ARDSの患者が、
人工呼吸管理されている。
酸素化が悪い。
SpO₂が低い。
FiO₂を上げても、
あまり改善しない。
酸素濃度を上げ続けるのも、
肺には良くない。
「PEEPを上げよう」
人工呼吸器を調整する。
SpO₂は改善した。
でも、
血圧が下がる。
EtCO₂も下がる。
尿量も減ってくる。
「鎮静が深い?」
「敗血症が悪化した?」
でも、
何か違う。
そのPEEP、
👉 “flow”を止めている
のかもしれない。
PEEPとは何か
PEEPとは、
👉 Positive End-Expiratory Pressure
(呼気終末陽圧)
のこと。
簡単に言えば、
👉 “肺を潰れにくくする圧”
である。
肺胞は、
呼気でしぼみやすい。
特にARDSでは、
- 肺が重い
- 水っぽい
- 虚脱しやすい
状態になっている。
そこでPEEPをかけることで、
👉 肺胞を開いたまま維持する。
その結果、
- 酸素化改善
- 無気肺予防
などの効果が得られる。
PEEPは、
肺にとって重要な設定。
しかし同時に、
👉 胸腔内圧も上げる。
ここが重要。
なぜ血圧が下がるのか
心臓へ血液が戻るためには、
👉 静脈還流
が必要。
しかしPEEPが高くなると、
👉 胸腔内圧が上昇する。
すると、
- 上下大静脈
- 右心系
- 肺血管
へ圧がかかる。
その結果、
👉 静脈還流が低下する。
つまり、
👉 preload が減る。
さらに、
肺血管抵抗も上昇する。
すると、
👉 右心室が肺へ血液を送り出しにくくなる。
その結果、
👉 左心室へ届く血液も減る。
つまり、
- preload低下
- cardiac output低下
- flow低下
が起きる。
そして、
- 血圧低下
- EtCO₂低下
- 尿量低下
へ繋がっていく。
「酸素化は改善しているのに悪い」
ここが、
人工呼吸管理の難しいところ。
PEEPを上げると、
👉 酸素化は改善する。
でも同時に、
👉 循環を悪化させることがある。
つまり、
SpO₂だけ見ていると、
👉 ショックを作る。
逆に、
循環だけを優先すると、
👉 酸素化が破綻する。
だから重要なのは、
👉 “妥協点”
を探すこと。
循環が保てて、
なおかつ
最低限の酸素化も維持できる。
そのギリギリを探す。
患者自身の回復力が、
最大限発揮できる環境を作る。
それが、
人工呼吸管理である。
どんな患者で起きやすいか
特にPEEPで循環が崩れやすいのは、
👉 “右心系が弱い患者”
である。
例えば、
- ARDS
- 肺塞栓
- 肺高血圧
- RV failure
など。
もともと、
👉 右室が頑張っている
状態。
そこへ高PEEPが加わると、
👉 RV afterload がさらに増える。
また、
- Hypovolemia
- 敗血症
- 心タンポナーデ
- 緊張性気胸
など、
👉 preload依存
の病態でも危険。
よくある間違い
「血圧低下にノルアドだけ追加する」
本質は、
👉 preload低下
👉 flow低下
かもしれない。
「SpO₂だけ見てPEEPを上げ続ける」
酸素化改善と引き換えに、
👉 循環を壊している
ことがある。
「EtCO₂を見ない」
EtCO₂低下は、
👉 flow低下のサイン
かもしれない。
「人工呼吸器は肺だけの設定だと思う」
違う。
人工呼吸器は、
👉 “循環”にも介入している。
まとめ
PEEPは、
👉 肺を守るための設定
である。
しかし同時に、
👉 flow を止める力
にもなりうる。
重要なのは、
- SpO₂だけ見ない
- MAPだけ見ない
- EtCO₂を見る
- preloadを考える
- 右心系を意識する
こと。
人工呼吸器は、
肺だけを触っているわけではない。
“循環”も、
同時に動かしている。
それを忘れてはいけない。
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