Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

大動脈弁狭窄症

心臓は筋肉でできた袋です。
筋肉が収縮したり拡張したりすることで全身に血液をおくる臓器です。
 
単に筋肉袋が広がったりしぼんだりしているだけでは血液は同じところをいったりきたりで次に勧めません。
そこで心臓には逆流防止弁がついてます。
心室の、入り口と出口に1枚ずつ。右心室、左心室あるので計4枚あり、
心室の入り口を 僧帽弁
心室の出口を 大動脈弁
心室の入り口を 三尖弁
心室の出口を 肺動脈弁
といいます。
 
逆流防止弁にまつわるトラブルといえば
通過障害と逆流が防止できなくなっている状態の2つです。
故に弁膜症の病気といえば
狭窄症        ・・・道が狭くて通り抜けにくい、通り抜けるのにすごい抵抗がある
閉鎖不全症・・・逆流起こしていて、せっかく送り出した血液が戻ってくる
これらのMix
 
の3通りしかありません。
バイキンにやられてしまった感染性心内膜炎というのもありますが、感染症が原因であり、丁寧な抗生剤治療が必要というだけで、病態としては閉鎖不全症になります。
 
 
 
<大動脈弁>
大動脈弁は3枚の弁で構成されています。
大動脈弁は3枚の薄いパラシュートのような膜で構成されていて
心臓が収縮し血液が送り出されるときは開き、拡張するときに3枚の弁がパラシュートが膨らむことで穴が閉じ、せっかく送った血液が戻ってこないようになっています。
この薄い膜が動脈硬化などの原因で動きが悪くなり、徐々に狭くなってくるのが大動脈弁狭窄症です。
 
 
<大動脈弁狭窄症>
疾患は多く、軽度・中等度・重度の3段階で評価されますが
軽度・中等度では一般的に症状ないです。
心雑音として特徴的な音がするので、よく健康診断で引っかかります。
 
心臓音は"どっきん、どっきん"といわれますが
"どっ"が僧帽弁の閉じる音で、
"きん"が大動脈弁の閉じる音です。
"どっ"と"きん"の間で心臓が収縮して血液が大動脈弁を通り抜けているのですが、
その大動脈弁が狭くなっていて通り抜けにくくなっており、音がします。
強いて言うなら"どっ ざー (きん)" とか "どっ ごー (きん)"
みたいなイメージです。"きん"は聞こえないことも多々あります。興味あったら聞いてみてください。
 
 
<病態>
大動脈弁が狭く、心臓の出口が狭き門になっています。
心臓にとっては余計な負担になっています。
細いストローでジュースを飲むことが大変なことをイメージしてください。
 
心臓はそもそも余裕を持って作られているので
軽度・中等度では症状はないです。心臓のパワーで狭窄症の抵抗をカバーします。
しかし、さらに重症化し、弁の穴が狭くなってくるとカバーしきれなくなり、階段登ったりなどの労作時に息切れとか胸痛が出てきます。
脳にとどける血流が少なくなり失神することがあります。
 
胸痛とか失神発作がでるようなら積極的な治療をしたほうがいいでしょう。
さらに放置すると突然死のリスクが高いです。
 
 
<治療の適応>
心臓超音波や心臓カテーテル検査で調べます。
大動脈弁狭窄の前後でどれだけ圧力が違うのか?を見ます。
圧較差といい、40mmHg以上だと重症で手術となります。
40mmHgの圧較差だと、大動脈弁の口は本来なら3cm2なのが<1cm2以下程度になりますね。
 
 
<治療>
固く変性してしまったものは内服ではどうにもならないので手術になります。
人工心肺を用いて心臓を止めて人工弁に取り替えてくる弁置換が基本の術式です。
最近はカテーテルでなんとかする方法もあります。
カテーテルで風船で弁をパキっと広げてくる治療や
カテーテルで人工弁を留置してくるTAVIと呼ばれる術式は非常に低侵襲ですが、非確実なところもあります。