手術後ICU。
特に、
心臓外科術後で遭遇することがある。
血圧はまだある。
ノルアドも流れている。
SpO₂も悪くない。
でも、
なぜか患者が悪い。
EtCO₂が少しずつ下がる。
換気条件は変えていない。
頻脈になる。
尿が出ない。
CVPは高い。
輸液をすると、
少しだけ良くなる。
でも、
また悪くなる。
脈はさらに速くなる。
Aライン波形は、
細く、
鋭いスパイク状になっていく。
CVPはさらに上昇。
そして突然、
血圧が落ちる。
カテコラミンを増やしても、
反応しない。
輸液も効かない。
もはや、
“心臓が動けなくなっている”
のかもしれない。
心タンポナーデとは何か
心タンポナーデとは、
👉 心臓の周囲に液体が溜まり
👉 心臓が拡張できなくなる状態
である。
心臓は、
血液を送り出すポンプである。
しかし、
送り出すためには、
まず
“血液を受け取る”
必要がある。
心臓は、
血液という弾丸を装填し、
撃ち出す銃のようなもの。
どれだけ動こうとしても、
装填できなければ、
撃てない。
心タンポナーデでは、
術後出血などによって、
心臓と心膜の間に血液が溜まる。
すると、
硬い心膜によって、
心臓が外側から圧迫される。
心臓は最後まで動こうとする。
でも、
👉 広がれない
その結果、
👉 preload が入らない
👉 cardiac output が落ちる
👉 flow が止まる
のである。
血圧はあるのに悪い
心タンポナーデが怖いのは、
👉 最初は血圧が保たれる
こと。
preload が減っても、
- 頻脈
- 血管収縮
- カテコラミン反応
によって、
身体は循環を維持しようとする。
だから、
「血圧あるから大丈夫」
と思いやすい。
しかし実際には、
👉 十分に流れていない
EtCO₂低下。
尿量低下。
乳酸上昇。
末梢冷感。
これらはすべて、
👉 flow不足
を示している。
なぜEtCO₂が下がるのか
EtCO₂は、
単なる呼吸モニターではない。
EtCO₂は、
👉 “肺へ届いた血流”
を見ている。
心タンポナーデでは、
心拍出量が落ちる。
すると、
肺血流が減る。
結果として、
👉 EtCO₂が下がる
のである。
つまり、
EtCO₂低下は、
👉 「回っていない」
サインである。
なぜ輸液で一瞬良くなるのか
タンポナーデでは、
心臓は外側から圧迫されている。
つまり、
👉 “入れづらい”
状態。
そこで輸液すると、
静脈還流が増え、
一時的に preload を押し込める。
その結果、
- 血圧
- EtCO₂
- 尿量
が少し改善することがある。
しかし、
これは根本治療ではない。
圧迫が続く限り、
また flow は落ちる。
特に、
- 大動脈解離
- 心臓外科術後出血
などでは、
時間とともに
さらに悪化していく。
なぜノルアドでは救えないのか
ノルアドは、
血管を収縮させ、
血圧を維持する薬である。
しかし、
心タンポナーデの本質は、
👉 “流入障害”
である。
つまり、
👉 心臓に血液が入れない
のである。
だから、
圧を上げても、
flow は改善しない。
ここを見誤ると、
ノルアドだけが増えていく。
でも、
患者は良くならない。
エコーで何を見るか
エコーは極めて重要。
その場で、
すぐ評価できるから。
見るべきは、
- 心嚢液
- 右室虚脱(RV collapse)
- 右房虚脱
- 拡張したIVC
など。
特に重要なのは、
👉 「右心系が潰れている」
こと。
右心は圧が低いため、
外側からの圧迫に弱い。
その結果、
右室は潰され、
静脈還流を受け取れなくなる。
スワンガンツならどう見えるか
スワンでは、
- CVP上昇
- cardiac output低下
が目立つ。
場合によっては、
拡張期圧が近づく
(equalization)
こともある。
つまり、
👉 「圧は高いのに流れない」
状態。
これが、
心タンポナーデである。
よくある間違い
「血圧あるから様子を見る」
危険。
ショックは、
👉 “血圧”だけでは分からない。
EtCO₂。
尿量。
末梢循環。
「何か悪い」という違和感。
そこを見る必要がある。
「ノルアドを増やせば何とかなる」
本質は、
👉 flow 障害。
圧だけ上げても、
救えない。
「輸液で改善したから安心する」
改善は一時的。
根本問題は、
👉 “圧迫”
である。
まとめ
心タンポナーデは、
👉 心臓が止まる病気
ではない。
👉 “広がれない病気”
である。
重要なのは、
- MAPではなく flow
- EtCO₂低下
- 尿量低下
- 「何か悪い」という違和感
- それがなぜかを考え続けること
心臓は動いている。
でも、
“回っていない”。
それが、
心タンポナーデである。
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