呼吸といえば多くの人が
「酸素を取り込むこと」
だと思っています。
間違いではありません。
実際、呼吸に関するモニターといえばSpO₂で、
これが正常値なら呼吸は大丈夫だと安心する人がほとんどでしょう。
しかしそれだけでは不十分です。
呼吸とは
酸素を取り込むことと同時に
CO₂を排泄することでもあります。
食べ物を食べれば、不要になったものは便となり体外に排泄されます。
体の中でエネルギーを作るときも同じで、酸素が使われた結果としてCO₂が生まれます。
そしてこのCO₂を排泄できる臓器は
肺しかありません。
むしろ「呼吸しよう」というシグナルは
主に血中のCO₂分圧によって決まっています。
一定の分圧になると、人は無意識に呼吸をするようになります。
CO₂分圧が上がれば呼吸は速くなり、
さらに上がると息苦しさを感じるようになります。
人間の呼吸中枢は
酸素よりもCO₂に強く反応するのです。
試しに今ここで息を止めてみてください。
できればSpO₂モニターを付けながら。
息を止めると、すぐに苦しさを感じます。
1分も我慢すれば苦しくてたまらなくなるでしょう。
しかしその時点でも
SpO₂の値はほとんど変わらないはずです。
苦しさの原因はO₂ではなく
CO₂なのです。
呼吸はCO₂によってコントロールされている
と言ってもよいくらいです。
臨床でもCO₂は重要な情報をくれる
臨床でもCO₂はとても重要な情報を与えてくれます。
例えば集中治療室で
SpO₂は100%なのに
患者がぐったりしていることがあります。
血液ガスを調べてみると
CO₂が上昇していることがあります。
呼吸抑制があったのでしょう。
CO₂が上がると意識はぼんやりし、
いわゆる
CO₂ナルコーシス
の状態になります。
CO₂は血管にも影響する
CO₂は血管にも強く作用します。
特に脳血管です。
CO₂が上昇すると脳血管は拡張し、
脳血流が増えます。
その結果
頭蓋内圧が上昇します。
そのため脳外科手術では
過換気気味に管理してCO₂を下げるようにすることがあります。
さらにCO₂が上昇すると
血液の酸塩基平衡はアシドーシスに傾きます。
すると循環も悪化しやすくなります。
カテコラミンに反応しない血圧低下の背景に
アシドーシスが隠れていることも少なくありません。
EtCO₂というモニター
麻酔科医がよく見ているモニターに
EtCO₂
があります。
これは呼気のCO₂濃度を測るモニターです。
この数字には多くの情報が含まれています。
-
呼吸の状態
-
循環の状態
-
代謝の状態
EtCO₂は
この3つすべてを反映するモニターなのです。
心肺蘇生でも重要
心肺蘇生でもEtCO₂は重要な指標です。
胸骨圧迫中、
EtCO₂が突然上昇することがあります。
それは
自己心拍再開(ROSC)
のサインであることがあります。
SpO₂は
酸素化を教えてくれます。
しかし呼吸を理解するには
それだけでは足りません。
CO₂を見ること。
それがとても大事です。
呼吸とは
酸素を取り込むことではなく
CO₂を捨てること
なのかもしれません。