ICU。
血圧は65。
ノルアドも入っている。
SpO₂も悪くない。
でも尿が出ない。
輸液を入れる。
まだ出ない。
さらに入れる。
CVPは18。
浮腫が増える。
肺も重くなってきた。
それでも腎臓は動かない。
何が起きているのか。
尿量減少は “腎臓の悲鳴”
尿量。
ICU患者では、
ほぼ必ず見られているモニターの1つ。
尿量やIN/OUTバランスはもちろん大事。
でも本当に重要なのは、
👉 「老廃物を捨てられるだけのflowがあるか」
ということ。
海の生物を祖先にもつ我々は、
もともと液体の中で生きていた。
その後、
血液と循環という仕組みを体内に持ちながら陸へ上がった。
陸上では、
水分は極めて貴重。
だから身体は、
flowに余裕がなければ水を捨てない。
老廃物を捨てるためであっても、
循環が足りなければ尿は作れない。
👉 flowが満たされて、
初めて尿は出る。
つまり、
👉 「尿が出ている」
というのは、
flowがある程度保たれているサインでもある。
かつて、
「尿を絶やすな。尿が出ているうちは患者は大丈夫」
と言って、
ラシックスを大量に使う先輩がいた。
でも、
そう単純な問題ではない。
大事なのは、
👉 “尿を出すこと”
ではなく、
👉 “なぜ尿が出ないのか”
を考えること。
MAPがあるのに尿が出ない
「血圧を下げすぎると腎不全になる」
これは正しい。
でも、
👉 「血圧があるなら腎臓は大丈夫」
これは正しくない。
腎臓に必要なのは、
単なる圧ではない。
👉 “flow”
。
腎臓にflowがあるから尿が作られる。
圧をかけるだけでは、
尿は作れない。
腎臓は大量の血流を必要とする
腎臓は、
非常に血流依存性の高い臓器。
心拍出量の20%以上が流れる。
だから、
flowが落ちると、
腎血流はすぐ低下する。
そして最初に起きる反応が、
👉 「尿量低下」
。
腎臓は、
flow低下にかなり敏感。
つまり尿量は、
👉 “flow monitor”
として非常に優秀。
足りているのか。
足りていないのか。
それが問題になる。
なぜ尿が止まるのか
① 本当に flow が足りない
これは分かりやすい。
- 出血
- 脱水
- 低心拍出
- 心原性ショック
- 肺塞栓
- tamponade
flowが落ちる。
すると腎臓は、
「今は水を捨てる状況じゃない」
と判断する。
結果、
尿が止まる。
いわゆる腎前性腎不全。
EtCO₂とも似ている
EtCO₂が下がるとき。
それは、
👉 「肺へ戻る flow が減った」
ということ。
尿量低下も同じ。
👉 「腎臓へ届く flow が減った」
ということ。
つまり、
- EtCO₂低下
- SvO₂低下
- 尿量低下
は全部、
👉 “flow低下”
を意味している。
② “出口が詰まっている”
ICUではよくある。
血圧はある。
むしろCVPは高い。
でも尿が出ない。
なぜか。
腎臓は、
血液を圧力で濾して尿を作っている。
重要なのは、
👉 「入口」と「出口」の圧差
。
つまり、
腎動脈圧 − 腎静脈圧
でflowが決まる。
CVPが高いと腎臓は苦しい
- volume overload
- 右心不全
- 肺高血圧
CVPが上がる。
すると腎静脈圧も上がる。
つまり、
👉 腎臓の“出口”が詰まる。
すると腎臓はうっ血する。
flowが前へ進めない。
尿が出なくなる。
“水が足りない”とは限らない
ここが危険。
尿が出ない。
↓
輸液する。
↓
まだ出ない。
↓
さらに輸液する。
これで悪化することがある。
なぜか。
原因が、
👉 “venous congestion”
だから。
右心不全の患者に、
さらに輸液を入れると、
CVPはもっと上がる。
腎臓はさらに苦しくなる。
「血液が多い」と「flowが十分」は違う
ここは重要。
うっ血とは、
静脈血が心臓へ戻れず渋滞している状態。
体内には水が多い。
でも、
それはflowが十分という意味ではない。
心不全では、
血液が溢れていても、
前へ進めない。
👉 “渋滞した循環”
では、
腎臓は苦しむ。
腎臓は、
- 前から押される flow
- 後ろの“うっ血”
両方の影響を受ける。
つまり、
- preload不足
- low cardiac output
- venous congestion
これらすべてが尿量を減らす。
利尿剤が効かないとき
これも重要。
利尿剤は、
👉 「腎臓へ血液が来ている」
ことが前提。
つまり、
👉 flow がないと効きにくい。
特に、
- severe low output
- RV failure
- shock
では、
そもそも腎臓が動けない。
“尿量”はかなり早く変化する
尿量の面白いところ。
腎臓は、
flow変化にかなり敏感。
つまり、
- 出血
- tamponade
- RV failure
- sepsis
- PEEP増加
などで、
早期から尿量が落ちる。
だから、
👉 「なんか悪い」
を感じる重要なヒントになる。
尿が減ったら、
何か良からぬことが起きているかもしれない。
PEEPでも尿は減る
PEEPが上がる。
胸腔内圧が上がる。
静脈還流が減る。
右心系圧が上がる。
CVPも上がる。
つまり、
- preload低下
- venous congestion
両方が起きる。
すると尿量は落ちる。
ここでも、
👉 “呼吸がflowを止める”
が起きている。
“flowだけでは説明できない”無尿
ICUでは、
十分な血圧や循環を保っていても、
尿が出なくなることがある。
特に、
- 敗血症
- 大手術
- trauma
- ECMO
- 人工心肺
など、
高度侵襲時。
全身に強い炎症が起きる。
サイトカイン。
毛細血管障害。
microcirculation障害。
細胞障害。
こうなると、
単純な“腎前性”だけでは説明できなくなる。
flowがあっても、
腎臓そのものが傷害され、
尿が止まる。
ICUでは、
こうした患者をCHDFでつなぎながら、
全身状態を整えることがある。
侵襲が落ち着き、
炎症が改善してくると、
1〜2週間して、
再び尿が出始めることもある。
腎臓は、
単なるフィルターではない。
全身状態をかなり正直に反映している。
尿量だけでは決められない
もちろん、
尿量だけでは分からない。
- 腎前性?
- ATN?
- RV failure?
- sepsis?
- dehydration?
- obstruction?
全部ありえる。
だから、
- echo
- EtCO₂
- lactate
- CVP
- A line
- body fluid
全部合わせて考える必要がある。
“数字”ではなく “流れ”を見る
尿量を見るとき大事なのは、
「何mL出たか」
だけじゃない。
重要なのは、
👉 “なぜ減ったのか”
👉 “なぜ出ないのか”
を考えること。
flowが足りないのか。
出口が詰まっているのか。
前へ進めていないのか。
あるいは、
侵襲そのものが腎臓を傷つけているのか。
腎臓は、
👉 「回っているか」
をかなり正直に反映する。
flowで考える
- MAPだけでは腎臓は守れない
- 腎臓は flow を見ている
- CVP高値は “うっ血” かもしれない
- EtCO₂低下は flow低下
- SvO₂低下は酸素不足
- 尿量低下は腎血流低下のサイン
ショックを見るとき大事なのは、
👉 「今、本当に回っているか」
を考えること。
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