Online よろず相談所

アラ50の医師が ゆるい説明しています

ECMOでの生存率を高めるために

コロナに限らず、肺機能が悪化し酸素化が悪くなると
まずは酸素投与
足りなければ人工呼吸
それでも駄目ならECMO
なんて流れになっています。
 
テレビとかだとECMOが最後の切り札、ECMOがあればコロナに克服できるみたいな報道されてますが、コロナ重症患者でECMO設置された人の実際の生存率は50-60%と言われています。
 
ECMOが取り付けられるということは
集中治療室のベッドに寝かされ、
人工呼吸器が取り付けられ、
いろいろな太い点滴がなされた上に、
ECMO用の直径7-9mmの管を首と足の付け根に刺され、
この状態で数週間から数ヶ月、肺炎が改善するまで絶対安静です。
他に手段がないから確かにECMOは切り札となりますが、実際は分の悪い勝負です。苦しく辛い治療です。
 
その間、肺がもとに戻る気配がなかったり、
ECMOの過酷な条件に耐えられなかったり、
ECMOが体に及ぼす悪影響(合併症)がおき、例えば脳出血など起きて脳死みたいな状態になったらそこで試合終了です。
 
ECMOは台数が少ないこと
あまりにも複雑で高度であり、集中治療室を構える病院しか常備しておらず、またこれを取り扱えるスタッフが少ないこと
機材が高価であり、取り付けた初日だけで400万円以上と医療費が相当かかること
コロナ重傷者が一気に増えたら日本の医療は間違えなく破綻してしまいます。
なによりECMO患者さん本人の苦痛は想像を絶するものです。
 
重症化するのはごく少数の人たちであり、過剰に心配しなくていいとは思いますが、手洗い・水分補給・禁三密して予防しましょう。
 
 
 
今回はECMOを担当する若手のスタッフさんにECMOとは何か?管理のポイントの説明を依頼されたので書いていきます。
明らかに一般向けではないので、一般の方はご遠慮ください。
ECMOってこんなに危険で難しくて大変なんだ、医療スタッフって相当頑張ってるんだ
だけでも感じてもらったら幸いです。
 
 
 
もくじ
<ECMOってなに?>
<ECMOの種類>
<ECMOの適応・不適応>
<ECMOの構造>
<ECMOの管理>
<ECMOから離脱するとき>
<ECMOの合併症とギブアップするとき>
<ECMOその他>
 
 
 
 
 
<ECMOってなに?>
ECMOって何?
という人は先のECMOの話を読んでみてください。
 
 
ECMOとはExtraCorporeal Membrane Oxygenationの略で、直訳したら「体外の膜で酸素化」でしょうか。人工心肺の事です。
脱血管を挿入してカテーテルの先端を右房に起きます。全身の血液が戻ってくるこの右房からカテーテル越しに血液を引き抜き
遠心ポンプで圧力をかけ
膜型人工肺で酸素化し
血液を体内に戻します。
 
 
 
<ECMOの種類>
このとき、静脈に返血するものをVV ECMOとよび、肺機能が弱っているときに使用します。
動脈に返血するものをVA ECMOとよびます。心機能が弱っているときに使用します。VA ECMOはPCPS(Percutaneous caidiopulmonary support)とも呼ばれます。
VはVein (静脈)、AはArtery(動脈)のことで
アクセスとしてカテーテルは鼠径動脈・静脈、内頸静脈が使用されることが多いです。
 
 
習慣的に
VV ECMOをECMO
VA ECMOをPCPS
と呼ばれるので、以後そう書きます。
 
何れにせよ機能が落ちてしまった臓器が復活するまでの命のつなぎです。
切り札ではありません。単なる延命です。
そもそも心臓や肺を良くする治療ではありません。
特にPCPSは心臓にはむしろ負担だし、体外循環使用時間が長くなればなるほど炎症物質が放出され全身のむくみや貧血などダメージが蓄積して行きます。
 
医療者としては、ECMOを取り付けるということは、単なる延命のイメージが実際あります。コロナ感染にECMOを取り付けて50-60%の生存率があるそうですが、これは素晴らしく高い生存率だと思います。
 
 
今回は主にECMOを中心に書いていきます。
PCPSはECMOの対比程度に書きます。詳しくは別の機会に。
 
 
<ECMOの適応・不適応>
ECMOの適応は呼吸が不十分な時です。血液ガスで判断します。
Murray Scoreという
1. 胸部レントゲン所見    (浸潤影の程度)
2. PaO2/FiO2 スコア        (酸素化に必要な酸素濃度の批評)
3. PEEP スコア                  ( 酸素化に必要な呼気終末期圧の評価)                
4. 肺コンプライアンス    (肺の柔らかさ)
の4項目それぞれ0~4の5段階で評価して合計が3以上ならECMOの適応があります。
 
具体的なイメージとしては
人工呼吸器でARDS(超重症肺炎)用の超高圧呼吸管理してても
・酸素化が悪い: High Peep 下でもP/F < 80
   (強引に説明するとPEEP 20mmHgの純酸素投与でもPaO2 < 80mmHg)
・ガス交換が悪い: 呼吸器ではコントロールできない高CO2、pH<7.2
ならECMOを選択するくらいで良いでしょう。
 
この基準を満たしていなくても、悪化重症傾向にあればECMO取り付けを考慮します。
無理やり超高圧呼吸管理で踏ん張りつづけたら肺にダメージが蓄積され復活できなくなると考えられており、それならさっさとECMOを取り付け肺を楽な環境にしたほうがよいとされます。
 
 
 
逆に適応にならないのは
長期ECMOのストレスに耐えられなさそうな人
肺の回復が見込めない人
ということで
重篤な基礎疾患を持つ人
末期がん患者
超高齢者
となります。
肺が回復する可能性が0に近い人にECMOつけるのは拷問であるというだけでなく、費用・機材・マンパワーなどの医療資源の観点からも考えてみるべき案件です。
適応外については厚労省で厳密な基準を作るべきでしょう。
 
 
 
<ECMOの構造>
膜型人工肺
遠心ポンプ
回路
 
 
<膜型人工肺>
肺の仕事といえばガス交換です。酸素を取り込むことと、二酸化炭素を体外に捨てることが大事な仕事です。当然、人工肺に求められる仕事もまさにこれです。
膜型人工肺は直径0.1㎜のストローのような繊維の束に空気を、その周りに血液を流します。繊維には血液は通り抜けられない細かい穴があいており、空気だけが通過できるようになっています。そこで血液は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出して行きます。血液と空気は直接は触れ合いません。
 
ECMOで血液の酸素化は酸素濃度(FiO2)でコントロールします。血液の酸素化を増したかったら人工肺をながれる酸素の濃度を上昇させます。
二酸化炭素は人工肺を通り抜ける空気の量でコントロールします。
 
人工呼吸の管理で
・酸素化は酸素濃度と酸素分圧で
二酸化炭素は分時換気量で
コントロールするのと同様に考えてみてください。
 
 
体外循環が長時間になると、人工肺内の空気の層に水がたまり、ガス交換の効率が悪くなります。数時間に一回空気フラッシュが必要になります。ECMOの機種によっては自動でやってくれるものもあるそうですが、そこは臨床工学技師さんに聞いてください。
 
 
 
<遠心ポンプ>
目の細かいフィルターに血液を通し、さらにそれを体に戻すためには原動力が必要です。ECMOには遠心ポンプが使われます。
三角錐のような形をしていて、底面に羽がついておりこれが高速で回転します。血液がこの羽で回転させられて遠心力がかけられ、これが送血の原動力になります。
遠心ポンプの利点は、
 ”遠心力以上の圧がかからないこと”
 ”比重の軽い空気は送られないこと”
です。その代わり、遠心ポンプの羽の回転数と圧力はあまり相関しません。遠心ポンプがくるくる回っているのに、送血管が折れ曲がっていた等のトラブルで送血できておらず、患者さんに酸素がとどいていなかったなんてこともしばしばあるので注意が必要です。
 
 
<回路>
全身から戻ってきた血液は
全身→右房→右室→肺→左房→左室→全身
というように循環しています。
重症肺炎で肺がガス交換できなくなった状態では、左室から送られる動脈血はガス交換されていません。
 
どうにかして動脈血を酸素化して戻してあげたい。
そこで右房に管を2本さし、そのうち1本から血液を引き抜き、ECMOにかけガス交換して、また右房に戻すことで、肺は機能してないけどガス交換された血液が動脈をながれるようにするのがECMOの回路です。
右房から血液を引き抜くことを"脱血"とよびその管を"脱血管"
ECMOから右房へ血液を返すことを"送血"とよびその管を"送血管"
といいます。
 
多くの場合、右総頸静脈と左右どちらかの大腿静脈から管を入れます。左右の大腿静脈のペアで設置する施設もあるようです。要は管の先端が右房にあればいいのです。
右房から血液を引き抜いて同じ右房に戻すのでガス交換前後の血液が混じり合ったまま肺を経て全身に流れていくため、SaO2 100%は望めませんし、望みません。
(右房脱血して左房送血すればいいじゃないかと考えた方は天才です。しかし、それをするためには管を入れるために心臓手術ばりの準備が必要です。高侵襲すぎて死亡率が高まります。
生理的に正しいことを目指すのではなく、生存率が高い方法で選ぶと現時点ではこれが一番。
 
ECMOはガス交換だけを担当し、体循環は本人の心臓の頑張りが頼りです。
ECMOのときは患者さんは劣悪な環境を強いられまる。いよいよ心臓が耐えられなくなったときはPCPSに切り替えられます。切り替えると書きましたが、実際はすでに刺さってる脱血管を流用する程度であとは全とっかえです。
 
PCPSの場合は心臓がダメになっていて、循環できなくなった状態です。だから、右房に集まった血液を脱血して酸素化し、大動脈に送血します。肺が機能していてもして無くても同様な回路になります。脱血は大腿静脈から右房に入れた管で、送血は大腿動脈を選ぶことが多いです。
 
 
<熱交換器>
体外に血液を引っ張り出す体外循環は回路温が下がりがちです。
体動がないように筋弛緩効かせることも多く、さらに体温は下がります。
患者の深部体温が37度になるようにします。
低体温は凝固能を狂わしたりと死亡率高めます。
体温管理は大事です。
 
 
<ECMOの管理>
<抗凝固>
血管外にでた血液は固まり、回路づまりや塞栓症の原因となります。
ヘパリン等の抗凝固剤をつかって
ACT 180-220くらいを目標にします。
血が固まらせないようにする治療なので出血リスクのある検査治療は避けたほうがいいです。胸腔穿刺などは刺入部からダラダラ出血して貧血になり、大量の輸血が必要になります。
 
 
 
<ECMOの設定>
遠心ポンプの回転数は1500-3000くらいで固定。
これはECMOの機種によって異なります。
 
モニタリングとして
血圧・脈・SpO2などの通常バイタルに加えて
回路脱血圧 (低すぎたら脱血不良)
人工肺前圧    (高すぎたら人工肺の詰まりか送血管のトラブル)
回路送血圧    (高すぎたら送血管の閉塞系のトラブル)
ポンプ流量(Flow) 1分間に3-4リットル前後
 
遠心ポンプの回転数と流量は比例しないので、回路送血圧が高くポンプ流量が落ちているときは
回路の屈曲
人工肺の詰まり
ボリューム不足
などの原因を探して対策しましょう。
数字がいくつか?より、以前よりどうなった?の変化の観察が大事です。
これらに急激に大きな変化がないことを監視します。屈曲なら戻せばすぐ戻ります。
それでも戻らなかったら回路交換や輸血輸液を考えましょう。医者が。
 
ECMOの管理をしていて
ECMOの脱血の酸素飽和度(SvO2)がそれまでより急に高くなったら、脱血のしすぎかもしれません。ECMOによってきれいになって戻した血液がそのままECMOに回収されています。リサーキュレーションといいます。
結果として全身に流れる酸素化血流が減少しているってことになり危険です。
遠心ポンプの回転が強すぎる
等が原因になるので対処します。医者が。
 
 
<ECMO下の呼吸器設定>
ダメ元ECMOですから、耐えるしかありません。
推奨されているECMO下での呼吸器設定はまさに軽傷の人用の設定です。
FiO2 < 0.4
PEEP < 10mmHg
気道内圧上限 <20mmHg
呼吸回数 < 10回
 
 
<血液ガス>
pH >7.3を目指して
pCO2 35 ~ 45
BE >-3を目指して
Hb > 12はほしい
SaO2 80-90%
pO2は見なくていいです。
 
これに加えて静脈血のSvO2もマメに計測が必要です。
 
絶対的な数字というより、
SaO2 ÷ (SaO2 - SvO2) > 3
であることが超重要です。
 
 
ECMOが必要ということは、まさに緊急事態宣言です。
普段の理想的な血液ガス状態を求めたら、疲労した肺が酷使され死ぬんDeath!
そもそも高濃度酸素は毒です。弱った肺では高濃度酸素毒には耐えられません。
高濃度酸素で無気肺がすすんだり肺線維症が進んだりします。
 
ECMO下の集中管理は
"生かさず殺さず"
これが最も生存率を高める方法です。
 
 
"生きている"ためにはpHがアシドーシスになりすぎないことが大事です。
ただ、ぎりぎり大丈夫な状態の絶対値はないので、
"この数字を目指す"というものではありません。
比較的頻繁に血液ガスをみて、どんどん悪化してなければいい、破綻してなければいい位のほうがよいでしょう。
 
 
 
低酸素だと意識がなくなっていきます。
二酸化炭素CO2が貯留すると人は"苦しさ"を感じます。
ストレスがかかり、その場から逃げようともがき苦しみます。
動かれるのははカテーテルトラブルのもと、事故のもと、酸素消費量上昇のもと。
 
CO2を35-45程度の生理的な環境にすることが大事です。
ECMOの送気流量でコントロールします。
 
 
 <SaO2 SpO2 SvO2>
どれも酸素飽和度です。ヘモグロビンがどれくらい酸素化されているかを見ています。
SaO2 は動脈血液ガスで測定される酸素飽和度
SpO2 はパルスオキシメーターで測定される酸素飽和度
SvO2 は静脈血液ガスで測定される酸素飽和度
SaO2とSpO2は、安定した状態ならほぼ同じ数字を出します。
 
ECMO中は
SaO2 80%-90%で十分です。
SvO2 の変化には気をつける必要があります。
有効なECMOのためには
SaO2 / (SaO2-SvO2) >3
が必要とされています。
 
<正常の状態のSaO2>
動脈血のSaO2が100%なら、その血液のヘモグロビンがすべて酸素されているということです。
酸素は血液に溶けにくく、そのままでは十分な酸素を全身に供給できません。
 
例えるなら、酸素は泳げない人です。泳げない酸素は必要量が全身に行き渡らないのです。
ヘモグロビンは酸素にとってボートのようなものです。酸素はヘモグロビンボートに乗ることで、血液にのり体の隅々まで送り届けられます。行った先で酸素はボートを降り、細胞の活動につかわれます。つかわれた酸素は二酸化炭素に変化し、これは血液によく溶けます。自力で泳いで肺に戻ります。二酸化炭素用のボートのようなものは存在しません。
 
SaO2が常に100%にならないのは無気肺などで酸素化(ガス交換)に関与できない肺の一部を通った血液があり、酸素化されていないヘモグロビンが動脈血中に交じるからです。普段SaO2を高めようとするなら、陽圧換気にして無気肺を減らすのがおすすめです。
 
人工呼吸器で投与酸素濃度(FiO2)を50%以上にするのは悪いことです。
高濃度酸素を長時間吸入すると気道粘膜や肺胞がこわれ肺機能が悪化していきます。FiO2は可能な限り50%以下にしましょう。酸素化を高めたいときはPEEPが有効です。
呼吸器のない状態のマスク酸素では100% 酸素を投与しますが、マスク内で呼気とまじりあうことでFiO2は50%くらいに落ちるので問題ないです。
 
<正常な状態のSvO2>
SaO2 100%とはヘモグロビンボートに酸素が満員に乗った状態でした。
血液は各細胞に送られ、酸素を届け、静脈を通って右心房に戻ってきます。
右心房に集まるヘモグロビンは酸素がつかわれた状態で、つまりヘモグロビンボートは空席が目立ちます。このときの乗車率をSvO2といい、正常のときは80%前後です。せっかく送った酸素、全部使い切ってほしいものですが、人の体はそうなってないのでしょうがないです。SvO2は、スワンガンツで計測するアレです。
SvO2が低いときは戻ってきたボートの乗車率が低い状態・・・つまり
1. そもそも行きのボートが満員じゃなかった (低酸素状態)
2. 酸素が非常に必要な状態で多くの酸素がボートから降りた (代謝亢進)
3. ボートの台数が少なかったため、目的地についたボートからは降りる酸素が多かった (貧血)
4. 川の流れが悪く、ボートが隅々まで行き渡るのに時間がかかるため、目的地にたどり着いた1台のボートからは降りる酸素が多かった (心不全: 低心拍出症候群)
この1,2,3,4のどれかか混合状態です。
SvO2が高いときはボートの下車率が低い状態であり、酸素がつかわれてない状態です。敗血症とかです。
 
 
<ECMO中のSaO2>
繰り返しになりますが、ECMOは右房から脱血して圧力かけて酸素化し、同じ右房に戻す血行動態です。ECMOを通った血液は完璧に酸素化されますが、全部の血液をECMOに通過させることはできません。回路上古い血液と新しい血液が交わってしまう、満員のボートも空席ばかりのボートも交わるためSpO2 100%なんて望めません。
SpO2は80%-90%くらいが目標になります。患者さんはそれでもなんとか生きていられるので、それで耐えてもらいます。
 
 
 
<ECMO中は最低限必要な酸素を届けられればいい>
酸素がないと細胞は死んでしまいます。
不十分な酸素の環境で即死するわけではなく、酸素がなくても嫌気代謝でしばらく頑張リます。嫌気代謝での副産物が、乳酸がたまりアシドーシスになります。これを放置すると循環システムが破綻し死ぬんDeath!
 
全身の細胞がかろうじて呼吸できるだけの酸素を与えればいい。
全身の細胞が最低限呼吸もできないほどの酸素投与だとアシドーシスになる。
 
pHやBE、重炭酸が許容範囲内にあるなら、酸素は最低量はとどいているとみなせます。
これらが徐々にアシドーシスに進んでいるときはECMO管理が不十分です。
放置したら破綻します。死ぬんDeath!
どうにかしてより多くの酸素がながれるようにしなくてはなりません。
 
 
ECMOは万能マシンではなく、ECMOで改善させられること限界があります。
そこで管理するべきなのは
ヘモグロビン濃度を満足させるための輸血と
十分な心拍数です。
 
 
 
これの解説をします。嫌でしょうがお付き合いください。
 
<酸素含量 Co2>
実際に酸素含量(Co2)の式というのがあって、血液100ml中の総酸素の量は
 
Co2 = 1.34 x Hb x 酸素飽和度 + 0.003 x PO2
 
となっており、PO2の変化など微々たるものだということがわかります。ゆえに
 
Co2 ≒ 1.34 x Hb x 酸素飽和度
 
と考えます。
 
 
<酸素供給量 Do2>
酸素が豊富に含まれる血液でも、流れていなければ全身には届きません。
どれだけの酸素が全身を巡っているのか? を知りたくないですか?
そこで酸素供給量 (Do2)という概念があって、1分間にどれだけの酸素が流れたか?の指標です。
式を見るのは嫌でしょうがもうちょっと。
 
Do2 = Co2 x 10 x 心拍出量
        ≒13.4 x Hb x 酸素飽和度
 
式の細かいことはカット(10は単位合わせの10です)。
 
この式からわかることは
全身への酸素供給は
  1. Hb(ヘモグロビン濃度)
  2. SaO2(酸素飽和度)
  3. C.O. (心拍出量)
におおきく影響受けるということです。
 
ちょっと脱線して、
どの程度の貧血(ヘモグロビン濃度が薄い状態)まで耐えられるのか? 考えてみましょう。
Do2 ≒ 13.4 x Hb x 酸素飽和度 x  心拍出量
ですから、呼吸が正常(SaO2 100%で変わらない)時、貧血になって低下したDo2は
心拍出量を増やすことでカバーできます。
ということは、貧血がすすんで脈拍が上がった時、それが貧血状態で余裕がなくなった時です。
手術出血でHb < 8となったら輸血しまことが多いですが、頻脈になったら貧血かな?と考えてみてはいかがでしょう。
 
 
ECMOの人工肺は赤血球を壊して行きます。構造上しょうがないのです。長期にECMOを稼働させると貧血が進みます。
 
貧血が進んでヘモグロビン濃度が半分で
酸素飽和度が80%
心拍出量が普段の80%
の環境になったとすると、正常の人にくらべて酸素供給量は
0.5 x 0.8 x 0.8 = 0.32
実に32%まで減少してみます。
 
貧血状態で、血ガスでアシドーシスが進みそうなときは輸血も考慮しましょう。
 
 
 
もう一つ大事な指標があります。お付き合いください。
 
<酸素消費量 Vo2>
全身の酸素消費量は
全身に送り出された血液のDo2 (=DaO2)から
全身から戻ってきた血液のDo2 (=DvO2)を引いたものです。
Vo2 = DaO2-DvO2
です。
 
そしてECMOのガイドラインによると
酸素消費量(Vo2) の3倍の酸素供給量(DaO2)をECMOで投与するのが生存のために必要とあります。
 
DaO2 / Vo2
=DaO2 / (DaO2 - DvO2)
=<略>
≒SaO2 / (SaO2-SvO2) >3
 
ゆえにSaO2とSvO2のこまめな測定が必要です。
 
 
 
 
SaO2 / (SaO2 - SvO2) > 3
にならないときは
酸素供給量(Do2)に問題があります。
繰り返しですが
Do2  ≒ 13.4 x Hb x SaO2 x 心拍出量
です。
そしてSaO2はECMOだと増やせません。
よって" >3 "にならないときは
 
Hbを上げる・・・輸血する
心拍出量を上げる・・・カテコラミン等増量
を考慮しましょう。
 
心拍出量をあげるとき、ECMOのフローあげても無駄です。心臓サポートではないですから。
心拍出量が上がらないときはPCPSに切り替えることも考慮しましょう。
 
 
 
 
 
 
<ECMOから離脱するとき>
ECMOの酸素化を停めて血液ガスが成り立つ時
ECMOの酸素供給をやめればECMOは"なかったこと"になります。
この状態で血ガス等がなりたち、胸部レントゲンが改善傾向にあればポンプ離脱を考えていいのではないでしょうか。
 
 
<ギブアップするとき>
回復が望めない状態になった
脳出血などで瞳孔散大・瞳孔不同など出現したら、もはや元の状態には戻りません。
ギブアップを考えるタイミングです。
 
 
 
<ECMO運営の現状>
そんな過酷な環境で数週間から数か月耐えられたら復帰できるかもしれません。
時間をかけたら復帰できる見込みのある人に適応があります。
末期がんの延命には適応がありません。
喫煙者など肺に障害あるひとも復活は難しい。
高齢者もむずかしい。
管理も大変でECMOに熟知しているスタッフが常時3-4人いないと成り立たない。
 
保険請求額として、ECMO初日が400万。翌日から1日あたり3万円請求される高額医療です。
 
一気に大量発生した場合はECMO取り付ける患者さんの選択も余儀なくされるでしょう。
先に感染し悪化した人たちが優先にするべきなのか・・・それとも・・・
 
 
今回書いたものが重症化コロナの生存率の向上に役立てたら幸いです。
 
 
ご質問受け付けてます。
 
 
 
 
 

あべのマスク

 
各世帯にマスク配ってどうするんだろう。
議員が国会でマスクしててどういうつもりなんだろう。
 
ウイルスの粒子は非常に小さく、マスクは簡単に通り抜けてしまうため予防効果はないです。
WHOが健常人がコロナウイルス予防のためにマスクするべきではないと言ってます。
今回安倍首相がバラマキしようとしている布マスクはウイルスにたいしては全く価値がありません。せめて不織布のマスクにしてくれよと。コロナには価値がないって証明されているものをばらまく意図とはいったい?
 
 
ウイルスにかかっている人が他人にうつさないためにつけるものです。
医療者がマスクするのは、すでに感染知ているものという前提で、その拡散を防ぐ目的です。医療者がコロナになりたくないと思うなら、そもそも現場に出ないのが一番なわけですから。
保湿効果があるから、風邪引いて調子悪い人に有効だし
マスクのフィルタは花粉はキャッチするので花粉症の人にも有効
マスクが無駄だといっているわけではありません。
 
しかし生産が追いつかなくなっている今、マスクは絶滅危惧商品(?)。
有効な使い方をするべきです。
国会とか、健康なはずの人達がマスクして的はずれな議論するのはおかしくないですか。感染が疑われているならそもそも国会来るなよと。マスクした首相がテレビに写ったら、いよいよ世紀末でマスクしなきゃって気持ちになり、またマスクが枯渇してしまうでしょう。
 
そしたら、普通の風邪の人や花粉症の人にマスクが行き渡らなくなり風邪は拡散し、花粉症の人は辛い毎日。
その他医療機関にもマスクが行かなくなり、
外科の医者はマスクなしで手術することになる。
そうしたらもう大変。術後感染だらけ。
免疫抑制剤とかつかっていて、日常にいるウイルスや細菌にも重症化してしまう状態の患者さんももう大変。
通常だったら起きないトラブルが起きて、退院できる人が退院できなくなってしまいます。
 
政治家ってのは理想の方向へ国民を誘導するべきものだと思うんですけどね。マスクから鼻がでちゃってる政治家とか、ほんとなんのためにマスクしてるのかと。国民を翻弄させるためだろうか。
 
 
 
私は感染症の専門医ではないので、コロナについては正確な予想などできるはずもないのですが
目にするコラム等から妄想すると
コロナに感染した人のうち
80%は軽症ですみます。
重症化する多くは高齢者だったりヘビースモーカーだったりの、体力的弱者で、2-5%が死亡すると言われています。
一定比率ですすむ案件です。
 
コロナがどういうウイルスなのか?
どういう対応が一番有効な方法なのか?
これは数年後、さまざまな都市の方針と結果をみて学者さんたちがまとめることです。いま正解なんてだれもわからない事です。
 
いま入ってくる情報だとイタリアは高齢者で基礎疾患を持つコロナ患者は治療拒否したようです。多くの患者が病院にながれこんで病院の機能がとまり、体力がある軽傷患者の助けられる命まで失うことを避けた政策といえるでしょう。
結果約2万人の死亡者が出ました。
生き残った人たちはコロナに耐性がある人たちなので、発生率はピークアウトし、収束に向かっている様子。
 
 
 
 
これに対して日本は感染が広がらないようにと人々が接触しないように学校閉鎖や外出自粛をうながしていることで死者はいまだ100人足らず。東京では感染が確認された人が毎日3桁ずつふえており、まだまだ感染拡大の可能性。
 
日本という国の方針は、とにかく死者を出したくない。
どの人も救いたいという政策の国だと思います。
若い人たちはコロナにかかってもほぼ大丈夫だから、バリバリ仕事してどんどん遊んでもらっていいはずです。
本人たちもそのほうが充実していて楽しいし、税収的には働いた分の所得税も遊んだときの消費税もふえて助かるはず。
 
それなのに、若者が働き遊ぶことを否定したのは、若者の中に介護職に従事するひとたちがいて、コロナに感染したその人達が老人ホーム・介護施設でコロナを拡散する可能性がたかかったから。
介護が必要な老人はコロナ重症化のリスクが高く、そういった人たちが急増すると、呼吸器も延命装置ECMOもすぐに枯渇し、医療崩壊が起き、コロナとは関係ない患者まで多くの命が失われる。
 
それを予防するべく、密閉・密集・密接空間にいかないようにと積極的にキャンペーンをし、収入が減った家庭に給付金をだし
とにかくコロナ感染者の増加をゆっくりにしているわけですね。
重症化する患者の総数はいっしょでも、発症を時期をできるだけずらして1日あたりの重傷者数をへらせば、医療崩壊は免れると。
ピークアウトはだいぶ先でしょうけど。
 
 
と思っていたのに
あべのマスクみてその考えが崩壊しました。
 
熱発していないみなさん
マスクあってもなくても対して変わらないから
手洗いと水分補給を徹底してください。
 
 
 
 
 
 
 

最後の切り札? ECMO エクモ

 
タライが頭に落ちてきても
トンカチで頭を殴られても
無事だった昭和のスターがなくなりました。
 
しむらーうしろーうしろー
とテレビの前で声をからしていた頃が思い出されます。
 
そのスターに取り付けられていたECMOってなによ
と聞かれたのでこれについて書きます。
 
 
ECMOとはExtraCorporeal Membrane Oxygenationの略で、直訳したら「体外の膜で酸素化」でしょうか。人工心肺の事です。
破綻した循環をサポートする機械です。
肺の代わりをする機械です。
きっとみなさん、そこまではわかっていると思います。
もうちょっとくわしく書くのでお付き合いください。多少に複雑な装置なので説明も長めです。
まずは"循環"を理解してもらえると、ECMOの仕事がわかりやすいかと思われます。
 
 
 
<循環>
会社とかでも一人でなんでもこなすワンマン社長タイプの人はいますが、多くの会社には企画部・運営部・製造部・営業部・経理部・・・と部署が別れているように、それぞれ役割分担して活動したほうが効率良いものです。
 
体の細胞も同様に
脳細胞は全身の総監督
筋肉細胞は運動・移動
肺細胞は呼吸
消化管の細胞は栄養摂取
肝臓の細胞は解毒・貯蓄
腎臓は水分量・電解質の管理と毒素の排出
と仕事内容が別れており、個々の細胞がしたことを血液にのせて全身の細胞に供給・還元するのが循環です。
 
循環する血液のルートは決まっていて、
全身の臓器の細胞から戻ってきた血液はすべて
静脈を通って右房・右室とめぐり肺に流れます。
そこで酸素化されて左房・左室と巡り動脈にのって全身の個々の細胞へと運ばれ、
各臓器・各細胞が活動し静脈また心臓に帰っていき右房・右室・・・・と絶えず循環しています。
 
 
<臓器の代わりをする装置>
例えば腎臓は尿を作ることで体内の毒素の排出と水分の調節をしています。
腎臓が機能停止し、尿が全く出ない腎不全となったら、体は水分と毒素であふれ3-4日で死んでしまいます。
腎不全となった人が生きていくためには透析が必要になります。
腕の太めの血管2箇所にそれぞれ太めの点滴をさし、そのうち一本から引き抜いた血液を透析液で洗浄しながらフィルターにかけて濾過し、もう一本の点滴から体に戻していきます。
腎臓が24時間毎日やっている仕事を週3回、4-5時間の透析でまかないます。
腎臓の機能を回復させる治療ではありません。
腎臓はすでに荒廃して機能しなくなってしまったから透析が導入されるわけす。腎機能回復のためには腎臓移植しかないです。
 
<重症肺炎>
コロナは重症化したとき、重症肺炎を引き起こします。
肺の細胞を破壊し、空気が入るべきスペースを水浸しにしてしまう病気です。陸地にいながら、水で溺れてしまった状態になるのです。
当然めちゃくちゃ苦しいです。肺に水分があるので、むせ返るような咳もいっぱい出ますが、改善はされません。
肺の一部分が水浸しになるだけなら、他の健康な部分の肺で呼吸をカバーできるのできるのですが、肺全体にこれがおきるともはや自力ではどうしょうもなくなります。
少ない健常な肺の部分でなんとかするために最初は酸素マスクで酸素を投与されるでしょう。
それでも足りなかったら、気圧という圧力を使って押し込みます。陽圧換気と言います。
呼吸器編で書いたPEEPに該当します。
 
 
 
 
<人工呼吸・陽圧換気>
コロナに限らず、肺が水浸しになって呼吸不全になる病態は少なからずあります。大きな事故や大手術の後など、大きなダメージを受けたあとにしばしば遭遇します。
長期に肺に高圧をかけ続けることは、肺のためには良いこととは限りませんが、現場では高圧を肺にかけて、無理やり呼吸し、重篤な炎症期を乗り切る治療が選択されます。それが一番生存率が高いからです。
肺が重症化してしまった時、肺のために優しい呼吸設定では、他の臓器が低酸素で死んでしまうのです。
 
 
 
コロナの場合は、そんな極限の圧力かけても呼吸が改善しないほど重度の呼吸不全になるようです。
肺も体も壊れる治療では意味がありません。
どうするか? 体外循環を選択します。
多くの場合、鼠径(足の付根)と右首に直径7〜8mmほどの太い管を刺しいれ、それぞれ先端を心臓(右心房)にくるように起きます。この2つの管をECMO(人工心肺装置)につなぎます。足から入れた管から血液を抜き出し、遠心ポンプとよばれるポンプで圧力をかけ、人工肺を通過させ、首のカテーテルから体内に戻します。
酸素を取り込む臓器は肺ですが、それが機能していないので、肺に血液が流れ込む前に十分酸素化してあげて、全身に酸素が流れるようにするのが目的です。
人工肺にも歴史があるのですが、今は膜型の人工肺を使います。
体外で膜型人工肺を使って酸素化するから
ExtraCorporeal Membrane Oxygenation (ECMO) エクモ
なのです。
 
なので、ECMOは肺を良くする治療ではありません。
一時的に、だめになって機能してない肺に変わって、全身に酸素を取り込む機械です。
 
心臓から血液を抜き、さらに高い圧力をかけて動脈に戻すECMOもあり、
経皮的心肺補助法 PCPS: percutaneous cardiopulmonary supportというのもあります。心臓が機能しないときの装置ですが、説明は今回は割愛します。
 
 
 
透析が腎臓を元気にさせる治療でないのと同じように、
陽圧換気もECMOも肺を元気にさせる治療ではありません。
肺が治るのを待っていたら低酸素症で脳など全身が機能停止してしまいます。
脳が機能を停止したらそれは"死"です。そこからの復活はありません。
そうならないための応急処置です。
 
人工心肺が稼働できる2-3週間の間、体のいろんな環境を整えて、肺が自力で回復するのを祈る治療です。
 
風邪は2-3日、インフルエンザもせいぜい1週間で治るように、コロナもウイルスであるなら、1-2週間で免疫が獲得され、肺は治ってくるはずです。
その1-2週間中、酸素が取り込めなくて低酸素症で死んでしまわないようにと取り付けられるのが人工呼吸器でありECMOです。
 
 
 
 
<ECMOの合併症>
人工呼吸器は比較的安全に管理できるので、長期の人工呼吸治療はたびたび見かけるものですが
ECMOは長くても一月程度しか回さない、というかまわせないです。
 
なぜか? ECMOには副作用というか合併症が多いのです。
体から血液を引き抜いて酸素化して体に戻すということにそもそも無理があるのです。
 
まず、カテーテル(くだ)が太いです。外来でちょっと点滴・・・で使う針のほぼ10倍の太さです。
透析のときの点滴の針よりぜんぜん太いです。
透析は血液の一部を4時間かけて洗う治療ですが
ECMOは1分間に4リットル全身をめぐる血液の殆どを酸素化しなければならない治療なのです。
細いカテーテルでは十分な量の血液交換ができないですし、細いと高い圧がかかってしまい、血管や血球がより壊れやすくなります。
そして、太いカテーテルを刺すというだけで痛みがあり感染や出血の合併症が起きます。
 
切り傷の出血がすぐに止まるように、血液は血管外にでたら固まるという、大事なメカニズムがあリます。
そのまま透析やECMOを接続して動かすと、すぐに回路内の血液が固まって詰まってしまいます。
そこでどちらも血が固まらないようにとヘパリンという薬で管理するのですが、これはつまり出血しやすい体にさせるということです。
 
カテーテルや人工肺など、人工物にふれるだけで血液はでダメージを受けて行きます。炎症がどんどん進んでいきます。
人工肺を通るたびに赤血球や血小板がどんどん壊されていきます。狭い膜型人工肺に血液を流して酸素化すること自体が血液にとって非常に負担です。
長時間の体外循環は輸血がどんどん必要になっていきます。
輸血とは血液の移植です。血液型があっていても、他人の血液を大量に入れ続けることは肺や肝臓を悪化させます。アレルギーが起きることもあります。
 
全身にそれほどの炎症がある状態では、尿も出なくなります。持続型の透析もつけます。
命をつなぐための装置は、命を削るような治療でもあるのです。
 
血小板もへり、炎症も重度になり、凝固系が狂い始め、血が固まらなくなります。
至るところで出血が起きます。
出血が脳に起きると・・・脳障害が起きます。
復活できないレベルの脳障害を確認されたら、もはや回復のための治療ではなくなります。
延命治療です。復活出来ないからです。
麻酔で深く眠らせているとはいえ、延命治療は苦しいのです。復活できないと確認されたら、はやく苦しみから開放してあげるべきではないでしょうか。
 
脳出血などの致命的な合併症が起きる前に免疫が獲得できて、復活できる体力をもっているひとなら2週間位でなんとか補助の機械が外れていって回復できるかもしれません。
 
この治療中の本人にかかるストレスは想像を絶するものです。
そして、これを集中管理スタッフが不眠不休で行います。
担当医グループ、ナースチームは当然として、ECMO操作に臨床工学士が患者さんに張り付きます。
コロナ以外の感染症もでやすく、薬の適正使用のために薬剤師もひたすら見えない敵と戦います。
ECMOが回ると、多くのスタッフが力を合わせて見えない敵と戦い始めます。
それでも生存率は高くありません。生命の限界を超えた治療で、些細なことで簡単に破綻するからです。
 
いま、コロナに感染し重症化した人でその半分が復活出来ているようです。
これはすごい優秀な成績だと思います。
私が医者始めたばかりのころ
ECMOが装着される = 延命
のイメージでした。
ずっと研究され成績を上げている医療チームの方々には頭が下がります。
 
 
 
 これだけECMO治療は大変なことなのです。
「コロナにかかっても、呼吸器もECMOもあるじゃないか」と考えられていた方に、
たしかに他には方法がなく、切り札だしけど、皆さんの思っている理想の治療器具からは程遠いことを理解してもらえたら幸いです。
私はコロナになって重症化したら、ECMOまではいいです。
 
 
 
ECMOがついたとテレビで見た時、その後2週間くらい頑張ってさてどうだろう?と思っていました。
すごい元気なイメージがありますが、70歳で若いとは言えず、
ヘビースモーカーや大量の飲酒歴があり、そうとう体は弱っていたようです。
それでもECMOついて1週間持たずに決着がつくのは正直早かったなと思います。
 
ファンとしてはあっさり復活してコロナのコントをやってくれる未来を期待していました。
お悔やみ申し上げます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

<医療者むけ>血ガスの読み方2 その他

医療者の人でも嫌いな人が多いテーマです。
一般の方にはなじまない内容ですのでスルーでお願いします。
本に書いてあることとおんなじと言われたらそれまでですが・・・
 
 
pO2は血液中に溶けている酸素の量です。
SaO2は全ヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの量です。
pO2とSaO2にはある程度相関関係があります。
 
酸素は液体に溶けにくいです。その溶けにくい酸素が血液にどれだけ溶けたかを分圧で示しています。
そもそも溶けにくいものなので、この数字で一喜一憂しなくていいと思っています。
血液に溶けにくい酸素をすみずみの細胞へ酸素を運搬するために輸送用の道具が必要でした。ヘモグロビンです。
ヘモグロビンには鉄イオンが使われており、酸化されると赤さびの要領で赤くなります。酸素が豊富な動脈血は真っ赤です。末梢で酸素を供給し終わった後の静脈血は暗い青に近い色です。
そのヘモグロビンのうち、どれだけ酸素化されているか?が酸素飽和度SaO2です。
ヘモグロビンは末梢へ酸素を送るバスだと例えると、SaO2は乗車率です。
SaO2 100%は乗車率100%で、これ以上は運べません。過剰な酸素は肺の毒なので、酸素投与中なら減量を考えてもいいでしょう。
成人の正常値が97-98%です。
 
<Hb Ht>
Hb ヘモグロビン
 
ヘモグロビンは酸素を運搬する物質で、血が赤いのはヘモグロビンのおかげです。
12 < Hb < 15くらいが適正で、Hb<8になると医者は輸血を考え始めます。
産婦人科で若い患者さんだと輸血の副作用を嫌ってHb 5まで輸血しないで様子見るということもあります。
ヘマトクリットは血液中の赤血球の占める割合です。
経験的にだいたいHt = Hb x3
だと思っています。
 
 
電解質
Na+
塩化ナトリウム(塩)の陽イオンです。
136 < Na+ < 145
低ナトリウム血漿の時に急速に補正してはいけません。
 
K+
塩化カリウム陽イオンです。
3.5 < K+ < 4.5
減少しても上昇しても不整脈がでやすいのでまめに補正されます。
K+は心臓手術の際、心停止液の重要な成分で、いそいで静注するとすぐ心臓がとまります。
比較的ゆっくりめに投与しましょう。
K+は腎臓で排出されるので、腎不全だとK+が高値になり、心停止のおそれがでてきます。
こうなったら透析も考えましょう。
 
Cl-
塩化ナトリウムや塩化カリウムの陰イオンです。
98 < Cl- < 107
 
Ca++
カルシウム
減るとイライラする・・・ってことは基本なさそうです。
血液ガスをこまめに測る状況にある人は、疲労してることはあってもイライラってあんまりないですけどね。
濃厚赤血球輸血を大量に行うと、輸血パックに抗凝固剤としてはいっているクエン酸により血中カルシウム量が減少します。こうなると強烈に血圧低下します。
大量輸血しているのに低血圧が改善しないときはカルシウムのことも思い出してあげてください。
カルシウム製剤静注でみるみる改善します。
 
<AnionGap>
電解質の計算で
Na+量 - (HCO3-量 + Cl-量)
8 ~ 16
で求められる数字です。
体内の陽イオンと陰イオンは合わせたら±0になるはずです。
これで8-16という値がでるのは、この三つ以外のイオンによるものです。
AnionGapが増えたら、Mg+や乳酸とかが多いという意味です。
糖尿病性昏睡の原因であるケトン体が多い場合もあります。
結局これだけでは確実なことは言えないです。ほかのパラメーターと連動して原因を探すことになります。名探偵になったつもりで犯人を突き止めましょう。
 
 
 
<Lac>
Lactate=乳酸です。
細胞は生きるために糖を分解しエネルギーを作り続けなければなりません。
酸素があれば効率のよいエネルギー抽出ができるのですが(後期的解糖)、呼吸不全だったり、心不全だったりで、末梢(=末端)の細胞に十分血液が廻らないと、糖を無酸素で糖を分解してエネルギーをつくります(嫌気的解糖)します。需要があればクエン酸回路から説明しますが・・・学生の時はあれがなかなか覚えられなくてキライでした。
嫌気的解糖はエネルギー作成の効率がわるく、副産物として乳酸ができてしまいます。
この乳酸が血ガス上Lacの値としてでてきたり
AnionGap値を大きくしたり
HCO3-値を小さくしたり
BEをマイナスにもっていったり
します。
末梢循環不全なので、補液して循環血液量増やして、強心剤で心臓うごかしていく必要があるでしょう。
 
 
 
<COHb>
COHb カルボキシヘモグロビンです。
一酸化炭素中毒の時に高値になります。
一酸化炭素COはヘモグロビンとの吸着がつよく、なかなか離れません。
すると、酸素が正常に全身に運搬されないので呼吸しているけど呼吸困難という状況になります。
タバコにも含まれていて、喫煙レベルの指標にされることもあります。
 
 
<Glu>
血糖値です。
高血糖感染症などの合併症にかかりやすいので高血糖インスリンで治療されます。
 
 
 
 
なんか最後のほうやっつけになってしまった。
疲れたからあとは、質問あったら答えるってことで・・・
おだいじに~
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

<医療者むけ> 血ガスの読み方1 酸塩基平衡編

集中治療室で働く若手のスタッフから血ガスの読み方について相談をいただきました。
一般の方にはなじまない内容です。スルーでお願いします。
 
 
血ガスというのは、血液検査の一つです。主に動脈から採血し、その血液のpHやO2濃度、CO2濃度、電解質などを調べる検査です。
外来や病棟ではあまり行われませんが手術室や集中治療室では馴染みの検査機器です。
その患者さんがいまは大丈夫なのか?呼吸状態は安定しているのか?その他のまずい状態はあるか?
をしらべる検査です。
 
 
血ガスの正しい読み方、深い解釈などは本を読んで勉強してください。
かつて自分もそういった本で勉強してきました。
今回は集中治療室歴20年の私が普段チェックしている内容について書いておきます。
これが絶対正解なんて言うつもりはないですが、読み間違えでトラブルにもなっていません。参考にしてみてください。
 
 
<血ガスでわかること>
血ガスの項目は、測定機器でまちまちですが
pH
PCO2
PO2
HCO3-
BE
SaO2
Na+
K+
Cl-
Anion Gap
Glu
Cac
Lac
 
こんなところでしょうか。
血ガスの正しい読み方なんて存在しません。今あるデータをどう解釈するか?です
患者さんが元気に回復してくれればいいのです。
一例として私がみている順番に書いてみます。
 
 
 
 
多くの血ガス測定器で一番最初にでてくるとおもいます。
だから、ここからみてます。
pHのこと、覚えていますか?高校化学で出てきました。液体が酸性なのかアルカリ性なのかの指標で
強酸性がpH 1
アルカリ性がpH 14
どちらでもない中性が pH 7
なんて思い出しません?
アルカリ=塩基ですよ。
 
血液ガスではかるpHは当然、血液の酸塩基のレベルを示しています。
pH=7.4 が正常で範囲は7.35-7.45とされています。正常だとやや弱アルカリ性な中性です。
この正常範囲でホルモンなどが機能的に活動できます。
 
このpH 7.35-7.45を正常な基準値として
酸性に傾くとpH<7.3 でアシドーシス
アルカリ性に傾くと pH>7.5でアルカローシス
といいます。
 
アルカローシスの状態も良いわけではないですが、過剰に慌てる必要はないです。
アシドーシスの状態が続くのはヤバいです。
特に重度のアシドーシスを放置したら、いろんな調節物質が機能しなくなるので高率で死ぬんDeath。
 
 
pHはつまり
その患者さんの状態が安定しているのか?ヤバい状態なのか?
を見極める状態です。
生体はpH 7.4くらいで安定しています。
pHがこれより低い時はアシドーシス
pHがこれより高い時はアルカローシスと言います。
pHが7.3以下というのは、体になにかヤバいことがおきているということです。
 
 
いまヤバいってことがわかったら、治療したいじゃないですか。
どうやって治療しますか?
治療方針決めるためには、いま異常が起きている理由を探さなければなりません。
原因により対処法が違うので、いまこうなっている原因を知る必要があるのです。
 
 
<酸塩基平衡>
そもそもなんで酸性・アルカリ性になるのか?ですが
細胞というのは生きていくために細胞外へ酸性因子であるH+を放出しつづける必要があるのです。食べ物が腐ると酸っぱくなるのは細菌が活動しH+を放出しているからです。そのH+は血液循環で回収されて、腎臓でそのまま排出されたり、呼吸という形で体外に排出されたりします。
 
H+ + HCO3- ⇄ H2CO3 ⇄ H2O + CO2
 
覚えてますか? 試験のヤマでしたよね。いやでしょうけどもうちょっと付き合ってください。
この平衡の式で、血液内では上の5つの物質が一定のバランスになるように存在しています。H+が増えるとH+とHCO3-が結合して右の物質にかわり、水と二酸化炭素になります。
二酸化炭素の量は呼吸量できまります。
この平衡があるおかげで、私たちは呼吸することや尿をつくることで酸塩基平衡のバランスをとりpHを維持できるのです。
呼吸が止まったらすぐにアシドーシスになります。
腎不全で尿が出ない人もアシドーシスになります。
 
 
<呼吸性?代謝性?>
pHの管理は呼吸と腎臓で行っています。
そこでそこでアシドーシス・アルカローシスは
呼吸が原因でおこる
 呼吸性アシドーシス
 呼吸性アルカローシス
腎臓を含めた呼吸以外でおきる
 代謝性アシドーシス
 代謝性アルカローシス
の4種類に分類されるのです。
 
今のアシドーシスはどこから?
原因調べたくなってきたでしょ?
 
 
 
 <pCO2>
そこで次に見るべきものはpCO2です。
血液にとけている二酸化炭素の分圧の値です。
35-45くらいが正常でしょうか? 自発呼吸している人はほぼpCO2 40と言われています。
 
呼吸が過剰ならpCO2は減ります。
呼吸が少なければpCO2は増えます。
 
このときpCO2 > 50 とかだったら、呼吸が足りません。呼吸不全です。
(50mmHgという基準があるわけではありません。COPDの人だとこれが標準だったりします。)
呼吸性アシドーシスである可能性が高いです。
人工呼吸 ・ 補助呼吸を検討するべきです。
 
すでに人工呼吸をしている状態でpCO2 > 50は呼吸が不十分です。
分時換気量を増やすことを検討しましょう。
逆にpCO2<30のときは過換気気味なので、逆に分時換気量を減らしてみてはいかがでしょう。
 
呼吸器の設定のところも参考にしてください。

 

www.yorozusoudan.com

 

 
CO2が正常値なのにアシドーシスなときは?
 
 
<HCO3-> 
HCO3は重炭酸イオンです。
 
H+ + HCO3- ⇄ H2CO3 ⇄ H2O + CO2
 
再び式がでてきました。
重炭酸はH+とくっつくことでH+を水にかえます。水に変われば中性です。
突発的にH+が増えても急にアシドーシスになって破綻しないのは、重炭酸がいるからです。
pHの変化はそれほど生体にはダメージをあたえるので、変化の衝撃を抑えるため、緩衝剤として存在しています。
22 < HCO3- < 26
正常値は24 ± 2。これが少ないときは、H+が多くて緩衝のためにおおく消費されたんだ・・・と理解してください。
つまり、見た目pHは正常でも、それは緩衝剤がダメージ抑えていてくれているわけで放置してたら破綻する可能性はあるということです。これが異常に低いときは隠れアシドーシスの原因をさがしましょう。ここで呼吸のCO2が問題なければ代謝性なんだな・・・と想像できます。
腎不全ならば透析を考えていいとおもいます。
多くの場合循環血液量の減少で抹消循環不全がおきていることがおおいです。
 
BEというのはBase Excessといい、
緩衝剤が適正値からどれだけはなれているか?の指標です。
‐3 < BE < +3
正常値は0± 3
がだいたい正常でーに進めば代謝性アシドーシスです。
HCO3-かBEかどちらか好きなほうで代謝性アシドーシスを見抜ければよいでしょう。
 
 
 
長くなるのでその2に続く
 
 

なるべく病院行かない方法 3 花粉症

そろそろ桜です。
桜といえば春
春といえば花粉症

 


花粉症の人たちには辛い季節がやってきました。かくいう自分も30年くらい前からわずらっており、春が一番嫌いでした。


が、最近は少し症状が緩和したかしら
人は今年も花粉もひどいというので、花粉が減ったとかじゃなさそう。


年齢で免疫が落ちてきたからかしら?なんて、嬉しいような悲しいような。

 


というわけで、今回は花粉症です。


<免疫>
花粉症とは花粉に対するアレルギーです。
体には免疫システムがあります。体を異物から守るメカニズムで、ウイルスや細菌など、異物が体内に入ってきたらそれを無効化して排除しようとする構造があるのです。これがあるから、普段我々は健康でいられるし、風邪をひいてもだいたい数日でもとに戻るのです。ちなみに、風邪薬と呼ばれるものは、熱やら痛みやら症状にをなくしてるだけで、根本てきには治せません。病気はあくまで自分の体で治すものです。病気の時は御自愛くださいませ。


<アレルギー>
この免疫がやりすぎに働いているのがアレルギーです。花粉なんて人体には無害なのに、免疫防御システムが反応しちゃうんですね。
外敵とみなされた花粉が目に触れれば、体に「異物が来たよ」シグナルをだします。これが目の痒み。
そして、それを洗い流すべく、涙を通常より多く流します。
花粉が鼻の粘膜に触れれば、クシャミを発動して花粉を追い出し、鼻水増やして吸着させようとします。鼻詰まりを起こし、肺に花粉が入らないようにします。
こういった症状は、免疫細胞に準備されているヒスタミンが、花粉に反応して出てくることで起こります。
体を守るためのシステムが花粉に過剰反応して嫌な症状がでてしまうのがアレルギーなのです。

 


<アレルギーの歴史(?)>
昭和初期には花粉症なんて言葉はありませんでした。昭和の終わりあたりから猛威をふるっています。
花粉症といえばスギ花粉で、当時は林業が計画的ではないから花粉が大量発生してこうなってるなんて聞いたことあります。が、30年たっても変わらないところを見ると、林業が整っても、花粉症は続くでしょう。その30年前はスギ花粉ばかり言われてましたが、いまは春の杉花粉、秋のブタクサ、年中ハウスダスト。食物アレルギーもおおくあります。
アレルギーがふえてきたのは、衛生状態がよくなって、免疫が活躍する場がなくなったからなんて説もあります。

 


<治療>
花粉に対するアレルギーなので、花粉に近づかないことが大事です。
花粉は屋外にたっぷりいるので、外出は避けるべきです。
外出中は花粉症ゴーグルやマスクは有効です。
衣類にいっぱい花粉がついているので、外出用の服でそのまま室内をすごすと、家の仲間で花粉でいっぱいになり、くしゃみに悩まされることでしょう。
帰宅したら外出用の服はなるべく玄関付近で着替えてしまってしまうのが理想です。


それでも駄目ならお薬の出番です。
アレルギーの目薬や鼻薬は花粉を洗い流すのでとても有効です。
同時に、抗ヒスタミン薬も入っているので症状は速やかに収まるでしょう。
つづいて内服薬ですが、薬局でも扱ってるアレグラとかアレジオンとか、そういう抗ヒスタミン薬が処方されます。
ヒスタミンは、体を起こすシグナルでもあるので、抗ヒスタミン薬を飲むとある程度眠くなります。
花粉症に効果がある薬は眠くなる。
眠くならない薬は効果が薄い。
そういうものです。

Amazonで調べたらアレグラが14日分で1400円ほど

 

【第2類医薬品】アレグラFX 28錠 ※セルフメディケーション税制対象商品

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  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 

 

 

【第2類医薬品】アレジオン20 24錠 ※セルフメディケーション税制対象商品

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  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 

 

 

これが診察すると、たいした検査されずに同じ薬を処方されて、

再診料600円と薬が1000円くらいで28日分出されます。

オトナの事情というか、医師会の事情でまだこの価格差があり、診察を受けたほうが安いのですが、長い待ち時間や風邪やコロナをうつされることを考えたら、とりあえず薬局で抗ヒスタミン薬や目薬買うのがいいのではないかと思われます。


以前はステロイド注射というのもありましたが、最近はあまり話題にならなくなりました。ステロイドの副作用が目立つからと聞いたことがありますが、詳しいことは知りません。あしからず。

 


医者にかからないを提案するブログとして一つ提案します。

かなり民間療法的ですが
目の周りや鼻の下などにメンソレータムなどの軟膏ぬると、花粉がいくらかはそこに付着してくれて症状が軽くなると聞き、やってみたらだいぶ症状治りました。
安上がりで有効かと存じます。お試しあれ。


おだいじに〜

 

 

 

 

 

 


 

動脈瘤と静脈瘤 3

動脈瘤でもう一つ
厳密には瘤ではないのですが・・・
解離姓大動脈というのがあります。

最近だったら7つボールを集めるアニメの声優さんとかがこの病気で突然死していて、だいぶ話題になっていました。
 
<病態>
血管は動脈・静脈とも外膜・中膜・内膜の三層構造になっております。
外膜は周りの組織からの固定の役目があり
中膜は血圧に耐えるために丈夫にできていて
内膜は内皮細胞などで覆われており、血管の内側のコーティング
となっています。
 
中膜に亀裂が入り、ビリビリビリっと三層構造が壊れてしまった状態です。
くっついているはずの3層が剥がれてしまった状態なので大動脈解離と言います。
 
これはなんの前触れもなく、突然発症します。
歩いていた、座っていた、寝ていた、様々です。外傷(交通事故などでつよい衝撃がかかる)などで起きることもあります。亀裂がはいったらいっきにビリビリビリっと解離がすすみます。血管の壁が圧力で避けていくものなので、瞬間的に来ます。
 
<症状>
胸背部に激痛が走ります。
いてもたってもいられなくなる痛みです。たまーに症状がかるく、あとから発見される人もいます。たまにです。
 
 
<病態>
動脈が解離するとなにが問題でしょうか?
血圧に耐えるべきもっとも丈夫な組織がビリビリとさけてしまった状態です。耐圧板が一部剥がれてしまったわけです。動脈の壁が薄くなった状態ですから、そこが破れて大量出血しやすいです。体外に出血するわけではないですが、血液は体内にあってナンボです。体内にあっても出血は出血で、出血多量なら死にます。
血管は全身の臓器に血液を流すべく、多種枝分かれしていますが、ペラペラした避けた内幕の一部が血管の枝分かれの入口を塞いでしまうことがあります。入口をふたされると、その枝には血液が流れなくなるので、臓器不全でいろいろ障害が出ます。
破裂と虚血がでやすい、死亡率がとても高い病気なのです。
 
<種類と治療>
心臓と脳までの分岐におきた大動脈解離と、脳分岐よりあとにおきた大動脈解離で大きく分類されます。
前者をStanford A型
後者をStanford B型
と分類します。ほかの分類のしかたもあります。DeBakey(ドベーキー)分類と言います。調べてみてください。
AもBも破裂してたら緊急手術ですが、生存率は極めて低いです。手術にまでたどり着けないこともあります。
未破裂の場合、
A型は心臓と脳に障害がでやすいので、ほぼ緊急手術になります。人工血管置換術です。
B型はA型にくらべたら死亡率は低いです。まずは降圧安静療法が基本です。解離は血管の山火事みたいなもので、下手に手を出さないで鎮火をまったほうがよいです。臓器虚血が出た場合はそれに応じた手術となります。
 
死亡率は高いですが、急性期を乗り切ったら比較的安定しています。
解離がそのまま残ることもあります。避けたままでも血流を流すという機能が維持できる限りは問題ありません。正しく状態、もとの状態に戻すことがよい治療とは限りません。生存率を高め、合併症率をへらす治療がもっともよい治療です。
 

とはいえ、残存した解離は数年かけて徐々におおきくなって来ます。太くなると瘤と呼ばれます。
解離が直接の原因の瘤を、解離性大動脈瘤と言います。
瘤化して大きくなり、瘤破裂のリスクが、手術合併症のリスクより高まったら手術が検討されます。開胸開腹して人工血管置換術する従来の外科治療と、ステントグラフト内挿術という、比較的低侵襲な治療の2種類あります。
もしそんな病気に直面したら、主治医の話をよく聞いて方針を決定知てください。
 
こんな病気ならないのが一番いいに決まってます。
予防は塩分原料・禁煙等、いつものやつです。
これさえ飲んでいれば大丈夫! とか言う商品はすくなくとも現在は存在しません。
 
最近こういうオチばかりで恐縮ですが、そういうものなのです。
がんばりましょう
 
おだいじに~