Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

コロナウイルス感染とディズニーランドやUSJの休園をみて思うこと

小中学校が休校になったとおもったら
とうとうディズニーランドまで休園になってしまいました。
 
 
私は公衆衛生の専門家じゃないし
感染症について多くを語る知識はないです。無責任なネタです。読み流してください。
 
しかし今回は過剰に大騒ぎしているなと感じます。
 
私としては、コロナ騒ぎは春になって暖かくなったら終わっちゃうものだと思っています。例の豪華客船の隔離がおわって人々が開放され、ちらほら感染者があらわれ、数人の死亡者も出ています。
 
でも、それってインフルエンザ感染と同じです。
インフルエンザは毎年数100万以上が感染し、1万人が死亡しています。
それにくらべたらコロナの猛威も大したことなさげ。
中国で大人数が死んでいるのは、発症者をそれぞれ隔離して丁寧に治療する環境が整ってないからだと思います。その証拠に日本での死亡者はまだまだわずか。
 
インフルエンザ並の死亡率で終われば、コロナの有害性はインフルエンザと同じといえます。
インフルエンザに対する驚異くらいで考えていいんじゃないかと思います。
 
どうせ数年以内にワクチンやタミフルのようなコロナを速攻でやっつけるような薬が開発されることでしょうし、鳥インフルエンザのときとかSIRSのときのような、そんなこともあったねぇとなるかと予想します。
 
手洗いうがいを徹底し
水分を多くとって
加湿して
身体を暖かくして
バランスの良い健康的な食事をとり
運動をする
 
ことが免疫力を高める基本で、これをやり、人混みの中にいかなければインフルエンザと同様の経過をたどるでしょう。実際日本ではコロナウイルス対策のおかげでインフルエンザ発症数も減ってます。
マスクに予防効果はないですが、鼻や口が加湿されることと、自分が感染していたときの拡散予防は利点だと思いますが、買い占めして在庫がなくなるまでして必要かと考えるとそれは過剰だと思います。
私は品薄というのもあり、職場以外ではマスクしてません。
マスクがないと外に出られないと心配する人は、自宅にいながら収入を得たり、ネットショップから宅配してもらったりと、家に出ないで生活する方法を模索するほうが、あとあといいことがありそうです。
 
 
 
 
なんでこんなに大騒ぎなのかといえば
政府の責任のある立場、マスコミという正しい情報を伝える立場にある人達は
現状報告に対して、オーバー気味に言います。
そもそも、無害な情報なんてぜんぜん流行しません。マスコミはその伝達力を高めようとショッキングな情報を強調しがち。感染者の殆どが元気に復活しているのに、その報道はほとんどなく、どれだけ感染が広がったとか、高齢者がなくなったとか。体力的弱者がインフルエンザでなくなることは毎年のことで、これは生物として自然の摂理。それを危険だと報道するのはやりすぎじゃないかしらと思います。
 
マスコミは情報を受け取ってもらって収入が発生する業界なので、人が興味を引くようなネタを常にさがしており、そのネタが成功者や権威者の失敗だったり、ショッキングなネタは絶好の収入源です。
健康番組とかが多くあるのもそのためでしょうし。身体がギクシャクし始める年齢人が視聴者としておおいことの裏付けです。
 
そして予備知識のない一般人は、ショッキングなところだけ覚えているものです。学校の講義をきいてもごく一部しか記憶に残ってないように、テレビで一番印象深く報道されたことのみが記憶され、それらが自己解釈でつながってパニック状態になってる。
 
最近ではマスクだけじゃなくトイレットペーパーの買い占めも始まっているようで、オイルショックかよと。歴史の教科書で、オイルショックのときにトイレットペーパーを買い占めようとしていた昭和の人たちのことが書かれていますが、数年後はコロナショックでマスクを買い占めようとしている令和の人たちは滑稽に映ることでしょう。どちらも過剰情報の鵜呑みで起きたことです。
 
 
 
品切れのマスクがなくて不安に悩まされるより
手洗い・うがいを徹底して
水分とって
お家にいて暖かくしているのがいいですよ。

循環停止のときのラボナールとラジカット

質問いただきました。
 
弓部置換手術時などの循環停止操作をするとき、多くの施設で選択的脳分離保護循環をすると思います。
 
なにそれ?
という方で興味のある方は質問ください。1から説明すると膨大で的を得なくなるので需要があったらその都度書いていくシステム。
 
それと、手術術式というのは、この一つの方法でなければならないというものはありません。
多くの手技で似通ってますが、細かなことが施設ごとに異なっています。
 
同じすき焼きでも関東風・関西風あるように
弓部置換のときの術式や手順、使用する薬剤は施設ごとに違うものです。
 
すき焼きは美味しければいい、食べて満足できればいい
と同様に
手術は、治療を受けた患者さんが満足に退院できればそれがすべてです。
生存率的や合併症罹患率に有意差がないものは採用しても採用しなくても同じ確率の結果が得られると考えます。どっちをとってもいいのです。
 
 
というのは前置きに。やっと循環停止中に使う薬の話です。
ラボナールは麻酔薬です。多くの麻酔薬に脳保護作用があると言われています。
ラジカットは脳保護剤です。脳虚血のときに発生するフリーラジカルを抑えることで脳保護します。
 
 
弓部大動脈手術の時はこの血管の形状のため、人工心肺にて低体温を作ります。温度は28度が目安で、もっと低体温を作る施設もあります。
そして低体温となったとき、脳を含めた全身の細胞は冬眠状態になるので、ここで循環停止をつくり、大動脈弓部を切開し手術していきます。
 
この時、低酸素により弱い脳を保護しようと、脳にだけ血液を流すシステムがあり、多くの施設でこれを使います。脳分離保護回路と言います。
この脳分離保護回路にラボナールやらラジカットを使う施設があります。
 
ラボナールに限らず、麻酔薬全般に脳虚血に対する脳保護作用があるとされています。
循環停止中は、細胞が冬眠状態で活動が抑えられているけど、それでもいくらかのダメージがあるだろう。これを抑えるために脳保護回路使うけど、さらに保護できる薬いっとこう。そういう感じで使われている薬です。
 
なので、施設によってまちまち。
私の病院では脳保護中もプロポフォールとラジカットを流しているようです。
どの薬が良いか?は執刀チームの好みで考えてもらってよいと思います。
 

人工呼吸の考え方 5 A/C SIMV Spont

長くなてそろそろ終わってしまいたい呼吸器シリーズ
一般の方の質問がどんどん遠ざかるのを実感中。
 
 
ここまで
酸素の調節:                    FiO2 PEEP
二酸化炭素の調節:         MV = Tv x RR
一回換気量(Tv)の調節     VC PC
 
までやってきました。
これらは実際呼吸させるときのパラメーターです。
 
この設定をどのように運用させるか?
どんなプログラムで呼吸させるか?
というのが今日のお話。
 
 
そんな呼吸器モード
Assist / Control (A/C)
SIMV
Spont
 
が今日のお題です。
 
患者さんが自分で呼吸出来ない状態の時は
A/CもSIMVも同じです。
決められた回数、決められた容量の呼吸を続けて行きます。
 
ちなみに1分間に10回の呼吸だと、
60秒 ÷ 10回 = 6秒ごと
の呼吸になります。
 
この設定だと1回呼吸が始まったら、その6秒後まで呼吸器はまち、その間患者さんの自発呼吸がなかったら設定呼吸を行います。
 
ここで自発呼吸があったら
A/Cモードの時は設定通りの換気1回をし、また6秒まちます。
SIMVモードの時はPS (プレッシャーサポート)で設定された圧力をかけ、補助呼吸としますが、先の強制換気6秒後に新たに強制換気します。
 
A/Cモードの場合は、患者の自発呼吸に同調して設定どおりのフル呼吸をするのに対し
SIMVモードの場合は、最低回数の呼吸は保証して、あとは自発呼吸を促していく
というイメージでしょうか。
 
SpontというのはSpontaneous(自発)という意味で、挿管されているけど機械は呼吸を手伝ってない状態です。
CPAPと呼ばれることもあり、これはPEEPだけがかかっている状態。PEEP 5mmHgくらいのCPAPモードで安定していられるなら呼吸器離脱はほぼ可能でしょう。
CPAPはPEEPだけを設定していますが、吸気のときにちょっと手伝う、PS(Pressure Support)つけて管理をすることもあります。
 
 
使い分けですが
全身麻酔などで完全に呼吸を人工呼吸器に依存した状態から、
覚醒して自発呼吸がでて、呼吸器から離脱していくのが目的になります。
 
最初は呼吸がないので
A/C でも SIMVでもどちらでもいいです。
手術室の呼吸器は、手術中は自発呼吸を止めるのが基本ですから、
SIMVモードはついてないことが多いです。
(最新の機種はいろいろオプションがついてます。
 
次に覚醒してきて自発呼吸を始めるけどまだ不十分となりますので、
最低呼吸を促し、自発呼吸を補助するSIMV (+PS)に切り替えます。
覚醒度合いに合わせてSIMVモードの呼吸回数を減らしていき、最終的にはSpontにします。
 
Spontで十分やっていけてれば
あとは覚醒度合いと照らし合わせて抜管と。
 
 
これが大まかな流れになるでしょう。
くどいですが、患者さんが元気になっていく方法が正解であり、その方法にはいろいろあります。担当医のこだわりとかもあるし。
 
どうやったら呼吸器離脱できるのか?
ですが私は
Spont モード
FiO2 0.5
PS 10
Peep 5
で呼吸が成り立っていて、血ガスが狂ってなかったら抜きです。
抜管したあとでも補助呼吸する手段はありますし、必要なら躊躇なく再挿管します。
再挿管はいいイメージは確かにないですが、必要とあらば躊躇しないで再挿管することはとても大事です。
 
この値を抜管基準にしているのは
FiO2 0.5は酸素マスクでなんとか出せる濃度
PEEP 5は咽頭や気道の形で自ずとかかると言われている圧
PSは挿管チューブや蛇管を空気が徹ときにの抵抗分を補うためにかけています。
 
むかしは呼吸器外してTチューブとかやりましたが、あれは患者さんにはよっぽど負担であるとしってからやらなくなりました。PS 0まで落とさないのも同様の理由です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

人工呼吸の考え方4 VC PC

 

呼吸器の感が方 VCとPCです。
よく試験に出るところです。学生さんは気をつけて。
 
前回人工呼吸器3では、人工呼吸器の設定には分時換気量(MV)の設定が大事で、
このMVの設定のために、一回換気量(TV)と呼吸回数(RR)をそれぞれ設定するんでした。
 
呼吸回数はすぐに分かると思います。
単純に1分間あたり、何回"呼吸"するかですから。
 
一回換気量は500mlとか600mlとかという値です。
なのでそれをそのまんま設定するのが
従量式換気: Volume Control Ventilation: VCです。
シンプルです。設定しやすいです。
 
この設定の最大のメリットは設定がわかりやすいことと、ちゃんと機械が呼吸させるという点。
この呼吸モードが使えていれば、相方は知らなくても無問題レベル。
 
デメリットがあります。肺が重い、硬い、片肺挿管になっている、痰づまりで無気肺ができているような時、気道内圧が高くなりすぎ、肺損傷を起こす可能性があります。注意深く観察してればいい? そのとおりです。
 
 
これに対して、もう一つの設定が
従圧式換気: Pressure Control Ventirlation; PCです。
呼吸器が送る空気の圧を設定し、吸気時にその圧で肺をふくらませる方法です。
この設定の最大のデメリットは、呼吸量の保証がないことです。挿管チューブが痰つまりを起こして空気抵抗が大きくなったら、その分想定より少ない空気しか送られないことになります。
 
なんでそんな不安定な設定があるのか?
それは、設定した気道内圧以上には高くならないため、重症化した肺にとても優しいのです。そしてこれが最大のメリットです。
 
 
重症な患者を扱う集中治療の医者はこっちを好みます。肺に優しい麻酔科医もこっちかな。
私はイキってる医者なので、いつもPCです。

人工呼吸の考え方3 MV TV RR

ここまで酸素の話をしてました。
酸素化は生存のためにとても大事な物質なのです。そして、呼吸器管理では二酸化炭素の管理も同じぐらい大事です。
 
体内に取り込んだ酸素で、糖や脂肪を"燃焼"してエネルギーを作り、副産物として二酸化炭素(と水)ができます。
呼吸とは酸素を取り込むことと、この二酸化炭素を捨てることと、それにより酸塩基平衡を保つことです。酸塩基の話はまた今度です。
 
 
酸素化PEEPで書き忘れたのですが、酸素は水(血液)に溶けにくいです。
それでヘモグロビンという酸素運搬物質があったりとか、PEEPという圧力をかけて酸素化よくするなどがありました。
 
これに対して二酸化炭素は水に非常に溶けやすくて出てきやすい。
肺を空気が出入りするたびに一定量二酸化炭素が出ていきます。
なので、二酸化炭素の調節には、1分あたりどれくらいの量の空気が肺とガス交換するかという単位で管理します。
分時換気量:  MV; Minutes Volume 
といいます。
初期設定ではこれが体重x0.1 リットルとなることを目安にします。
60kgの人で1分間に6リットルの空気が肺に体を通り抜けることが理想となるわけです。
 
1分間に1回だけ6リットルの大きな深呼吸だけする人はいます?
いませんよね。そもそも肺活量って男性で3.5リットルくらいです。
そこで6リットルを10回程度にわけて、一回あたり600mlの空気を入れ替えれば呼吸が成立しますね。
 
ここででてきた1分間に10回の呼吸のことを
           呼吸回数: RR: Respiratory Rate
一回あたり600mlの空気のことを
          一回換気量: TV: Tidal Volume
 
といい、
          MV = TV x RR
 
となります。
 
 
血ガス中のpCO2の値を見ながら、これが40mmHgになるように。
TVとRRを調節して理想のMV にします。
 
特に肺の合併症がない人なら気道内圧の上限が20mmHgを超えないようにTVを設定して、RRで微調整しますが・・・
 
そんなのは主治医のさじ加減でやってもらいましょう。
人工呼吸器の設定は、患者さんに利益があって損害が少ない設定なら何でもいいんですから。
 
ここまでで呼吸器についている
FiO2
PEEP
MV
TV
RR
まで解説しました。最低限これ理解できていれば、呼吸器はだいぶ身近になるはず。
 
あとは何だ?
VC PC PS SIMV Spont?
 
 
 
 
 

人工呼吸の考え方2 PEEP

二酸化炭素編へつづくはずだったのに
PEEPの説明です。
 
世の中そんなもんです。
PEEPって何?という質問をいただいたので予定変更しました。
 
 
ピープピープいってるPEEPとは
Positive         陽圧
End               週末
Expiratory     呼気
Pressure        圧
のことで呼気終末期圧、あるいはそういう呼吸管理法のことですね。
 
地球上でモノが上から下へ落ちてくるのは
重力という”圧”が地球の中心方向にかかっているからです。
 
圧力の強いほうから弱いほうへ。
空気の世界も人間社会と一緒なんですよ。
 
そういうわけで、
息を吸うというのは、筋肉で横隔膜を引っ張り下げ、肺の中を陰圧にすることで、
体の外の大気圧 > 肺の中の気圧
となるので空気が取り込まれていきます。
 
息を吐くときは、横隔膜の張力を使って肺を押し込み
体の外の大気圧 < 肺の中の気圧
となるので、空気が吐き出されていきます。
 
この息を吐くときの、空気を全部だしきったときの
肺の中の気圧(気道内圧)をPEEPといいます。
 
 
PEEPを高い値に設定するとどうなるでしょう?
手術室の麻酔器だとPEEP 70mmHgまで出せる構造ですが
さすがにこれはヤバいです。
まず、空気の出口が蓋されている状態なので、息がはけないです。くるしいです。
肺にとって膨らむことはいいことですが、これはやりすぎ。
 
呼吸以外にも困ったことがおきます。血圧が下がりすぎるのです。
心臓から全身に送り出された血液が全身を回って、最終的に心臓に帰ってくることはご存知でしょう。そして、全身から血液が戻ってくるのも、戻ってくる場所である心臓の右心房が最も低圧だからです。中心静脈圧と言いますが、その圧はだいたい10mmHg前後です。ちなみに血圧は上が120mmHgくらい。下の血圧が70mmHgくらいが理想です。いつかこのネタを書く日もあるでしょう。
これに軌道内圧 70mmHgをかけたら、まわりまわって中心静脈にも高い圧がかかってしまうので、血液が全身から戻ってこれません。一番下にあるから水たまりができるのに、それが高い位置に移動したら水たまりにならないですよね。血液が戻ってこないと、心臓は元気でも送り出す血液が戻ってこないので、血圧は下がり・・・放置したら
 
”死ぬんDeath!”
 
ARDSの時はやむをえずPEEP 20mmHg以上かけることもありますが、それはそういう特殊な状況のみです。
ARDSガイドライン2016年によるとPEEP 30mmHg以下が望ましいそうです。
 
 
ちなみに手術室のPEEP70mmHg機能は患者さんを死なせるためじゃなくて別の用途があるから付いている構造です。
 
というわけで、かけすぎのPEEPは呼吸が吐き出せなくて苦しい・つらい・場合によっては”死ぬんDeath"であることは知っててください。余計なレポート書きたくないものです。
 
さて、かけすぎ危険のPEEPですが0だといいの?
という話。PEEP0mmHgというのは、口を全開にして息を吐いているような状態です。やってみてください。意外につらいでしょ。
肺というは柔らかい、すぐにしぼんでしまいがちな臓器で、気道内圧0mmHgだと、すぐしぼんでしまい、痰が絡みやすく、肺炎になりやすくなります。特に肺気腫の患者さんで顕著です。
 
肺気腫の患者さんは肺の末梢がもろいので、肺が虚脱(つぶれる)して無気肺になりやすいです。
また、肺の末端、肺胞より、その手前の細い気管支のほうがつぶれやすくなっているので、呼気で息を出そうとしたら、通路が先につぶれてしまい、十分空気が吐き出せなくて苦しいという症状がでます。
 
最低限の圧力をかけて、空気吐ききっても細気管支や肺胞がつぶれないだけの圧力はかけ続けておこう、というのがPEEPです。
ヘビースモーカーの肺気腫のおじいさんの”口すぼめ呼吸”も口を小さく開けPEEPを維持したままゆっくり空気を吐き出すという、体が自然と覚えた呼吸法です。口すぼめで画像検索してみてください。
 
PEEPは5mmHg前後をかけるのが一般的で、その理由は、健康人の呼吸時にだいたい5mmHgのPEEPがかかっているからです。たいした抵抗感ないし、無気肺にもなりにくい。
肺水腫とかの病態、ARDS等に悪化するときはある程度強めのPEEPをかけないと肺と命のピンチ。
人工呼吸している患者さんの酸素化が悪い時はPEEPを高く設定したほうがいいのは前に書いた通りです。
 
 
次回
二酸化炭素編へ続く
 
かもしれない。
 
 
 

人工呼吸の考え方 1 FiO2

生きていくためには呼吸が必要です。
全身麻酔のときや呼吸が不十分な状態の時は人工呼吸が必要です。
 
人工呼吸の設定は医者の指示で行うもので、それぞれの先生に設定のこだわりがあるところです。それでも基本というか、大雑把な流れというか、トラブル起きにくい呼吸器の設定、流れについて書きます。
主治医の先生の方針を優先しつつ、参考にしてください。
 
 
初期設定
酸素濃度(FiO2) 1.0
一回換気量(Tidal Volume) 男性 500ml 女性400ml
呼吸回数 10回
PEEP 5mmHg
 
とりあえずこの乱暴な初期設定で呼吸は成り立つと思います。
一回換気量の初期設定を体重x10mlにすることもあります。
これで血液ガスをとりながら微調整していくものです。
 
FiO2: Fraction of Inspiratory Oxygen :酸素吸入濃度 
患者さんが取り込む酸素の濃度です。
酸素100%の時、FiO2 1.0
酸素  50%の時、FiO2 0.5
のように呼ぶのが一般的です。
 
カニューレとかマスクは通常純酸素を投与するので、患者さんも純酸素を呼吸しているように見えますが、鼻カニューレもマスクも、患者さんの鼻元、口元で外気と混合されるため濃度は下がります。
カニューレ3Lの時 FiO2 0.32 
マスク 5Lの時はFiO2 0.4 
と言われています。
 
患者さんが吸う空気の酸素濃度をもっと高くしたかったら、巻き込む外気も酸素にしてしまえばいい、というわけでリザーバーマスクという方法もあります。
 
 
一方、挿管された患者さんは、チューブが直接人工呼吸器につながるため、人工呼吸器で設定した通りの濃度の空気が流れます。
長期に渡る過剰な酸素化は酸素中毒や肺の合併症を引き起こすので、酸素は必要最低限にするべきです。
SpO2も100%である必要は全くありません。下限は主治医と相談してください。個人的に多くの症例で95%以上あればいいとは思ってます。
 
 
人工呼吸器のときのFiO2はなるべく0.6以下。できれば0.5程度にするべきです。
無理に0.5より低くする必要はないと、どこかの教科書でよんだけど忘れました。
 
FiO2を下げたままで酸素化を良くするにはPEEPをかけます。
挿管された状態というのは、口全開で呼吸しているようなもので、それはそれで疲れるものです。挿管されずともPEEPは4-5mmHgかかっていると言われており、その設定にするべきです。PEEP 10mmHgくらいまでは必要に応じてかけます。
ARDSなどの重症肺炎だと、やむなくPEEP 20mmHgかけたこともあります。
 
 
わかんね
ってところを質問してくださると後日もうちょっと詳しく書きます。
 
 
 
二酸化炭素の話へつづく