挿管され、
人工呼吸中の患者。
突然、
血圧が下がる。
SpO₂も下がり始める。
EtCO₂が低下。
頻脈。
CVP上昇。
Aライン波形は細くなる。
「換気が悪い?」
そう思って、
人工呼吸器を見る。
気道内圧が異常に高い。
バッグが硬い。
少し前まで、
こんな硬さではなかった。
片肺の呼吸音が弱い。
痰づまりではなさそう。
ARDSにしては進行が急すぎる。
そもそも、
そこまで強い侵襲も受けていない。
そして突然、
循環が崩れ始める。
血圧が出なくなる。
これは、
単なる“呼吸トラブル”
ではない。
👉 flow が止まり始めている。
気胸とは何か
肺は、
風船のような臓器と言われる。
でも実際には、
👉 胸壁にぴったり張り付いている。
日本人なら、
プッチンプリンを知っているだろう。
容器を逆さにしただけでは、
プリンは落ちてこない。
容器とプリンの間が、
真空のように密着しているから。
肺も同じ。
肺と胸壁の間は陰圧になっており、
ぴったり張り付いている。
だから、
胸郭や横隔膜が動くと、
肺も一緒に広がる。
これが呼吸。
しかし、
肺に穴が開くとどうなるか。
胸腔内へ空気が漏れ、
陰圧が壊れる。
すると、
👉 肺はしぼむ。
これが気胸である。
多くの気胸は、
自然に改善する。
胸腔ドレーンで脱気すれば、
落ち着くことも多い。
しかし、
👉 緊張性気胸だけは別。
緊張性気胸とは何か
緊張性気胸では、
肺から胸腔へ空気が漏れる。
しかし、
👉 戻れない。
一方向にしか流れない。
いわゆる
チェックバルブ状態。
すると、
呼吸するたびに
胸腔へ空気が溜まり続ける。
結果として、
👉 胸腔内圧が異常上昇する。
なぜショックになるのか
問題は、
肺が潰れることだけではない。
胸腔内圧が過剰に上がると、
- 上大静脈
- 下大静脈
- 右心系
まで圧迫される。
全身から戻ってくる血液が、
心臓へ戻れなくなる。
つまり、
👉 静脈還流が低下する。
すると、
👉 preload(前負荷)が減る。
その結果、
👉 cardiac output(心拍出量)が低下
👉 flow が止まる。
つまり、
緊張性気胸は、
👉 “閉塞性ショック”
なのである。
なぜEtCO₂が下がるのか
EtCO₂は、
呼吸だけを見ているわけではない。
EtCO₂は、
👉 “肺へ届く血流”
を見ている。
緊張性気胸では、
静脈還流が減る。
すると、
心拍出量が落ちる。
肺血流も減る。
その結果、
👉 EtCO₂が下がる。
つまり、
EtCO₂低下は、
👉 「回っていない」
サインでもある。
なぜ人工呼吸で悪化するのか
ここは非常に重要。
通常の呼吸では、
胸腔内は陰圧である。
しかし人工呼吸は、
👉 陽圧
で肺を膨らませる。
つまり、
気道から肺へ、
常に圧がかかっている状態。
そのため、
小さな肺の穴でも、
空気が胸腔へ漏れやすくなる。
さらに、
チェックバルブ状態になると、
胸腔内圧はどんどん上昇する。
すると、
👉 静脈還流がさらに低下
👉 flow がさらに悪化
する。
つまり、
👉 人工呼吸そのものが
👉 flow低下を悪化させる
のである。
何がヒントになるか
緊張性気胸では、
- 突然の低血圧
- EtCO₂低下
- 気道内圧上昇
- 換気困難
- 片側呼吸音低下
- CVP上昇
などがヒントになる。
特に重要なのは、
👉 “呼吸器トラブルに見えて循環が悪い”
こと。
ここに気づけるか。
胸部レントゲンが撮れれば、
- 気胸
- 縦隔偏位
などで診断できることもある。
肺エコーでも、
ヒントが得られる。
正常肺で見える
👉 lung sliding
が消失することがある。
気胸はノルアドでは救えない
ノルアドは、
血管抵抗を上げて
血圧を維持する。
しかし、
緊張性気胸の本質は、
👉 “流入障害”
つまり、
👉 心臓に戻る血液が減っている状態
である。
だから、
圧を上げても、
flow は改善しない。
ノルアドだけ増えていく。
でも、
患者は良くならない。
治療
治療は、
👉 胸の圧を逃がすこと。
つまり、
- 脱気
- 胸腔ドレーン
である。
圧が抜けた瞬間、
- 血圧
- EtCO₂
- 換気
が一気に改善することがある。
これは、
👉 “flow が戻った”
からである。
よくある間違い
「SpO₂低下だけを見てしまう」
緊張性気胸は、
👉 呼吸だけの病態ではない。
循環障害でもある。
「血圧低下にノルアドだけ追加する」
本質は、
👉 閉塞性ショック。
原因解除なしでは改善しない。
「人工呼吸器の設定をいじり続ける」
問題は換気設定ではなく、
👉 胸腔内圧上昇
かもしれない。
まとめ
緊張性気胸は、
👉 “肺の病気”
で終わらない。
本当に危険なのは、
👉 静脈還流障害
👉 preload低下
👉 flow停止
である。
重要なのは、
- MAPではなく flow
- EtCO₂低下
- 気道内圧上昇
- 「呼吸っぽいのに循環が悪い」という違和感
- 「何が起きている?」と考え続けること
肺が潰れているだけではない。
“回れなくなっている”。
それが、
緊張性気胸である。
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