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人工呼吸でショックになる理由 ― “呼吸”が flow を壊すとき

ICU。

挿管した。

人工呼吸器につないだ。

酸素化も改善した。

これで安心。

・・・

のはずだった。

 

数分後。

血圧が下がった。

EtCO₂も下がった。

尿量も減った。

ノルアドが増えていく。

 

何が起きたのか。

人工呼吸器は肺を助ける機械のはずなのに。

 

しかし人工呼吸器は、

肺だけに作用する機械ではない。

循環にも大きな影響を与えている。

 

呼吸と循環は同じ箱の中にある

肺と心臓は、

どちらも胸郭という密閉された箱の中に入っている。

 

人工呼吸器が気道へかけた圧は、

同じ箱の中にある心臓にも伝わる。

 

肺にとって都合の良い圧が、

循環にとって都合の悪い圧になることがある。

 

人工呼吸管理の難しさはここにある。

 

自発呼吸では血液は戻りやすい

普通に息を吸う。

 

横隔膜が下がる。

胸郭が広がる。

 

その結果、

胸腔内圧は陰圧になる。

 

この陰圧によって、

全身の静脈血は胸腔内へ吸い込まれる。

 

右房へ戻る。

右室へ入る。

肺へ送られる。

 

つまり、

吸気は静脈還流を助けている。

 

人工呼吸は逆

人工呼吸では、

空気を押し込む。

 

陽圧換気である。

 

吸気時、

気道内圧は上昇する。

胸腔内圧も上昇する。

 

すると、

静脈血は戻りにくくなる。

 

右房へ入りにくい。

preload低下。

flow低下。

血圧低下。

 

PEEPはさらに強力

PEEPが加わる。

 

肺胞は呼気終末でも膨らんだ状態になる。

 

胸腔内圧はさらに上昇する。

 

静脈還流はさらに減少する。

 

しかし問題はそれだけではない。

 

右室は肺へ送れなくなる

肺胞が過膨張すると、

肺毛細血管も圧迫される。

 

肺血管抵抗が上昇する。

 

右室から見ると、

afterload上昇である。

 

右室はもともと、

低圧の肺循環へ送り出すための省エネ設計。

 

左室のように高圧へ耐える構造ではない。

 

肺塞栓の記事でも説明した通り、

右室は「肺を越えるポンプ」である。

 

その右室に人工呼吸が重い負荷をかける。

 

右室は拡張する。

中隔は左室側へ偏位する。

左室へ戻る血液も減る。

 

そして心拍出量は低下する。

 

venous congestionが始まる

右室が前へ送れない。

 

すると血液は静脈側に溜まる。

 

CVP上昇。

肝うっ血。

腎うっ血。

 

尿量低下。

 

ここで起きているのは、

単なる血圧低下ではない。

 

flow停止である。

 

EtCO₂が下がる理由

人工呼吸器を触った直後、

EtCO₂が下がることがある。

 

なぜか。

 

肺へ届く血流が減ったから。

 

換気はされている。

 

しかし灌流されていない。

 

つまり、

肺は動いている。

でも flow が届いていない。

 

EtCO₂はその変化を教えてくれる。

 

身体は最後まで血圧を守ろうとする

人工呼吸で flow が落ちても、

最初はMAPが保たれることがある。

 

血圧もSpO₂も良い。

だから安心してしまう。

 

しかし、

腎臓は気づいている。

肝臓も気づいている。

末梢循環も気づいている。

 

右室から先へ送れないことで、

静脈側に渋滞が始まっていることに。

 

身体は苦しい。

でもモニターはまだ正常に見える。

 

だから経過観察になる。

 

そして限界が来たとき、

突然ショックとして姿を現す。

 

人工呼吸器は肺だけの機械ではない

人工呼吸器は肺を助ける機械である。

 

しかし同時に、

循環を壊す可能性も持っている。

 

だから人工呼吸管理では、

SpO₂だけを見てはいけない。

 

EtCO₂

尿量

CVP

A line波形

乳酸

四肢冷感

 

本当に見るべきなのは、

「今、flowは保たれているか」

だから。

 

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