとても優れた道具です。これなしでは我々の仕事は成り立たない。
でもモニターの数字はモグラ叩きのモグラではありません。
叩いて消すべき敵ではないのです。
それは患者の状態を理解するためのヒントに過ぎません。
しかもそれはしばしば嘘をつきます。
心停止だとおもったらモニターが外れていたなんてザラです。アラームがなったら対処を始める前にまず患者を診ましょう。
木をみて森をみずといえば、一部分をみて判断し全体像を見誤ることのたとえですが、モニターを信じて患者を診ずと同義語と言えますね。
われわれ医療者の仕事は
モニターを見ることではありません。
患者を診ることです。
モニターはそのための
サポーターにすぎないのです。