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アラ50の医師が ゆるい説明しています

緊張性気胸 ― “呼吸の問題”に見える閉塞性ショック

挿管され、
人工呼吸中の患者。

突然、
血圧が下がる。


SpO₂も下がり始める。

EtCO₂が低下。

頻脈。

CVP上昇。

Aライン波形は細くなる。


「換気が悪い?」

そう思って、
人工呼吸器を見る。


気道内圧が異常に高い。

バッグが硬い。

少し前まで、
こんな硬さではなかった。

片肺の呼吸音が弱い。


痰づまりではなさそう。

ARDSにしては進行が急すぎる。

そもそも、
そこまで強い侵襲も受けていない。


そして突然、
循環が崩れ始める。

血圧が出なくなる。


これは、

単なる“呼吸トラブル”

ではない。

👉 flow が止まり始めている。

気胸とは何か

肺は、
風船のような臓器と言われる。

でも実際には、

👉 胸壁にぴったり張り付いている。


日本人なら、
プッチンプリンを知っているだろう。

容器を逆さにしただけでは、
プリンは落ちてこない。

容器とプリンの間が、
真空のように密着しているから。


肺も同じ。

肺と胸壁の間は陰圧になっており、
ぴったり張り付いている。

だから、
胸郭や横隔膜が動くと、
肺も一緒に広がる。

これが呼吸。


しかし、
肺に穴が開くとどうなるか。

胸腔内へ空気が漏れ、
陰圧が壊れる。

すると、

👉 肺はしぼむ。

これが気胸である。


多くの気胸は、
自然に改善する。

胸腔ドレーンで脱気すれば、
落ち着くことも多い。

しかし、

👉 緊張性気胸だけは別。

緊張性気胸とは何か

緊張性気胸では、

肺から胸腔へ空気が漏れる。

しかし、

👉 戻れない。


一方向にしか流れない。

いわゆる
チェックバルブ状態。


すると、
呼吸するたびに
胸腔へ空気が溜まり続ける。

結果として、

👉 胸腔内圧が異常上昇する。

なぜショックになるのか

問題は、
肺が潰れることだけではない。


胸腔内圧が過剰に上がると、

  • 上大静脈
  • 下大静脈
  • 右心系

まで圧迫される。


全身から戻ってくる血液が、
心臓へ戻れなくなる。

つまり、

👉 静脈還流が低下する。


すると、

👉 preload(前負荷)が減る。

その結果、

👉 cardiac output(心拍出量)が低下
👉 flow が止まる。


つまり、

緊張性気胸は、

👉 “閉塞性ショック”

なのである。

なぜEtCO₂が下がるのか

EtCO₂は、
呼吸だけを見ているわけではない。

EtCO₂は、

👉 “肺へ届く血流”

を見ている。


緊張性気胸では、

静脈還流が減る。

すると、
心拍出量が落ちる。

肺血流も減る。


その結果、

👉 EtCO₂が下がる。

つまり、

EtCO₂低下は、

👉 「回っていない」

サインでもある。

なぜ人工呼吸で悪化するのか

ここは非常に重要。


通常の呼吸では、
胸腔内は陰圧である。

しかし人工呼吸は、

👉 陽圧

で肺を膨らませる。


つまり、

気道から肺へ、
常に圧がかかっている状態。


そのため、
小さな肺の穴でも、

空気が胸腔へ漏れやすくなる。


さらに、
チェックバルブ状態になると、

胸腔内圧はどんどん上昇する。


すると、

👉 静脈還流がさらに低下
👉 flow がさらに悪化

する。


つまり、

👉 人工呼吸そのものが
👉 flow低下を悪化させる

のである。

何がヒントになるか

緊張性気胸では、

  • 突然の低血圧
  • EtCO₂低下
  • 気道内圧上昇
  • 換気困難
  • 片側呼吸音低下
  • CVP上昇

などがヒントになる。


特に重要なのは、

👉 “呼吸器トラブルに見えて循環が悪い”

こと。

ここに気づけるか。


胸部レントゲンが撮れれば、

  • 気胸
  • 縦隔偏位

などで診断できることもある。


肺エコーでも、
ヒントが得られる。

正常肺で見える

👉 lung sliding

が消失することがある。

気胸はノルアドでは救えない

ノルアドは、
血管抵抗を上げて
血圧を維持する。


しかし、
緊張性気胸の本質は、

👉 “流入障害”

つまり、

👉 心臓に戻る血液が減っている状態

である。


だから、

圧を上げても、
flow は改善しない。


ノルアドだけ増えていく。

でも、
患者は良くならない。

治療

治療は、

👉 胸の圧を逃がすこと。

つまり、

  • 脱気
  • 胸腔ドレーン

である。


圧が抜けた瞬間、

  • 血圧
  • EtCO₂
  • 換気

が一気に改善することがある。


これは、

👉 “flow が戻った”

からである。

よくある間違い

「SpO₂低下だけを見てしまう」

緊張性気胸は、

👉 呼吸だけの病態ではない。

循環障害でもある。


「血圧低下にノルアドだけ追加する」

本質は、

👉 閉塞性ショック。

原因解除なしでは改善しない。


「人工呼吸器の設定をいじり続ける」

問題は換気設定ではなく、

👉 胸腔内圧上昇

かもしれない。

まとめ

緊張性気胸は、

👉 “肺の病気”

で終わらない。


本当に危険なのは、

👉 静脈還流障害
👉 preload低下
👉 flow停止

である。


重要なのは、

  • MAPではなく flow
  • EtCO₂低下
  • 気道内圧上昇
  • 「呼吸っぽいのに循環が悪い」という違和感
  • 「何が起きている?」と考え続けること

肺が潰れているだけではない。

“回れなくなっている”。

それが、
緊張性気胸である。


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