手術中
カプノメーターの数字が上がった。
40 → 55
何が起きているのか。
多くの人はこう考える。
「換気が足りない」
確かにそれは正しい。
分時換気量を増やせば、EtCO₂は下がる。
しかし――
原因を考えないまま補正するのは危険である。
EtCO₂上昇には
いくつかのパターンがある。
EtCO₂が上がるとは何か
EtCO₂上昇とは
肺から排出されるCO₂が増えている状態
である。
原因は大きく3つに分けられる。
-
CO₂産生・供給が増えた
-
換気が低下した
-
測定系のトラブル
① CO₂産生・供給が増えた
1)代謝亢進(CO₂産生増加)
体がCO₂を大量に作っている状態。
-
発熱
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シバリング
-
悪性高熱
細胞活動が亢進すると
酸素消費が増え、CO₂産生も増加する。
特に悪性高熱では
EtCO₂上昇が最初のサインになることがある。
この場合は
-
原因除去
-
筋弛緩
-
全身管理
が必要になる。
2)血流再開(CO₂の一気流入)
これも重要なパターン。
末梢に溜まっていたCO₂が
肺に一気に戻る。
-
ROSC後
-
タニケット解除
-
大動脈遮断解除
-
体位変換
この場合
一過性の上昇で自然に改善することが多い。
3)外からCO₂が入る
代表例は
腹腔鏡手術
気腹に使用したCO₂が吸収され
血中CO₂が増加する。
この場合は
換気量を増やして対応する。
② 換気が低下した
最も基本的な原因。
CO₂が排出できていない状態。
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鎮静過多
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オピオイド
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筋弛緩
-
呼吸回数低下
また
腹腔鏡手術では
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横隔膜挙上
-
気道内圧上昇
により換気効率が低下する。
この場合は
人工呼吸設定の見直しが必要。
③ 測定系トラブル
意外と多い。
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水トラップ貯留
-
サンプリングライン屈曲
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再呼吸
再呼吸の原因
-
ソーダライム枯渇
-
回路不具合
この場合
いくら換気しても改善しない。
まとめ:麻酔科医の思考順序
EtCO₂上昇を見たとき
麻酔科医はこう考える。
-
換気は足りているか
-
代謝は上がっていないか
-
血流変化はないか
-
手術操作は何か
-
機械トラブルはないか
結論
EtCO₂の数字は
結果にすぎない。
重要なのは
その背景にある原因を推理すること。
モニターとは
単なる監視装置ではない。
思考を促す装置である。