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アラ50の医師が ゆるい説明しています

カプノグラムの波形は何を教えてくれるのか

麻酔モニターには必ず
カプノメーターの波形が表示されています。

たいていモニターの下の方でしょうか。
四角い箱型の波形が並びます。

波形があれば呼吸している。
なければ呼吸が止まっている。

しかしこの波形は
それだけではありません。

麻酔科医は
数字よりも波形を見ています。

カプノグラムの波形には
呼吸だけでなく
気道や回路の状態まで
多くの情報が含まれています。

この波形は
いったい何を教えてくれるのでしょうか。


カプノグラムの基本

カプノメーターは
挿管チューブ付近のCO₂分圧を測定するモニターです。

呼吸というものは

CO₂がほぼ0の外気(酸素+空気)を吸い込み
肺でガス交換を行い
CO₂が約40mmHgの呼気を吐き出す

というサイクルです。

そのためカプノグラムでは

吸気時は0
呼気になると一気にCO₂が上昇
呼気中は横ばい
吸気になると再び0

という波形になります。

この波形は
4つのフェーズに分けて説明されます。


Phase 0 吸気相

新鮮空気を吸っている状態です。
新鮮空気にはCO₂はほぼ含まれないため
値は0になります。


Phase I 呼気開始

呼気が始まりますが
最初に出てくるのは気道の死腔ガスです。

ガス交換に関与していないため
CO₂はまだ検出されません。


Phase II 上昇相

肺胞ガスが混ざり始め
CO₂濃度が急速に上昇します。


Phase III プラトー

肺胞ガスのみが検出されます。
波形はほぼ横ばいになります。

このプラトーの終わりが
**EtCO₂(呼気終末CO₂)**です。

このプラトーの終わりがEtCO₂です。

EtCO₂については以前の記事で詳しく説明しています。

 

www.yorozusoudan.com

 


異常な波形

カプノグラムは
トラブルを教えてくれるモニターでもあります。

いくつかよくある例を挙げます。


波形が出ない

カプノメーターの電源や接続がされていない。

地味ですが
意外と多いトラブルです。

夜中など
毎回臨床工学技士さんを呼ぶのも気が引けるので
電源くらいは覚えておくとよいでしょう。


波形が0のまま

換気されていません。

考えるべきことは

・人工呼吸が始まっていない
・回路が外れている
・食道挿管
・サンプリングチューブ外れ

サンプリングチューブなら可愛いものですが
回路外れなら患者さんは窒息状態です。
早く気づく必要があります。

余談ですが
麻酔覚醒時に暴れる患者さんは
導入時の換気不十分の記憶が残っていて
パニックになっていることがある
と聞いたことがあります。


Phase Iが0にならない

呼気のCO₂を再呼吸しています。

ICUの人工呼吸器では
呼気はそのまま排気されます。

しかし麻酔器では
低流量麻酔という方法が使われることがあります。

吸入麻酔薬(デスフルランなど)を節約するため
呼気の一部を再利用する方法です。

このとき
CO₂を除去するために
ソーダライムが回路に組み込まれています。

ソーダライムが劣化すると
CO₂が吸収されなくなり
吸気にCO₂が混ざるようになります。

その結果
Phase Iが0にならなくなります。

ソーダライム交換
あるいは高流量麻酔に切り替えることで
正常に戻ります。


Phase IIがなだらかになる

気道狭窄を疑います。

いわゆる
シャークフィン波形です。

原因としては

・喘息
・COPD
・気管支痙攣
・挿管チューブ閉塞
・チューブ屈曲

などがあります。


EtCO₂が低い

EtCO₂が低いときには

・過換気
・代謝低下
・心拍出量低下
・肺塞栓

などを考えます。

人工心肺やPCPSなど
補助循環が装着されたときも
EtCO₂は低下します。

人工心肺離脱時に
この値が上昇してくれば
心肺血流が戻ってきたサインになります。


Phase IIIにくびれ

人工呼吸中に
自発呼吸が出始めている状態です。

麻酔薬
特に筋弛緩薬の量を
確認する必要があります。


波形の変化に気づくこと

大事なのは
いつもの波形と違うことに気づくことです。

どう変わったのかを観察し
原因を考えます。

多いのは
突然波形が消える回路外れ。

Phase IIがなだらかになるのも
よく見かけます。
痰で詰まっていたり
チューブが折れていたりします。

整形外科のセメント手術で
ショックになり
EtCO₂が突然0近くになったのを
初めて見たときは
妙に印象に残っています。


まとめ

蘇生では
ABCが重要と言われます。

A Airway
B Breathing
C Circulation

Cは心電図や血圧でも分かります。

しかし
AとBの異常を最初に教えてくれるモニターは
カプノメーターです。

だから麻酔科医は
この小さな波形を
いつも気にしています。

 

 

カプノグラムは
数字だけでなく
波形を読むモニターです。

次の記事では
EtCO₂が突然下がるとき
何が起きているのかを解説します。