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アラ50の医師が ゆるい説明しています

人工呼吸の考え方 5 A/C SIMV Spont

長くなてそろそろ終わってしまいたい呼吸器シリーズ
一般の方の質問がどんどん遠ざかるのを実感中。
 
 
ここまで
酸素の調節:                    FiO2 PEEP
二酸化炭素の調節:         MV = Tv x RR
一回換気量(Tv)の調節     VC PC
 
までやってきました。
これらは実際呼吸させるときのパラメーターです。
 
この設定をどのように運用させるか?
どんなプログラムで呼吸させるか?
というのが今日のお話。
 
 
そんな呼吸器モード
Assist / Control (A/C)
SIMV
Spont
 
が今日のお題です。
 
患者さんが自分で呼吸出来ない状態の時は
A/CもSIMVも同じです。
決められた回数、決められた容量の呼吸を続けて行きます。
 
ちなみに1分間に10回の呼吸だと、
60秒 ÷ 10回 = 6秒ごと
の呼吸になります。
 
この設定だと1回呼吸が始まったら、その6秒後まで呼吸器はまち、その間患者さんの自発呼吸がなかったら設定呼吸を行います。
 
ここで自発呼吸があったら
A/Cモードの時は設定通りの換気1回をし、また6秒まちます。
SIMVモードの時はPS (プレッシャーサポート)で設定された圧力をかけ、補助呼吸としますが、先の強制換気6秒後に新たに強制換気します。
 
A/Cモードの場合は、患者の自発呼吸に同調して設定どおりのフル呼吸をするのに対し
SIMVモードの場合は、最低回数の呼吸は保証して、あとは自発呼吸を促していく
というイメージでしょうか。
 
SpontというのはSpontaneous(自発)という意味で、挿管されているけど機械は呼吸を手伝ってない状態です。
CPAPと呼ばれることもあり、これはPEEPだけがかかっている状態。PEEP 5mmHgくらいのCPAPモードで安定していられるなら呼吸器離脱はほぼ可能でしょう。
CPAPはPEEPだけを設定していますが、吸気のときにちょっと手伝う、PS(Pressure Support)つけて管理をすることもあります。
 
 
使い分けですが
全身麻酔などで完全に呼吸を人工呼吸器に依存した状態から、
覚醒して自発呼吸がでて、呼吸器から離脱していくのが目的になります。
 
最初は呼吸がないので
A/C でも SIMVでもどちらでもいいです。
手術室の呼吸器は、手術中は自発呼吸を止めるのが基本ですから、
SIMVモードはついてないことが多いです。
(最新の機種はいろいろオプションがついてます。
 
次に覚醒してきて自発呼吸を始めるけどまだ不十分となりますので、
最低呼吸を促し、自発呼吸を補助するSIMV (+PS)に切り替えます。
覚醒度合いに合わせてSIMVモードの呼吸回数を減らしていき、最終的にはSpontにします。
 
Spontで十分やっていけてれば
あとは覚醒度合いと照らし合わせて抜管と。
 
 
これが大まかな流れになるでしょう。
くどいですが、患者さんが元気になっていく方法が正解であり、その方法にはいろいろあります。担当医のこだわりとかもあるし。
 
どうやったら呼吸器離脱できるのか?
ですが私は
Spont モード
FiO2 0.5
PS 10
Peep 5
で呼吸が成り立っていて、血ガスが狂ってなかったら抜きです。
抜管したあとでも補助呼吸する手段はありますし、必要なら躊躇なく再挿管します。
再挿管はいいイメージは確かにないですが、必要とあらば躊躇しないで再挿管することはとても大事です。
 
この値を抜管基準にしているのは
FiO2 0.5は酸素マスクでなんとか出せる濃度
PEEP 5は咽頭や気道の形で自ずとかかると言われている圧
PSは挿管チューブや蛇管を空気が徹ときにの抵抗分を補うためにかけています。
 
むかしは呼吸器外してTチューブとかやりましたが、あれは患者さんにはよっぽど負担であるとしってからやらなくなりました。PS 0まで落とさないのも同様の理由です。