Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

コロナとワクチン

最近コロナワクチンの摂取が始まりました。
 
よく患者さんで聞かれるのが、
高血圧や糖尿病などリスクをもっているがワクチン接種うけて大丈夫?
という質問。
 
答えは・・・わかりません。
コロナもワクチンもどうなるか情報がまだほぼ無いからです。
 
副作用出ている人は実際いるので、全員が受けるべきモノでは無いでしょう。
 
そこで提案ですが
ワクチンに不安を感じる人は
ワクチン接種は次の冬まで待ってみてはいかがでしょう?
 
どうせこれから春・夏と、風邪や肺炎はオフシーズンに入ります。
夏に風邪引く人は減るし、去年だって夏の間中、コロナ発症の話題はずいぶん減ってました。
寒くなって1月になるまで緊急事態宣言は出ていません。
 
不安のまま摂取して後悔するより、
半年ぐらいゆっくりまって、事の成り行き見定めてから
予防接種するかどうか考えたらいいと思いますよ。
 
 

大動脈弁狭窄症

心臓は筋肉でできた袋です。
筋肉が収縮したり拡張したりすることで全身に血液をおくる臓器です。
 
単に筋肉袋が広がったりしぼんだりしているだけでは血液は同じところをいったりきたりで次に勧めません。
そこで心臓には逆流防止弁がついてます。
心室の、入り口と出口に1枚ずつ。右心室、左心室あるので計4枚あり、
心室の入り口を 僧帽弁
心室の出口を 大動脈弁
心室の入り口を 三尖弁
心室の出口を 肺動脈弁
といいます。
 
逆流防止弁にまつわるトラブルといえば
通過障害と逆流が防止できなくなっている状態の2つです。
故に弁膜症の病気といえば
狭窄症        ・・・道が狭くて通り抜けにくい、通り抜けるのにすごい抵抗がある
閉鎖不全症・・・逆流起こしていて、せっかく送り出した血液が戻ってくる
これらのMix
 
の3通りしかありません。
バイキンにやられてしまった感染性心内膜炎というのもありますが、感染症が原因であり、丁寧な抗生剤治療が必要というだけで、病態としては閉鎖不全症になります。
 
 
 
<大動脈弁>
大動脈弁は3枚の弁で構成されています。
大動脈弁は3枚の薄いパラシュートのような膜で構成されていて
心臓が収縮し血液が送り出されるときは開き、拡張するときに3枚の弁がパラシュートが膨らむことで穴が閉じ、せっかく送った血液が戻ってこないようになっています。
この薄い膜が動脈硬化などの原因で動きが悪くなり、徐々に狭くなってくるのが大動脈弁狭窄症です。
 
 
<大動脈弁狭窄症>
疾患は多く、軽度・中等度・重度の3段階で評価されますが
軽度・中等度では一般的に症状ないです。
心雑音として特徴的な音がするので、よく健康診断で引っかかります。
 
心臓音は"どっきん、どっきん"といわれますが
"どっ"が僧帽弁の閉じる音で、
"きん"が大動脈弁の閉じる音です。
"どっ"と"きん"の間で心臓が収縮して血液が大動脈弁を通り抜けているのですが、
その大動脈弁が狭くなっていて通り抜けにくくなっており、音がします。
強いて言うなら"どっ ざー (きん)" とか "どっ ごー (きん)"
みたいなイメージです。"きん"は聞こえないことも多々あります。興味あったら聞いてみてください。
 
 
<病態>
大動脈弁が狭く、心臓の出口が狭き門になっています。
心臓にとっては余計な負担になっています。
細いストローでジュースを飲むことが大変なことをイメージしてください。
 
心臓はそもそも余裕を持って作られているので
軽度・中等度では症状はないです。心臓のパワーで狭窄症の抵抗をカバーします。
しかし、さらに重症化し、弁の穴が狭くなってくるとカバーしきれなくなり、階段登ったりなどの労作時に息切れとか胸痛が出てきます。
脳にとどける血流が少なくなり失神することがあります。
 
胸痛とか失神発作がでるようなら積極的な治療をしたほうがいいでしょう。
さらに放置すると突然死のリスクが高いです。
 
 
<治療の適応>
心臓超音波や心臓カテーテル検査で調べます。
大動脈弁狭窄の前後でどれだけ圧力が違うのか?を見ます。
圧較差といい、40mmHg以上だと重症で手術となります。
40mmHgの圧較差だと、大動脈弁の口は本来なら3cm2なのが<1cm2以下程度になりますね。
 
 
<治療>
固く変性してしまったものは内服ではどうにもならないので手術になります。
人工心肺を用いて心臓を止めて人工弁に取り替えてくる弁置換が基本の術式です。
最近はカテーテルでなんとかする方法もあります。
カテーテルで風船で弁をパキっと広げてくる治療や
カテーテルで人工弁を留置してくるTAVIと呼ばれる術式は非常に低侵襲ですが、非確実なところもあります。
 
 
 
 
 
 
 
 

ペースメーカーの話 その1

ループレコーダーの話をしたので、よくあるペースメーカーの話をしたいと思います。
 
 
ペースメーカーは脈が遅くなるタイプの不整脈に対してつかわれます。
 
徐脈とは遅い脈のことで、定義としては、脈拍が1分間に60拍未満のときに徐脈といいます。脈拍60以下になったらすぐ危ない・・・ということはなく、脈拍40後半でも無症状の人がほとんどです。
 
徐脈になると心臓がもうすぐ止まる・・・と不安になる人も多くいるのですが、徐脈=もうすぐ死ぬではありません。
 
心臓は筋肉でできた袋で、この筋肉を心筋といいます。
心筋は心筋細胞がいっぱい集まって袋の形になっています。
心筋が収縮することで、筋肉の袋は縮まり、中に入っていた血液が力強く押し出されて、各臓器に送られています。
 
心筋細胞がバラバラに伸びたり縮んだりしても、中の血液はモミモミされているだけで、血液は先には送られません。
 
小学生のときのおしくらまんじゅうをしたとき、生徒たちがみんなでバラバラにやっても(協調してないと)力が抜けて圧力がかからず、おしくらまんじゅうになりません。
 
そこで、担任の先生(体育の先生?)が笛でピッピとふくと、生徒たちはタイミングよく力を合わせるようになり、圧力がかかり、すばらしい おしくらまんじゅうになります。リズムを取ることって大事ですね。タイミング=時期を合わせることを"同期させる"といいます
 
先生の笛の役目は心臓では電気信号でやっています。
生徒がどんなに元気でも笛ピッピがちゃんと聞こえないとおしくらまんじゅうできないように、心筋がどんなに元気でも電気信号が適切に伝えられないと、心臓は十分仕事できません。それで心臓には電気回路が備わっています。
刺激伝導路と呼ばれます。
 
その刺激伝導路の障害で、
笛の間隔がおそくなったり(洞不全症候群など)
伝達できなくなったり(房室ブロックなど)
すると脈が遅くなって障害が出ます。
笛が聞こえなくても生徒たちは勝手に動き出すように、心筋は信号がこなくても最低速度で動くようになっていますが、脈拍30-40くらいの非常に遅い脈です。
心筋細胞が元気でも、おそすぎる脈では全身に十分な血液が届けられないので、めまいやふらつきなどの症状が出ます。
 
それをなんとかするのがペースメーカーです。
常に心臓の脈を監視して、設定された心拍数以下にならないようにしています。
刺激伝導系を治すための治療ではありません。刺激伝導系の代わりをするものです。
だから植え込んだペースメーカーを外す事は普通なく、一生入れたままにします。
 
電池は7-10年持ちます。
充電式ペースメーカーはまだ存在せず、電池が無くなるまえに外科手術で本体だけ交換します。電池がなくなったら必ず心停止・・・というわけではないですが、手術する前の状態には戻ってしまいます。電池チェックは病院によりますが数ヶ月に1度行われます。
 
局所麻酔の小手術が必要で、
左右どちらか(利き手じゃない方等)の鎖骨の1-2cm足側に5cmくらいの皮膚を切り、そこに直径5cm、重さ20gくらいのペースメーカー本体と、そこから心房・心臓に電線をはわせます。
電線は1本か2本です。3本使うタイプのペースメーカーもありますが、それは重症心不全の心臓に使う特殊タイプです。電気ショックつきペースメーカーもありますが、これも徐脈だけの人には使用されません。
 
 
 
よくある質問で
携帯電話は使えますか?
〇〇は使えなくなる?
とかあります。
 
電磁波を出すもののそばにいるべきではないことになっています。
体内に埋めこまれたペースメーカーは無線で設定変更とかするのですが、無線とは結局電磁波なので、誤作動の可能性があるから・・・です。
電気で動くものはすべて電磁波を出すので、厳密に言うとすべてダメということになってしまいます。
が、強い電磁波でなければペースメーカーが狂わされることはないです。
そして電磁波は、発生機械から離れれば離れるほど弱くなっていきます。
 
磁石はごく近くだと強い力でものを引き寄せるけど、いくらか距離をあけると引き寄せのちからが弱くなりますね。電磁波は電気と磁力でできている波なので、ちかくにあるものは強い影響力、離れると弱い影響力になります。
キッチンのIHヒーターは強力な電磁波を出しますが、50cmほど離れれば大丈夫と言われています。スマホとか携帯電話は16cmほど離せば大丈夫。左の胸にペースメーカー入っている人は、右の耳に当てる電話なら問題ないです。電車で隣の人が電話かけてても、誤作動は起きません。
ペースメーカの真上に強力な磁石を置くとか、強力な電磁波が発生する発電所等で働くとかは避けたほうがいいでしょう。電源をいれたままの電気毛布・電気カーペットはさけた方がいいです。先に温めておいて電源をきったあと毛布に入り込むことは何ら問題ないです。
飛行機乗るときの金属探知機は通らないように指導されますが、立ち止まらなければとくに問題ないです。お店の入り口によく見かける盗難防止装置も同様にさっさと通り抜けて仕舞いましょう。急に気分が悪くなったら、そこから数メートル離れればいい程度に考えていて大丈夫です。
 
そもそも、誤作動といっても、ペースメーカーが止まっちゃうとかじゃありません。メチャクチャな脈になるというわけでもないです。
ペースメーカーはよく設計されていて、強力な磁力の元では、マグネットレートといって、ペースメーカー本体の、初期設定モードで動くようにできています。バッテリー残量のチェックにつかわれます。
なので強力な電磁波に触れて心臓が止まるとか、ぶっ倒れるとかはありません。
個別に細かい設定していたペースメーカーが、最低保障の設定に戻るので、そこでいささか不快に感じる人が出てくるかもしれません。が、ペースメーカーが機能停止するわけではないです。死んでしまうこともないです。
 
MRI(脳外科や整形外科でつかわれる強力な磁力を仕様した検査)は注意が必要で
MRI対応型のペースメーカーシステムを使っている人は無問題。
MRI非対応型のペースメーカーシステムを使っている人はMRI禁止です。
MRI対応型は10年くらい前からつかわれるようになりました。それ以上前にペースメーカー埋め込んだ人はMRI禁止です。
 
 
手術のリスクといっても、他の外科手術よりはリスク少ないですし、
ペースメーカーを植え込むだけで快適になるなら、積極的に考えていいんじゃないでしょうか。
ペースメーカー本体は1個100万円くらいです。
 
 
医療の相談お待ちしてます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ループレコーダー

意識消失発作を起こし、入院中という70歳台の女性から質問いただきました。
 
 
主治医の先生から
原因がわからない。不整脈が疑われるが、年に数回しか起きておらず、従来の方法では検査できないからループレコーダー植え込みをしようと思う。
 
 
ということでループレコーダーって何?
という質問です。
 
 
主治医の先生にきっちり説明してもらって、
十分理解してから治療をうけるかどうかを決めるのが理想的ですが、なかなか難しいです。
 
何度説明聞いてもわかんなくて結局直せないままでいる私のスマホやブログを思えば、その分野に詳しくない人が限られた時間で十分理解して判断するのは相当無理があると思います。
 
医療のことで疑問におもったら
そんなときこのブログお役立てください。
 
一般の方も医療者の方も大歓迎です。
納得できるまで質問してくださってOKです。
返事が遅くなるのは申し訳ないです。
 
 
 
 
 
本題に戻って。
 
今回のお悩み相談は
年に数回、完全に意識失うことがある人です。
既に脳の検査や心臓の検査は一通り済ませており、それでも原因がわからなかった様子。
それで主治医の先生はループレコーダーを使おうということになったとのことでした。
 
おそらく主治医の先生は
年に数回の意識消失発作は不整脈ではないか?
普段は正しい脈(洞調律)ですが、ふと脈がとまることがある
と考えているのでしょう。
それならペースメーカー植え込み手術すれば問題解決です。
 
でも検査に引っかからない。証拠がない。
実は別の原因かもしれない。
必要のない人に高額の医療費と感染などの命にかかわるリスクを負わせるのは倫理的に間違っています。
 
医療は"いちおう"で行うべきではありません。
 
 
健康診断でも検査する心電図は10秒ほど。
ホルター心電図という、24時間記録するものもあります。
これらは非常に有用な検査ですが、今回のように年に数回程度の発作があるようなケースだと難しいです。
 
そういう疾患のために最近は便利なものが生まれました。
ループレコーダーです。
長さ5-6cm 横幅2cm 厚さ1cm程度の小さな箱を胸の真ん中の皮膚bに植え込みます。
24時間365日心電図を測定し、無線で情報を飛ばします。発作がおきたら、あとから主治医がその時の心電図の記録をみる感じです。
 
あくまで検査機器であり、なんにも治療はできません。不整脈がおきても記録するだけです。
その代わり、電池寿命は3年間ほど。3年間分の不整脈の記録ができます。
 
局所麻酔で皮膚を麻酔してカテーテルのようなもので埋め込みます。痛くないわけではないですが、ペースメーカー手術よりさらに少ない侵襲と考えていていいのではないでしょうか。
 
3年たって電池がなくなったら、新しいものに付け替えるとか放置するとかです。
感染などのトラブルが起きなければわざわざ抜去しなくてもいいと思います。
 
 
多分いろいろ怖い合併症の説明をされていると思いますが、発生率は低いはずです。ご検討ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ECMOでの生存率を高めるために

コロナに限らず、肺機能が悪化し酸素化が悪くなると
まずは酸素投与
足りなければ人工呼吸
それでも駄目ならECMO
なんて流れになっています。
 
テレビとかだとECMOが最後の切り札、ECMOがあればコロナに克服できるみたいな報道されてますが、コロナ重症患者でECMO設置された人の実際の生存率は50-60%と言われています。
 
ECMOが取り付けられるということは
集中治療室のベッドに寝かされ、
人工呼吸器が取り付けられ、
いろいろな太い点滴がなされた上に、
ECMO用の直径7-9mmの管を首と足の付け根に刺され、
この状態で数週間から数ヶ月、肺炎が改善するまで絶対安静です。
他に手段がないから確かにECMOは切り札となりますが、実際は分の悪い勝負です。苦しく辛い治療です。
 
その間、肺がもとに戻る気配がなかったり、
ECMOの過酷な条件に耐えられなかったり、
ECMOが体に及ぼす悪影響(合併症)がおき、例えば脳出血など起きて脳死みたいな状態になったらそこで試合終了です。
 
ECMOは台数が少ないこと
あまりにも複雑で高度であり、集中治療室を構える病院しか常備しておらず、またこれを取り扱えるスタッフが少ないこと
機材が高価であり、取り付けた初日だけで400万円以上と医療費が相当かかること
コロナ重傷者が一気に増えたら日本の医療は間違えなく破綻してしまいます。
なによりECMO患者さん本人の苦痛は想像を絶するものです。
 
重症化するのはごく少数の人たちであり、過剰に心配しなくていいとは思いますが、手洗い・水分補給・禁三密して予防しましょう。
 
 
 
今回はECMOを担当する若手のスタッフさんにECMOとは何か?管理のポイントの説明を依頼されたので書いていきます。
明らかに一般向けではないので、一般の方はご遠慮ください。
ECMOってこんなに危険で難しくて大変なんだ、医療スタッフって相当頑張ってるんだ
だけでも感じてもらったら幸いです。
 
 
 
もくじ
<ECMOってなに?>
<ECMOの種類>
<ECMOの適応・不適応>
<ECMOの構造>
<ECMOの管理>
<ECMOから離脱するとき>
<ECMOの合併症とギブアップするとき>
<ECMOその他>
 
 
 
 
 
<ECMOってなに?>
ECMOって何?
という人は先のECMOの話を読んでみてください。
 
 
ECMOとはExtraCorporeal Membrane Oxygenationの略で、直訳したら「体外の膜で酸素化」でしょうか。人工心肺の事です。
脱血管を挿入してカテーテルの先端を右房に起きます。全身の血液が戻ってくるこの右房からカテーテル越しに血液を引き抜き
遠心ポンプで圧力をかけ
膜型人工肺で酸素化し
血液を体内に戻します。
 
 
 
<ECMOの種類>
このとき、静脈に返血するものをVV ECMOとよび、肺機能が弱っているときに使用します。
動脈に返血するものをVA ECMOとよびます。心機能が弱っているときに使用します。VA ECMOはPCPS(Percutaneous caidiopulmonary support)とも呼ばれます。
VはVein (静脈)、AはArtery(動脈)のことで
アクセスとしてカテーテルは鼠径動脈・静脈、内頸静脈が使用されることが多いです。
 
 
習慣的に
VV ECMOをECMO
VA ECMOをPCPS
と呼ばれるので、以後そう書きます。
 
何れにせよ機能が落ちてしまった臓器が復活するまでの命のつなぎです。
切り札ではありません。単なる延命です。
そもそも心臓や肺を良くする治療ではありません。
特にPCPSは心臓にはむしろ負担だし、体外循環使用時間が長くなればなるほど炎症物質が放出され全身のむくみや貧血などダメージが蓄積して行きます。
 
医療者としては、ECMOを取り付けるということは、単なる延命のイメージが実際あります。コロナ感染にECMOを取り付けて50-60%の生存率があるそうですが、これは素晴らしく高い生存率だと思います。
 
 
今回は主にECMOを中心に書いていきます。
PCPSはECMOの対比程度に書きます。詳しくは別の機会に。
 
 
<ECMOの適応・不適応>
ECMOの適応は呼吸が不十分な時です。血液ガスで判断します。
Murray Scoreという
1. 胸部レントゲン所見    (浸潤影の程度)
2. PaO2/FiO2 スコア        (酸素化に必要な酸素濃度の批評)
3. PEEP スコア                  ( 酸素化に必要な呼気終末期圧の評価)                
4. 肺コンプライアンス    (肺の柔らかさ)
の4項目それぞれ0~4の5段階で評価して合計が3以上ならECMOの適応があります。
 
具体的なイメージとしては
人工呼吸器でARDS(超重症肺炎)用の超高圧呼吸管理してても
・酸素化が悪い: High Peep 下でもP/F < 80
   (強引に説明するとPEEP 20mmHgの純酸素投与でもPaO2 < 80mmHg)
・ガス交換が悪い: 呼吸器ではコントロールできない高CO2、pH<7.2
ならECMOを選択するくらいで良いでしょう。
 
この基準を満たしていなくても、悪化重症傾向にあればECMO取り付けを考慮します。
無理やり超高圧呼吸管理で踏ん張りつづけたら肺にダメージが蓄積され復活できなくなると考えられており、それならさっさとECMOを取り付け肺を楽な環境にしたほうがよいとされます。
 
 
 
逆に適応にならないのは
長期ECMOのストレスに耐えられなさそうな人
肺の回復が見込めない人
ということで
重篤な基礎疾患を持つ人
末期がん患者
超高齢者
となります。
肺が回復する可能性が0に近い人にECMOつけるのは拷問であるというだけでなく、費用・機材・マンパワーなどの医療資源の観点からも考えてみるべき案件です。
適応外については厚労省で厳密な基準を作るべきでしょう。
 
 
 
<ECMOの構造>
膜型人工肺
遠心ポンプ
回路
 
 
<膜型人工肺>
肺の仕事といえばガス交換です。酸素を取り込むことと、二酸化炭素を体外に捨てることが大事な仕事です。当然、人工肺に求められる仕事もまさにこれです。
膜型人工肺は直径0.1㎜のストローのような繊維の束に空気を、その周りに血液を流します。繊維には血液は通り抜けられない細かい穴があいており、空気だけが通過できるようになっています。そこで血液は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出して行きます。血液と空気は直接は触れ合いません。
 
ECMOで血液の酸素化は酸素濃度(FiO2)でコントロールします。血液の酸素化を増したかったら人工肺をながれる酸素の濃度を上昇させます。
二酸化炭素は人工肺を通り抜ける空気の量でコントロールします。
 
人工呼吸の管理で
・酸素化は酸素濃度と酸素分圧で
二酸化炭素は分時換気量で
コントロールするのと同様に考えてみてください。
 
 
体外循環が長時間になると、人工肺内の空気の層に水がたまり、ガス交換の効率が悪くなります。数時間に一回空気フラッシュが必要になります。ECMOの機種によっては自動でやってくれるものもあるそうですが、そこは臨床工学技師さんに聞いてください。
 
 
 
<遠心ポンプ>
目の細かいフィルターに血液を通し、さらにそれを体に戻すためには原動力が必要です。ECMOには遠心ポンプが使われます。
三角錐のような形をしていて、底面に羽がついておりこれが高速で回転します。血液がこの羽で回転させられて遠心力がかけられ、これが送血の原動力になります。
遠心ポンプの利点は、
 ”遠心力以上の圧がかからないこと”
 ”比重の軽い空気は送られないこと”
です。その代わり、遠心ポンプの羽の回転数と圧力はあまり相関しません。遠心ポンプがくるくる回っているのに、送血管が折れ曲がっていた等のトラブルで送血できておらず、患者さんに酸素がとどいていなかったなんてこともしばしばあるので注意が必要です。
 
 
<回路>
全身から戻ってきた血液は
全身→右房→右室→肺→左房→左室→全身
というように循環しています。
重症肺炎で肺がガス交換できなくなった状態では、左室から送られる動脈血はガス交換されていません。
 
どうにかして動脈血を酸素化して戻してあげたい。
そこで右房に管を2本さし、そのうち1本から血液を引き抜き、ECMOにかけガス交換して、また右房に戻すことで、肺は機能してないけどガス交換された血液が動脈をながれるようにするのがECMOの回路です。
右房から血液を引き抜くことを"脱血"とよびその管を"脱血管"
ECMOから右房へ血液を返すことを"送血"とよびその管を"送血管"
といいます。
 
多くの場合、右総頸静脈と左右どちらかの大腿静脈から管を入れます。左右の大腿静脈のペアで設置する施設もあるようです。要は管の先端が右房にあればいいのです。
右房から血液を引き抜いて同じ右房に戻すのでガス交換前後の血液が混じり合ったまま肺を経て全身に流れていくため、SaO2 100%は望めませんし、望みません。
(右房脱血して左房送血すればいいじゃないかと考えた方は天才です。しかし、それをするためには管を入れるために心臓手術ばりの準備が必要です。高侵襲すぎて死亡率が高まります。
生理的に正しいことを目指すのではなく、生存率が高い方法で選ぶと現時点ではこれが一番。
 
ECMOはガス交換だけを担当し、体循環は本人の心臓の頑張りが頼りです。
ECMOのときは患者さんは劣悪な環境を強いられまる。いよいよ心臓が耐えられなくなったときはPCPSに切り替えられます。切り替えると書きましたが、実際はすでに刺さってる脱血管を流用する程度であとは全とっかえです。
 
PCPSの場合は心臓がダメになっていて、循環できなくなった状態です。だから、右房に集まった血液を脱血して酸素化し、大動脈に送血します。肺が機能していてもして無くても同様な回路になります。脱血は大腿静脈から右房に入れた管で、送血は大腿動脈を選ぶことが多いです。
 
 
<熱交換器>
体外に血液を引っ張り出す体外循環は回路温が下がりがちです。
体動がないように筋弛緩効かせることも多く、さらに体温は下がります。
患者の深部体温が37度になるようにします。
低体温は凝固能を狂わしたりと死亡率高めます。
体温管理は大事です。
 
 
<ECMOの管理>
<抗凝固>
血管外にでた血液は固まり、回路づまりや塞栓症の原因となります。
ヘパリン等の抗凝固剤をつかって
ACT 180-220くらいを目標にします。
血が固まらせないようにする治療なので出血リスクのある検査治療は避けたほうがいいです。胸腔穿刺などは刺入部からダラダラ出血して貧血になり、大量の輸血が必要になります。
 
 
 
<ECMOの設定>
遠心ポンプの回転数は1500-3000くらいで固定。
これはECMOの機種によって異なります。
 
モニタリングとして
血圧・脈・SpO2などの通常バイタルに加えて
回路脱血圧 (低すぎたら脱血不良)
人工肺前圧    (高すぎたら人工肺の詰まりか送血管のトラブル)
回路送血圧    (高すぎたら送血管の閉塞系のトラブル)
ポンプ流量(Flow) 1分間に3-4リットル前後
 
遠心ポンプの回転数と流量は比例しないので、回路送血圧が高くポンプ流量が落ちているときは
回路の屈曲
人工肺の詰まり
ボリューム不足
などの原因を探して対策しましょう。
数字がいくつか?より、以前よりどうなった?の変化の観察が大事です。
これらに急激に大きな変化がないことを監視します。屈曲なら戻せばすぐ戻ります。
それでも戻らなかったら回路交換や輸血輸液を考えましょう。医者が。
 
ECMOの管理をしていて
ECMOの脱血の酸素飽和度(SvO2)がそれまでより急に高くなったら、脱血のしすぎかもしれません。ECMOによってきれいになって戻した血液がそのままECMOに回収されています。リサーキュレーションといいます。
結果として全身に流れる酸素化血流が減少しているってことになり危険です。
遠心ポンプの回転が強すぎる
等が原因になるので対処します。医者が。
 
 
<ECMO下の呼吸器設定>
ダメ元ECMOですから、耐えるしかありません。
推奨されているECMO下での呼吸器設定はまさに軽傷の人用の設定です。
FiO2 < 0.4
PEEP < 10mmHg
気道内圧上限 <20mmHg
呼吸回数 < 10回
 
 
<血液ガス>
pH >7.3を目指して
pCO2 35 ~ 45
BE >-3を目指して
Hb > 12はほしい
SaO2 80-90%
pO2は見なくていいです。
 
これに加えて静脈血のSvO2もマメに計測が必要です。
 
絶対的な数字というより、
SaO2 ÷ (SaO2 - SvO2) > 3
であることが超重要です。
 
 
ECMOが必要ということは、まさに緊急事態宣言です。
普段の理想的な血液ガス状態を求めたら、疲労した肺が酷使され死ぬんDeath!
そもそも高濃度酸素は毒です。弱った肺では高濃度酸素毒には耐えられません。
高濃度酸素で無気肺がすすんだり肺線維症が進んだりします。
 
ECMO下の集中管理は
"生かさず殺さず"
これが最も生存率を高める方法です。
 
 
"生きている"ためにはpHがアシドーシスになりすぎないことが大事です。
ただ、ぎりぎり大丈夫な状態の絶対値はないので、
"この数字を目指す"というものではありません。
比較的頻繁に血液ガスをみて、どんどん悪化してなければいい、破綻してなければいい位のほうがよいでしょう。
 
 
 
低酸素だと意識がなくなっていきます。
二酸化炭素CO2が貯留すると人は"苦しさ"を感じます。
ストレスがかかり、その場から逃げようともがき苦しみます。
動かれるのははカテーテルトラブルのもと、事故のもと、酸素消費量上昇のもと。
 
CO2を35-45程度の生理的な環境にすることが大事です。
ECMOの送気流量でコントロールします。
 
 
 <SaO2 SpO2 SvO2>
どれも酸素飽和度です。ヘモグロビンがどれくらい酸素化されているかを見ています。
SaO2 は動脈血液ガスで測定される酸素飽和度
SpO2 はパルスオキシメーターで測定される酸素飽和度
SvO2 は静脈血液ガスで測定される酸素飽和度
SaO2とSpO2は、安定した状態ならほぼ同じ数字を出します。
 
ECMO中は
SaO2 80%-90%で十分です。
SvO2 の変化には気をつける必要があります。
有効なECMOのためには
SaO2 / (SaO2-SvO2) >3
が必要とされています。
 
<正常の状態のSaO2>
動脈血のSaO2が100%なら、その血液のヘモグロビンがすべて酸素されているということです。
酸素は血液に溶けにくく、そのままでは十分な酸素を全身に供給できません。
 
例えるなら、酸素は泳げない人です。泳げない酸素は必要量が全身に行き渡らないのです。
ヘモグロビンは酸素にとってボートのようなものです。酸素はヘモグロビンボートに乗ることで、血液にのり体の隅々まで送り届けられます。行った先で酸素はボートを降り、細胞の活動につかわれます。つかわれた酸素は二酸化炭素に変化し、これは血液によく溶けます。自力で泳いで肺に戻ります。二酸化炭素用のボートのようなものは存在しません。
 
SaO2が常に100%にならないのは無気肺などで酸素化(ガス交換)に関与できない肺の一部を通った血液があり、酸素化されていないヘモグロビンが動脈血中に交じるからです。普段SaO2を高めようとするなら、陽圧換気にして無気肺を減らすのがおすすめです。
 
人工呼吸器で投与酸素濃度(FiO2)を50%以上にするのは悪いことです。
高濃度酸素を長時間吸入すると気道粘膜や肺胞がこわれ肺機能が悪化していきます。FiO2は可能な限り50%以下にしましょう。酸素化を高めたいときはPEEPが有効です。
呼吸器のない状態のマスク酸素では100% 酸素を投与しますが、マスク内で呼気とまじりあうことでFiO2は50%くらいに落ちるので問題ないです。
 
<正常な状態のSvO2>
SaO2 100%とはヘモグロビンボートに酸素が満員に乗った状態でした。
血液は各細胞に送られ、酸素を届け、静脈を通って右心房に戻ってきます。
右心房に集まるヘモグロビンは酸素がつかわれた状態で、つまりヘモグロビンボートは空席が目立ちます。このときの乗車率をSvO2といい、正常のときは80%前後です。せっかく送った酸素、全部使い切ってほしいものですが、人の体はそうなってないのでしょうがないです。SvO2は、スワンガンツで計測するアレです。
SvO2が低いときは戻ってきたボートの乗車率が低い状態・・・つまり
1. そもそも行きのボートが満員じゃなかった (低酸素状態)
2. 酸素が非常に必要な状態で多くの酸素がボートから降りた (代謝亢進)
3. ボートの台数が少なかったため、目的地についたボートからは降りる酸素が多かった (貧血)
4. 川の流れが悪く、ボートが隅々まで行き渡るのに時間がかかるため、目的地にたどり着いた1台のボートからは降りる酸素が多かった (心不全: 低心拍出症候群)
この1,2,3,4のどれかか混合状態です。
SvO2が高いときはボートの下車率が低い状態であり、酸素がつかわれてない状態です。敗血症とかです。
 
 
<ECMO中のSaO2>
繰り返しになりますが、ECMOは右房から脱血して圧力かけて酸素化し、同じ右房に戻す血行動態です。ECMOを通った血液は完璧に酸素化されますが、全部の血液をECMOに通過させることはできません。回路上古い血液と新しい血液が交わってしまう、満員のボートも空席ばかりのボートも交わるためSpO2 100%なんて望めません。
SpO2は80%-90%くらいが目標になります。患者さんはそれでもなんとか生きていられるので、それで耐えてもらいます。
 
 
 
<ECMO中は最低限必要な酸素を届けられればいい>
酸素がないと細胞は死んでしまいます。
不十分な酸素の環境で即死するわけではなく、酸素がなくても嫌気代謝でしばらく頑張リます。嫌気代謝での副産物が、乳酸がたまりアシドーシスになります。これを放置すると循環システムが破綻し死ぬんDeath!
 
全身の細胞がかろうじて呼吸できるだけの酸素を与えればいい。
全身の細胞が最低限呼吸もできないほどの酸素投与だとアシドーシスになる。
 
pHやBE、重炭酸が許容範囲内にあるなら、酸素は最低量はとどいているとみなせます。
これらが徐々にアシドーシスに進んでいるときはECMO管理が不十分です。
放置したら破綻します。死ぬんDeath!
どうにかしてより多くの酸素がながれるようにしなくてはなりません。
 
 
ECMOは万能マシンではなく、ECMOで改善させられること限界があります。
そこで管理するべきなのは
ヘモグロビン濃度を満足させるための輸血と
十分な心拍数です。
 
 
 
これの解説をします。嫌でしょうがお付き合いください。
 
<酸素含量 Co2>
実際に酸素含量(Co2)の式というのがあって、血液100ml中の総酸素の量は
 
Co2 = 1.34 x Hb x 酸素飽和度 + 0.003 x PO2
 
となっており、PO2の変化など微々たるものだということがわかります。ゆえに
 
Co2 ≒ 1.34 x Hb x 酸素飽和度
 
と考えます。
 
 
<酸素供給量 Do2>
酸素が豊富に含まれる血液でも、流れていなければ全身には届きません。
どれだけの酸素が全身を巡っているのか? を知りたくないですか?
そこで酸素供給量 (Do2)という概念があって、1分間にどれだけの酸素が流れたか?の指標です。
式を見るのは嫌でしょうがもうちょっと。
 
Do2 = Co2 x 10 x 心拍出量
        ≒13.4 x Hb x 酸素飽和度
 
式の細かいことはカット(10は単位合わせの10です)。
 
この式からわかることは
全身への酸素供給は
  1. Hb(ヘモグロビン濃度)
  2. SaO2(酸素飽和度)
  3. C.O. (心拍出量)
におおきく影響受けるということです。
 
ちょっと脱線して、
どの程度の貧血(ヘモグロビン濃度が薄い状態)まで耐えられるのか? 考えてみましょう。
Do2 ≒ 13.4 x Hb x 酸素飽和度 x  心拍出量
ですから、呼吸が正常(SaO2 100%で変わらない)時、貧血になって低下したDo2は
心拍出量を増やすことでカバーできます。
ということは、貧血がすすんで脈拍が上がった時、それが貧血状態で余裕がなくなった時です。
手術出血でHb < 8となったら輸血しまことが多いですが、頻脈になったら貧血かな?と考えてみてはいかがでしょう。
 
 
ECMOの人工肺は赤血球を壊して行きます。構造上しょうがないのです。長期にECMOを稼働させると貧血が進みます。
 
貧血が進んでヘモグロビン濃度が半分で
酸素飽和度が80%
心拍出量が普段の80%
の環境になったとすると、正常の人にくらべて酸素供給量は
0.5 x 0.8 x 0.8 = 0.32
実に32%まで減少してみます。
 
貧血状態で、血ガスでアシドーシスが進みそうなときは輸血も考慮しましょう。
 
 
 
もう一つ大事な指標があります。お付き合いください。
 
<酸素消費量 Vo2>
全身の酸素消費量は
全身に送り出された血液のDo2 (=DaO2)から
全身から戻ってきた血液のDo2 (=DvO2)を引いたものです。
Vo2 = DaO2-DvO2
です。
 
そしてECMOのガイドラインによると
酸素消費量(Vo2) の3倍の酸素供給量(DaO2)をECMOで投与するのが生存のために必要とあります。
 
DaO2 / Vo2
=DaO2 / (DaO2 - DvO2)
=<略>
≒SaO2 / (SaO2-SvO2) >3
 
ゆえにSaO2とSvO2のこまめな測定が必要です。
 
 
 
 
SaO2 / (SaO2 - SvO2) > 3
にならないときは
酸素供給量(Do2)に問題があります。
繰り返しですが
Do2  ≒ 13.4 x Hb x SaO2 x 心拍出量
です。
そしてSaO2はECMOだと増やせません。
よって" >3 "にならないときは
 
Hbを上げる・・・輸血する
心拍出量を上げる・・・カテコラミン等増量
を考慮しましょう。
 
心拍出量をあげるとき、ECMOのフローあげても無駄です。心臓サポートではないですから。
心拍出量が上がらないときはPCPSに切り替えることも考慮しましょう。
 
 
 
 
 
 
<ECMOから離脱するとき>
ECMOの酸素化を停めて血液ガスが成り立つ時
ECMOの酸素供給をやめればECMOは"なかったこと"になります。
この状態で血ガス等がなりたち、胸部レントゲンが改善傾向にあればポンプ離脱を考えていいのではないでしょうか。
 
 
<ギブアップするとき>
回復が望めない状態になった
脳出血などで瞳孔散大・瞳孔不同など出現したら、もはや元の状態には戻りません。
ギブアップを考えるタイミングです。
 
 
 
<ECMO運営の現状>
そんな過酷な環境で数週間から数か月耐えられたら復帰できるかもしれません。
時間をかけたら復帰できる見込みのある人に適応があります。
末期がんの延命には適応がありません。
喫煙者など肺に障害あるひとも復活は難しい。
高齢者もむずかしい。
管理も大変でECMOに熟知しているスタッフが常時3-4人いないと成り立たない。
 
保険請求額として、ECMO初日が400万。翌日から1日あたり3万円請求される高額医療です。
 
一気に大量発生した場合はECMO取り付ける患者さんの選択も余儀なくされるでしょう。
先に感染し悪化した人たちが優先にするべきなのか・・・それとも・・・
 
 
今回書いたものが重症化コロナの生存率の向上に役立てたら幸いです。
 
 
ご質問受け付けてます。
 
 
 
 
 

あべのマスク

 
各世帯にマスク配ってどうするんだろう。
議員が国会でマスクしててどういうつもりなんだろう。
 
ウイルスの粒子は非常に小さく、マスクは簡単に通り抜けてしまうため予防効果はないです。
WHOが健常人がコロナウイルス予防のためにマスクするべきではないと言ってます。
今回安倍首相がバラマキしようとしている布マスクはウイルスにたいしては全く価値がありません。せめて不織布のマスクにしてくれよと。コロナには価値がないって証明されているものをばらまく意図とはいったい?
 
 
ウイルスにかかっている人が他人にうつさないためにつけるものです。
医療者がマスクするのは、すでに感染知ているものという前提で、その拡散を防ぐ目的です。医療者がコロナになりたくないと思うなら、そもそも現場に出ないのが一番なわけですから。
保湿効果があるから、風邪引いて調子悪い人に有効だし
マスクのフィルタは花粉はキャッチするので花粉症の人にも有効
マスクが無駄だといっているわけではありません。
 
しかし生産が追いつかなくなっている今、マスクは絶滅危惧商品(?)。
有効な使い方をするべきです。
国会とか、健康なはずの人達がマスクして的はずれな議論するのはおかしくないですか。感染が疑われているならそもそも国会来るなよと。マスクした首相がテレビに写ったら、いよいよ世紀末でマスクしなきゃって気持ちになり、またマスクが枯渇してしまうでしょう。
 
そしたら、普通の風邪の人や花粉症の人にマスクが行き渡らなくなり風邪は拡散し、花粉症の人は辛い毎日。
その他医療機関にもマスクが行かなくなり、
外科の医者はマスクなしで手術することになる。
そうしたらもう大変。術後感染だらけ。
免疫抑制剤とかつかっていて、日常にいるウイルスや細菌にも重症化してしまう状態の患者さんももう大変。
通常だったら起きないトラブルが起きて、退院できる人が退院できなくなってしまいます。
 
政治家ってのは理想の方向へ国民を誘導するべきものだと思うんですけどね。マスクから鼻がでちゃってる政治家とか、ほんとなんのためにマスクしてるのかと。国民を翻弄させるためだろうか。
 
 
 
私は感染症の専門医ではないので、コロナについては正確な予想などできるはずもないのですが
目にするコラム等から妄想すると
コロナに感染した人のうち
80%は軽症ですみます。
重症化する多くは高齢者だったりヘビースモーカーだったりの、体力的弱者で、2-5%が死亡すると言われています。
一定比率ですすむ案件です。
 
コロナがどういうウイルスなのか?
どういう対応が一番有効な方法なのか?
これは数年後、さまざまな都市の方針と結果をみて学者さんたちがまとめることです。いま正解なんてだれもわからない事です。
 
いま入ってくる情報だとイタリアは高齢者で基礎疾患を持つコロナ患者は治療拒否したようです。多くの患者が病院にながれこんで病院の機能がとまり、体力がある軽傷患者の助けられる命まで失うことを避けた政策といえるでしょう。
結果約2万人の死亡者が出ました。
生き残った人たちはコロナに耐性がある人たちなので、発生率はピークアウトし、収束に向かっている様子。
 
 
 
 
これに対して日本は感染が広がらないようにと人々が接触しないように学校閉鎖や外出自粛をうながしていることで死者はいまだ100人足らず。東京では感染が確認された人が毎日3桁ずつふえており、まだまだ感染拡大の可能性。
 
日本という国の方針は、とにかく死者を出したくない。
どの人も救いたいという政策の国だと思います。
若い人たちはコロナにかかってもほぼ大丈夫だから、バリバリ仕事してどんどん遊んでもらっていいはずです。
本人たちもそのほうが充実していて楽しいし、税収的には働いた分の所得税も遊んだときの消費税もふえて助かるはず。
 
それなのに、若者が働き遊ぶことを否定したのは、若者の中に介護職に従事するひとたちがいて、コロナに感染したその人達が老人ホーム・介護施設でコロナを拡散する可能性がたかかったから。
介護が必要な老人はコロナ重症化のリスクが高く、そういった人たちが急増すると、呼吸器も延命装置ECMOもすぐに枯渇し、医療崩壊が起き、コロナとは関係ない患者まで多くの命が失われる。
 
それを予防するべく、密閉・密集・密接空間にいかないようにと積極的にキャンペーンをし、収入が減った家庭に給付金をだし
とにかくコロナ感染者の増加をゆっくりにしているわけですね。
重症化する患者の総数はいっしょでも、発症を時期をできるだけずらして1日あたりの重傷者数をへらせば、医療崩壊は免れると。
ピークアウトはだいぶ先でしょうけど。
 
 
と思っていたのに
あべのマスクみてその考えが崩壊しました。
 
熱発していないみなさん
マスクあってもなくても対して変わらないから
手洗いと水分補給を徹底してください。
 
 
 
 
 
 
 

最後の切り札? ECMO エクモ

 
タライが頭に落ちてきても
トンカチで頭を殴られても
無事だった昭和のスターがなくなりました。
 
しむらーうしろーうしろー
とテレビの前で声をからしていた頃が思い出されます。
 
そのスターに取り付けられていたECMOってなによ
と聞かれたのでこれについて書きます。
 
 
ECMOとはExtraCorporeal Membrane Oxygenationの略で、直訳したら「体外の膜で酸素化」でしょうか。人工心肺の事です。
破綻した循環をサポートする機械です。
肺の代わりをする機械です。
きっとみなさん、そこまではわかっていると思います。
もうちょっとくわしく書くのでお付き合いください。多少に複雑な装置なので説明も長めです。
まずは"循環"を理解してもらえると、ECMOの仕事がわかりやすいかと思われます。
 
 
 
<循環>
会社とかでも一人でなんでもこなすワンマン社長タイプの人はいますが、多くの会社には企画部・運営部・製造部・営業部・経理部・・・と部署が別れているように、それぞれ役割分担して活動したほうが効率良いものです。
 
体の細胞も同様に
脳細胞は全身の総監督
筋肉細胞は運動・移動
肺細胞は呼吸
消化管の細胞は栄養摂取
肝臓の細胞は解毒・貯蓄
腎臓は水分量・電解質の管理と毒素の排出
と仕事内容が別れており、個々の細胞がしたことを血液にのせて全身の細胞に供給・還元するのが循環です。
 
循環する血液のルートは決まっていて、
全身の臓器の細胞から戻ってきた血液はすべて
静脈を通って右房・右室とめぐり肺に流れます。
そこで酸素化されて左房・左室と巡り動脈にのって全身の個々の細胞へと運ばれ、
各臓器・各細胞が活動し静脈また心臓に帰っていき右房・右室・・・・と絶えず循環しています。
 
 
<臓器の代わりをする装置>
例えば腎臓は尿を作ることで体内の毒素の排出と水分の調節をしています。
腎臓が機能停止し、尿が全く出ない腎不全となったら、体は水分と毒素であふれ3-4日で死んでしまいます。
腎不全となった人が生きていくためには透析が必要になります。
腕の太めの血管2箇所にそれぞれ太めの点滴をさし、そのうち一本から引き抜いた血液を透析液で洗浄しながらフィルターにかけて濾過し、もう一本の点滴から体に戻していきます。
腎臓が24時間毎日やっている仕事を週3回、4-5時間の透析でまかないます。
腎臓の機能を回復させる治療ではありません。
腎臓はすでに荒廃して機能しなくなってしまったから透析が導入されるわけす。腎機能回復のためには腎臓移植しかないです。
 
<重症肺炎>
コロナは重症化したとき、重症肺炎を引き起こします。
肺の細胞を破壊し、空気が入るべきスペースを水浸しにしてしまう病気です。陸地にいながら、水で溺れてしまった状態になるのです。
当然めちゃくちゃ苦しいです。肺に水分があるので、むせ返るような咳もいっぱい出ますが、改善はされません。
肺の一部分が水浸しになるだけなら、他の健康な部分の肺で呼吸をカバーできるのできるのですが、肺全体にこれがおきるともはや自力ではどうしょうもなくなります。
少ない健常な肺の部分でなんとかするために最初は酸素マスクで酸素を投与されるでしょう。
それでも足りなかったら、気圧という圧力を使って押し込みます。陽圧換気と言います。
呼吸器編で書いたPEEPに該当します。
 
 
 
 
<人工呼吸・陽圧換気>
コロナに限らず、肺が水浸しになって呼吸不全になる病態は少なからずあります。大きな事故や大手術の後など、大きなダメージを受けたあとにしばしば遭遇します。
長期に肺に高圧をかけ続けることは、肺のためには良いこととは限りませんが、現場では高圧を肺にかけて、無理やり呼吸し、重篤な炎症期を乗り切る治療が選択されます。それが一番生存率が高いからです。
肺が重症化してしまった時、肺のために優しい呼吸設定では、他の臓器が低酸素で死んでしまうのです。
 
 
 
コロナの場合は、そんな極限の圧力かけても呼吸が改善しないほど重度の呼吸不全になるようです。
肺も体も壊れる治療では意味がありません。
どうするか? 体外循環を選択します。
多くの場合、鼠径(足の付根)と右首に直径7〜8mmほどの太い管を刺しいれ、それぞれ先端を心臓(右心房)にくるように起きます。この2つの管をECMO(人工心肺装置)につなぎます。足から入れた管から血液を抜き出し、遠心ポンプとよばれるポンプで圧力をかけ、人工肺を通過させ、首のカテーテルから体内に戻します。
酸素を取り込む臓器は肺ですが、それが機能していないので、肺に血液が流れ込む前に十分酸素化してあげて、全身に酸素が流れるようにするのが目的です。
人工肺にも歴史があるのですが、今は膜型の人工肺を使います。
体外で膜型人工肺を使って酸素化するから
ExtraCorporeal Membrane Oxygenation (ECMO) エクモ
なのです。
 
なので、ECMOは肺を良くする治療ではありません。
一時的に、だめになって機能してない肺に変わって、全身に酸素を取り込む機械です。
 
心臓から血液を抜き、さらに高い圧力をかけて動脈に戻すECMOもあり、
経皮的心肺補助法 PCPS: percutaneous cardiopulmonary supportというのもあります。心臓が機能しないときの装置ですが、説明は今回は割愛します。
 
 
 
透析が腎臓を元気にさせる治療でないのと同じように、
陽圧換気もECMOも肺を元気にさせる治療ではありません。
肺が治るのを待っていたら低酸素症で脳など全身が機能停止してしまいます。
脳が機能を停止したらそれは"死"です。そこからの復活はありません。
そうならないための応急処置です。
 
人工心肺が稼働できる2-3週間の間、体のいろんな環境を整えて、肺が自力で回復するのを祈る治療です。
 
風邪は2-3日、インフルエンザもせいぜい1週間で治るように、コロナもウイルスであるなら、1-2週間で免疫が獲得され、肺は治ってくるはずです。
その1-2週間中、酸素が取り込めなくて低酸素症で死んでしまわないようにと取り付けられるのが人工呼吸器でありECMOです。
 
 
 
 
<ECMOの合併症>
人工呼吸器は比較的安全に管理できるので、長期の人工呼吸治療はたびたび見かけるものですが
ECMOは長くても一月程度しか回さない、というかまわせないです。
 
なぜか? ECMOには副作用というか合併症が多いのです。
体から血液を引き抜いて酸素化して体に戻すということにそもそも無理があるのです。
 
まず、カテーテル(くだ)が太いです。外来でちょっと点滴・・・で使う針のほぼ10倍の太さです。
透析のときの点滴の針よりぜんぜん太いです。
透析は血液の一部を4時間かけて洗う治療ですが
ECMOは1分間に4リットル全身をめぐる血液の殆どを酸素化しなければならない治療なのです。
細いカテーテルでは十分な量の血液交換ができないですし、細いと高い圧がかかってしまい、血管や血球がより壊れやすくなります。
そして、太いカテーテルを刺すというだけで痛みがあり感染や出血の合併症が起きます。
 
切り傷の出血がすぐに止まるように、血液は血管外にでたら固まるという、大事なメカニズムがあリます。
そのまま透析やECMOを接続して動かすと、すぐに回路内の血液が固まって詰まってしまいます。
そこでどちらも血が固まらないようにとヘパリンという薬で管理するのですが、これはつまり出血しやすい体にさせるということです。
 
カテーテルや人工肺など、人工物にふれるだけで血液はでダメージを受けて行きます。炎症がどんどん進んでいきます。
人工肺を通るたびに赤血球や血小板がどんどん壊されていきます。狭い膜型人工肺に血液を流して酸素化すること自体が血液にとって非常に負担です。
長時間の体外循環は輸血がどんどん必要になっていきます。
輸血とは血液の移植です。血液型があっていても、他人の血液を大量に入れ続けることは肺や肝臓を悪化させます。アレルギーが起きることもあります。
 
全身にそれほどの炎症がある状態では、尿も出なくなります。持続型の透析もつけます。
命をつなぐための装置は、命を削るような治療でもあるのです。
 
血小板もへり、炎症も重度になり、凝固系が狂い始め、血が固まらなくなります。
至るところで出血が起きます。
出血が脳に起きると・・・脳障害が起きます。
復活できないレベルの脳障害を確認されたら、もはや回復のための治療ではなくなります。
延命治療です。復活出来ないからです。
麻酔で深く眠らせているとはいえ、延命治療は苦しいのです。復活できないと確認されたら、はやく苦しみから開放してあげるべきではないでしょうか。
 
脳出血などの致命的な合併症が起きる前に免疫が獲得できて、復活できる体力をもっているひとなら2週間位でなんとか補助の機械が外れていって回復できるかもしれません。
 
この治療中の本人にかかるストレスは想像を絶するものです。
そして、これを集中管理スタッフが不眠不休で行います。
担当医グループ、ナースチームは当然として、ECMO操作に臨床工学士が患者さんに張り付きます。
コロナ以外の感染症もでやすく、薬の適正使用のために薬剤師もひたすら見えない敵と戦います。
ECMOが回ると、多くのスタッフが力を合わせて見えない敵と戦い始めます。
それでも生存率は高くありません。生命の限界を超えた治療で、些細なことで簡単に破綻するからです。
 
いま、コロナに感染し重症化した人でその半分が復活出来ているようです。
これはすごい優秀な成績だと思います。
私が医者始めたばかりのころ
ECMOが装着される = 延命
のイメージでした。
ずっと研究され成績を上げている医療チームの方々には頭が下がります。
 
 
 
 これだけECMO治療は大変なことなのです。
「コロナにかかっても、呼吸器もECMOもあるじゃないか」と考えられていた方に、
たしかに他には方法がなく、切り札だしけど、皆さんの思っている理想の治療器具からは程遠いことを理解してもらえたら幸いです。
私はコロナになって重症化したら、ECMOまではいいです。
 
 
 
ECMOがついたとテレビで見た時、その後2週間くらい頑張ってさてどうだろう?と思っていました。
すごい元気なイメージがありますが、70歳で若いとは言えず、
ヘビースモーカーや大量の飲酒歴があり、そうとう体は弱っていたようです。
それでもECMOついて1週間持たずに決着がつくのは正直早かったなと思います。
 
ファンとしてはあっさり復活してコロナのコントをやってくれる未来を期待していました。
お悔やみ申し上げます。