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アラ50の医師が ゆるい説明しています

尿が出ない ― 腎臓は “flow” を見ている

 

ICU。

血圧は65。

ノルアドも入っている。

SpO₂も悪くない。

でも尿が出ない。

輸液を入れる。

まだ出ない。

さらに入れる。

CVPは18。

浮腫が増える。

肺も重くなってきた。

それでも腎臓は動かない。

何が起きているのか。


尿量減少は “腎臓の悲鳴”

尿量。

ICU患者では、
ほぼ必ず見られているモニターの1つ。

尿量やIN/OUTバランスはもちろん大事。

でも本当に重要なのは、

👉 「老廃物を捨てられるだけのflowがあるか」

ということ。

海の生物を祖先にもつ我々は、
もともと液体の中で生きていた。

その後、
血液と循環という仕組みを体内に持ちながら陸へ上がった。

陸上では、
水分は極めて貴重。

だから身体は、
flowに余裕がなければ水を捨てない。

老廃物を捨てるためであっても、
循環が足りなければ尿は作れない。

👉 flowが満たされて、
初めて尿は出る。

つまり、

👉 「尿が出ている」

というのは、
flowがある程度保たれているサインでもある。

かつて、

「尿を絶やすな。尿が出ているうちは患者は大丈夫」

と言って、
ラシックスを大量に使う先輩がいた。

でも、
そう単純な問題ではない。

大事なのは、

👉 “尿を出すこと”

ではなく、

👉 “なぜ尿が出ないのか”

を考えること。


MAPがあるのに尿が出ない

「血圧を下げすぎると腎不全になる」

これは正しい。

でも、

👉 「血圧があるなら腎臓は大丈夫」

これは正しくない。

腎臓に必要なのは、
単なる圧ではない。

👉 “flow”

腎臓にflowがあるから尿が作られる。

圧をかけるだけでは、
尿は作れない。


腎臓は大量の血流を必要とする

腎臓は、
非常に血流依存性の高い臓器。

心拍出量の20%以上が流れる。

だから、
flowが落ちると、
腎血流はすぐ低下する。

そして最初に起きる反応が、

👉 「尿量低下」

腎臓は、
flow低下にかなり敏感。

つまり尿量は、

👉 “flow monitor”

として非常に優秀。

足りているのか。

足りていないのか。

それが問題になる。


なぜ尿が止まるのか

① 本当に flow が足りない

これは分かりやすい。

  • 出血
  • 脱水
  • 低心拍出
  • 心原性ショック
  • 肺塞栓
  • tamponade

flowが落ちる。

すると腎臓は、

「今は水を捨てる状況じゃない」

と判断する。

結果、
尿が止まる。

いわゆる腎前性腎不全。


EtCO₂とも似ている

EtCO₂が下がるとき。

それは、

👉 「肺へ戻る flow が減った」

ということ。

尿量低下も同じ。

👉 「腎臓へ届く flow が減った」

ということ。

つまり、

  • EtCO₂低下
  • SvO₂低下
  • 尿量低下

は全部、

👉 “flow低下”

を意味している。


② “出口が詰まっている”

ICUではよくある。

血圧はある。

むしろCVPは高い。

でも尿が出ない。

なぜか。

腎臓は、
血液を圧力で濾して尿を作っている。

重要なのは、

👉 「入口」と「出口」の圧差

つまり、

腎動脈圧 − 腎静脈圧

でflowが決まる。


CVPが高いと腎臓は苦しい

  • volume overload
  • 右心不全
  • 肺高血圧

CVPが上がる。

すると腎静脈圧も上がる。

つまり、

👉 腎臓の“出口”が詰まる。

すると腎臓はうっ血する。

flowが前へ進めない。

尿が出なくなる。


“水が足りない”とは限らない

ここが危険。

尿が出ない。


輸液する。


まだ出ない。


さらに輸液する。

これで悪化することがある。

なぜか。

原因が、

👉 “venous congestion”

だから。

右心不全の患者に、
さらに輸液を入れると、

CVPはもっと上がる。

腎臓はさらに苦しくなる。


「血液が多い」と「flowが十分」は違う

ここは重要。

うっ血とは、
静脈血が心臓へ戻れず渋滞している状態。

体内には水が多い。

でも、
それはflowが十分という意味ではない。

心不全では、
血液が溢れていても、
前へ進めない。

👉 “渋滞した循環”

では、
腎臓は苦しむ。

腎臓は、

  • 前から押される flow
  • 後ろの“うっ血”

両方の影響を受ける。

つまり、

  • preload不足
  • low cardiac output
  • venous congestion

これらすべてが尿量を減らす。


利尿剤が効かないとき

これも重要。

利尿剤は、

👉 「腎臓へ血液が来ている」

ことが前提。

つまり、

👉 flow がないと効きにくい。

特に、

  • severe low output
  • RV failure
  • shock

では、
そもそも腎臓が動けない。


“尿量”はかなり早く変化する

尿量の面白いところ。

腎臓は、
flow変化にかなり敏感。

つまり、

  • 出血
  • tamponade
  • RV failure
  • sepsis
  • PEEP増加

などで、
早期から尿量が落ちる。

だから、

👉 「なんか悪い」

を感じる重要なヒントになる。

尿が減ったら、
何か良からぬことが起きているかもしれない。


PEEPでも尿は減る

PEEPが上がる。

胸腔内圧が上がる。

静脈還流が減る。

右心系圧が上がる。

CVPも上がる。

つまり、

  • preload低下
  • venous congestion

両方が起きる。

すると尿量は落ちる。

ここでも、

👉 “呼吸がflowを止める”

が起きている。


“flowだけでは説明できない”無尿

ICUでは、
十分な血圧や循環を保っていても、
尿が出なくなることがある。

特に、

  • 敗血症
  • 大手術
  • trauma
  • ECMO
  • 人工心肺

など、
高度侵襲時。

全身に強い炎症が起きる。

サイトカイン。

毛細血管障害。

microcirculation障害。

細胞障害。

こうなると、
単純な“腎前性”だけでは説明できなくなる。

flowがあっても、
腎臓そのものが傷害され、
尿が止まる。

ICUでは、
こうした患者をCHDFでつなぎながら、
全身状態を整えることがある。

侵襲が落ち着き、
炎症が改善してくると、

1〜2週間して、
再び尿が出始めることもある。

腎臓は、
単なるフィルターではない。

全身状態をかなり正直に反映している。


尿量だけでは決められない

もちろん、
尿量だけでは分からない。

  • 腎前性?
  • ATN?
  • RV failure?
  • sepsis?
  • dehydration?
  • obstruction?

全部ありえる。

だから、

  • echo
  • EtCO₂
  • lactate
  • CVP
  • A line
  • body fluid

全部合わせて考える必要がある。


“数字”ではなく “流れ”を見る

尿量を見るとき大事なのは、

「何mL出たか」

だけじゃない。

重要なのは、

👉 “なぜ減ったのか”
👉 “なぜ出ないのか”

を考えること。

flowが足りないのか。

出口が詰まっているのか。

前へ進めていないのか。

あるいは、
侵襲そのものが腎臓を傷つけているのか。

腎臓は、

👉 「回っているか」

をかなり正直に反映する。


flowで考える

  • MAPだけでは腎臓は守れない
  • 腎臓は flow を見ている
  • CVP高値は “うっ血” かもしれない
  • EtCO₂低下は flow低下
  • SvO₂低下は酸素不足
  • 尿量低下は腎血流低下のサイン

ショックを見るとき大事なのは、

👉 「今、本当に回っているか」

を考えること。


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